第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)02

Fri. May 27, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:舟見敬成((一財)総合南東北病院 リハビリテーション科), 神谷健太郎(北里大学病院 リハビリテーション部)

[O-HT-02-3] 心不全患者の退院時歩行自立度に関する因子の検討

~歩行自立度と血清アルブミン濃度,腎不全の関連性について~

戸田真弘 (JA静岡厚生連遠州病院)

Keywords:心不全, 血清アルブミン濃度, 腎不全

【はじめに,目的】

血清アルブミン濃度(以下Alb)が低値を示す高齢者では筋力が低下することや,廃用症候群患者において遷延する低アルブミン血症が入院中に低下した移動能力の回復を阻害する因子となる可能性が示唆されている。また心不全患者における腎不全症例では濾過機能が低下することで心臓に過剰な負荷をかけることや,心不全治療に対する抵抗性を持ち治療が難渋するといった問題点が挙げられている。そこで心不全患者におけるAlb値の推移や腎不全の有無が歩行自立度に影響するかを検討した。

【方法】

対象は2011~2014年にA病院 循環器病棟に入院した患者でリハ介入歴があり入院時に歩行が自立していた心不全患者42例のうち,末期癌などの消耗性疾患,肝機能障害を有する者などを除外した30例である。歩行自立の定義は歩行補助具の使用などに関係なく病棟内の移動が介助なく1人で行える場合とした。退院時の移動能力から対象を2群に分類し退院までに歩行が自立した患者を自立群,しなかった患者を非自立群として調査を実施。調査項目は性別(男性11名 女性19名),年齢(81.97±10.3歳),在院日数(27.9±22.9日),糖尿病有無,腎不全有無,BMI(23.3±4.4kg/m),CRP(3.10±3.54mg/dl),ALB(入院時Alb3.45±0.34g/ml 退院時Alb3.42±0.48g/ml)とし,統計学的解析は退院時の歩行自立度に関連する因子をロジスティック回帰分析にて検討した(有意水準5%未満)。

【結果】

退院時の歩行自立度に関連する因子として入退院時Alb値の推移と腎不全の有無が挙げられた。

【結論】

退院時の歩行自立度とAlb値の推移が関連する理由として,心不全特有の炎症や浮腫が考えられる。Albが減少する原因は炎症や浮腫,長期臥床とされており,心不全患者は炎症や浮腫によりAlb値が低下して蛋白異化,骨格筋の異化を引き起こす可能性が高い。結果として筋力低下を引き起こし歩行自立度の低下につながると推察する。腎不全に関しては先にも述べたように治療抵抗性により,活動制限期間が延長することで活動量が低下し,廃用性の筋萎縮を呈し歩行自立度の低下につながることや,蛋白制限食による蛋白摂取量の減少自体も筋の組成に関連することが考えられる。しかしながら本検討による回帰式の正判別率は66.7%と低く,他の因子が強くかかわっている可能性が高い。今後はさらに筋力や活動量についても検討していく必要がある。