[O-HT-02-4] 入院期高齢心不全患者における低栄養状態例の特徴とその移動能力についての検討
Keywords:心不全, 移動能力, 栄養
【はじめに】
近年,入院期高齢心不全患者の増加に伴い,低栄養状態かつ移動能力回復に難渋する例を経験する。心不全患者における低栄養状態は,死亡率,日常生活動作(ADL),身体機能に関する一要因である(Kinugasa, et al., 2013, Izawa, et al., 2015)。一方,入院期心不全患者における移動能力の要因として,高齢,貧血,栄養状態,身体機能,入院前ADL等がある(Ozawa, et al., 2014, Saitoh, et al., 2015)。しかし,先行研究では,退院時での移動能力の要因に限局されているものが散見される。また,これらは,入院時,入院1週後,2週後といった3時点以上での移動能力の回復過程について明らかではない。本研究の目的は,入院期高齢心不全患者における低栄養状態例の特徴および移動能力の回復過程を明らかにすることである。
【方法】
デザインは,後ろ向きコホート研究である。対象は,2011年8月~2014年3月までの間に急性期病院に入院加療した心不全患者連続502名である。取り込み基準は65歳以上,心不全例,理学療法施行例である。除外基準は3時点(入院時,入院1週後,2週後)での調査困難,入院中死亡例,入院前補助具使用にて歩行困難例である。調査項目は基本属性,医学的属性,血液生化学検査値,併存疾患,栄養状態の指標としてのGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI),移動能力の指標としてのRivermead Mobility Index(RMI)である。統計学的手法として,GNRIを92以上(高値群)と92未満(低値群)の2群に分けた。属性の比較には,対応のないt検定,χ2検定,移動能力の回復過程には,二元配置分散分析(時期,栄養状態),多重比較検定(Tukey法),移動能力詳細項目の検討には,χ2検定が用いられた。統計学的有意差判定基準は5%である。
【結果】
最終解析対象者は,GNRI高値群106例と低値群80例の計186例であった。高値群は低値群に比し,年齢,ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は高値,Body Mass Index(BMI),ヘモグロビン(Hb),アルブミン(Alb)は低値を示した。併存疾患は,高血圧,糖尿病,脂質異常症,虚血性心疾患,投薬は利尿剤に差を認めた(P<0.05)。移動能力の回復過程は,時期,栄養状態ともに主効果を認めた(P<0.05)。しかし,交互作用は認められなかった。多重比較検定の群内比較では,各集団1週間間隔のRMI得点に差を認めた(P<0.05)。群間比較では入院2週後のRMI得点に,また,詳細項目は自立歩行,物拾い動作に差を認めた(P<0.05)。
【結論】
入院期高齢心不全患者におけるGNRI低値例は高値例に比し,高齢,重症,Hb低値,高血圧,虚血性心疾患割合低値,利尿薬高値という特徴がみられた。また,移動能力の回復過程は,群間において入院2週後にRMI得点は低値を示した。その詳細項目は,自立歩行と物拾い動作であった。以上より,入院期高齢心不全患者における低栄養状態は,入院2週後の移動能力の程度を推察するための一助となる可能性がある。
近年,入院期高齢心不全患者の増加に伴い,低栄養状態かつ移動能力回復に難渋する例を経験する。心不全患者における低栄養状態は,死亡率,日常生活動作(ADL),身体機能に関する一要因である(Kinugasa, et al., 2013, Izawa, et al., 2015)。一方,入院期心不全患者における移動能力の要因として,高齢,貧血,栄養状態,身体機能,入院前ADL等がある(Ozawa, et al., 2014, Saitoh, et al., 2015)。しかし,先行研究では,退院時での移動能力の要因に限局されているものが散見される。また,これらは,入院時,入院1週後,2週後といった3時点以上での移動能力の回復過程について明らかではない。本研究の目的は,入院期高齢心不全患者における低栄養状態例の特徴および移動能力の回復過程を明らかにすることである。
【方法】
デザインは,後ろ向きコホート研究である。対象は,2011年8月~2014年3月までの間に急性期病院に入院加療した心不全患者連続502名である。取り込み基準は65歳以上,心不全例,理学療法施行例である。除外基準は3時点(入院時,入院1週後,2週後)での調査困難,入院中死亡例,入院前補助具使用にて歩行困難例である。調査項目は基本属性,医学的属性,血液生化学検査値,併存疾患,栄養状態の指標としてのGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI),移動能力の指標としてのRivermead Mobility Index(RMI)である。統計学的手法として,GNRIを92以上(高値群)と92未満(低値群)の2群に分けた。属性の比較には,対応のないt検定,χ2検定,移動能力の回復過程には,二元配置分散分析(時期,栄養状態),多重比較検定(Tukey法),移動能力詳細項目の検討には,χ2検定が用いられた。統計学的有意差判定基準は5%である。
【結果】
最終解析対象者は,GNRI高値群106例と低値群80例の計186例であった。高値群は低値群に比し,年齢,ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は高値,Body Mass Index(BMI),ヘモグロビン(Hb),アルブミン(Alb)は低値を示した。併存疾患は,高血圧,糖尿病,脂質異常症,虚血性心疾患,投薬は利尿剤に差を認めた(P<0.05)。移動能力の回復過程は,時期,栄養状態ともに主効果を認めた(P<0.05)。しかし,交互作用は認められなかった。多重比較検定の群内比較では,各集団1週間間隔のRMI得点に差を認めた(P<0.05)。群間比較では入院2週後のRMI得点に,また,詳細項目は自立歩行,物拾い動作に差を認めた(P<0.05)。
【結論】
入院期高齢心不全患者におけるGNRI低値例は高値例に比し,高齢,重症,Hb低値,高血圧,虚血性心疾患割合低値,利尿薬高値という特徴がみられた。また,移動能力の回復過程は,群間において入院2週後にRMI得点は低値を示した。その詳細項目は,自立歩行と物拾い動作であった。以上より,入院期高齢心不全患者における低栄養状態は,入院2週後の移動能力の程度を推察するための一助となる可能性がある。