第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)02

2016年5月27日(金) 11:10 〜 12:10 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:舟見敬成((一財)総合南東北病院 リハビリテーション科), 神谷健太郎(北里大学病院 リハビリテーション部)

[O-HT-02-5] 福井県における高齢慢性心不全患者の療養指導順守状況と自己管理に与える社会的環境要因の影響について

小林義文 (福井県立病院)

キーワード:社会環境要因, 療養指導, 自己管理

【はじめに,目的】高齢化に伴い慢性心不全患者は増加,社会環境の変化も重なり,運動療法等療養指導は難渋し,退院後1年以内の再入院率は3割にも及ぶとの報告がある。先行研究では社会的支援やソーシャルネットワークが急性増悪を回避させる要因となることが示されている。そこで全国平均より高齢化率が2ポイント高い福井県内において,療養指導順守状況と自己管理について,社会関係資本や社会的支援,個人的要因など環境因子が与える影響を調査し,知見を得たので報告する。



【方法】回復期以降にある60歳以上の慢性心不全患者に対し,従属変数を心不全指導順守状況および自己管理,独立変数を基本属性,社会関係資本,社会的支援,個人的要因として他記式直接面接法による社会調査を実施した。分析にはIBM PASW Statictics18にて,Spearman順位相関係数を用い優位水準を5%とした。社会的支援は米国RAND研修所によるMOS Social Support Surveyを,心不全療養指導遵守状況と自己管理については米国心不全看護協会によるSelf-Care of Heart Failure Index V6.2,社会関係資本と個人的要因については福井県立大学「なぜか健康長寿を考えるアンケート」より抜粋し,それぞれ尺度として用いた。



【結果】県内全域で78名からデータを収集した。男女比はほぼ同数,平均年齢は77.9才±10.7であり,過去1年間の入院回数は,半数が0回,3割が1回,2割が2回以上であった。心不全療養順守状況を見ると,社会関係資本の中で浮腫確認と近所信頼でr=0.4の中等度の相関が,近所付合いや地域関係などの要因でr=0.3の弱い相関があった。社会的支援では浮腫確認と情緒情報要因でr=-0.3の弱い逆相関が,個人的要因では体重測定や浮腫確認など測定系要因と地域愛着度や気分転換で同程度の逆相関が見られた。一方,心不全自己管理では,社会関係資本の中で人間信頼要因と,社会的支援の中では「優しさや愛情を示す人がいる」などの愛情項目や「なにか一緒に楽しいことをする人がいる」などの社会相互作用項目でr=0.3程度の弱い相関が,また個人的な要因では自己満足など心理的要因とr=0.4程度の中等度の相関が見られた。



【結論】福井県の高齢心不全患者について,社会的環境因子と療養指導順守状況及び自己管理について社会調査を行った。結果,療養指導内容を順守できると思う人にとり,強い社会的支援は依存的影響を及ぼし,また強い社会関係資本はマイペースを崩す要因となりマイナスに作用する可能性が示唆された。一方,自己管理には人間信頼要因や社会的支援の愛情項目・社会相互作用項目などが,「暖かい見守り」としてプラスに働いたように思われる。本研究が患者指導の際,患者家族や友人などの介入度合いの参考になると幸いである。