第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)02

Fri. May 27, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:舟見敬成((一財)総合南東北病院 リハビリテーション科), 神谷健太郎(北里大学病院 リハビリテーション部)

[O-HT-02-1] 虚血性心疾患患者における坐位時間の要因は糖尿病合併の有無で異なる

―機能的要因,心理的要因,環境的要因の比較―

溝口桂, 川端悠士, 澄川泰弘 (JA山口厚生連周東総合病院リハビリテーション科)

Keywords:虚血性心疾患, 糖尿病, 座位時間

【はじめに】心筋梗塞を代表とする生活習慣病の治療は身体的な機能改善のみならず再発予防を目的に,指導的要素も包含された内容が推奨されセルフケア行動の改善を目標としている。しかし生活行動の変容により心血管系疾患の予防が可能であることが示されている一方で,最近の報告では適度な身体活動を行っていても坐位時間の延長が冠動脈疾患のリスクファクターとなっていることが強調されている。また虚血性心疾患患者における糖尿病合併の有無で坐位時間に関する各要因との関連を検討した報告は我々の渉猟の範囲では見当たらない。そこで,本研究では虚血性心疾患と患者の坐位時間に関するアンケート調査を行い糖尿病合併の有無で坐位時間に関連する要因の違いを明らかにすることを目的とする。

【方法】当院に治療目的で入院となった急性心筋梗塞もしくは狭心症患者のうち除外規定に当てはまらない46名を対象とした。調査事項は坐位時間として国際標準化身体活動質問票(IPAQ)を用い,心理的要因では自己効力感(SE)として運動SE,身体活動SE,健康関連QOLとしてSF-8™を用い,健康統制感として多次元的健康統制感(MHLC)を用い,環境的要因の評価として国際標準化身体活動質問紙環境尺度(IPAQ-E)を用い,ペットの有無を自己記入式で調査した。身体機能として10m歩行速度を測定した。また診療記録から患者属性(同居家族の有無など)を調査した。各調査項目に準じて4から6段階リッカート式尺度で尋ね,その合計または下位項目単独で比較した。統計学的解析では10m歩行の検者内の再現性を確認するために級内相関係数(ICC)を算出した。坐位時間と各変数の関連性の検討では,各変数の正規性を確認した後に名義尺度変数にはMann-WhitneyのU検定を,順序尺度・比率尺度・間隔尺度変数にはSpearmanの順位相関分析を用いて男女毎に比較した。統計解析にはSPSS ver.15.0 Jを使用した。いずれの検定も統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】級内相関係数の算出では中等度以上の再現性が確認された。両群で坐位時間と相関を認めた項目はMHLC下位項目の「internality」(rs=-0.45),同居家族の有無(p=0.03),飼っている犬の数(rs=0.41),IPAQ-Eの項目「近所に興味をひかれるもの(景観)がある」(rs=-0.39)であり,非糖尿病合併患者で坐位時間と相関を認めた項目は運動SE(rs=0.69),IPAQ-Eの項目「近所に公共施設などが多い」(rs=-0.38)であり,糖尿病合併患者で坐位時間と相関を認めた項目は身体活動SE下位項目の歩行(rs=0.41),SF8TMの項目「日常活動」(rs=-0.35),IPAQ-Eの項目「近所にレクリエーション施設がある」(rs=-0.51),バイク・車の台数(rs=-0.51)であった。

【結論】本研究の結果,虚血性心疾患患者の坐位時間に関連する変数で糖尿病合併の有無で違いを認めた。運動療法の指導の際には合併症を含めた個別性を意識しつつ指導する必要性が示唆された。