第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)03

2016年5月27日(金) 12:30 〜 13:30 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:櫻田弘治(心臓血管研究所 リハビリテーション室), 田畑稔(豊橋創造大学 保健医療学部 理学療法学科)

[O-HT-03-4] 若年Leriche症候群におけるEVT後のリハビリテーション経過と今後の課題

奥村高弘1, 山中順子1, 山口真一郎2, 中上拓男2 (1.近江八幡市立総合医療センターリハビリテーション技術科, 2.近江八幡市立総合医療センター循環器内科)

キーワード:Leriche症候群, 運動療法, 跛行

【はじめに,目的】

Leriche症候群は,腹部大動脈下端から総腸骨動脈(CIA)にかけての血管狭窄を主病変とする症候群である。主症状に間欠性跛行が挙げられ,日常生活活動に制限をきたすことが問題点である。本症候群は罹患率も低く,本邦においても閉塞性動脈硬化症(ASO)の一病態として認識され,ASOの運動療法はエビデンスが確立されてきたが,本症候群単独では未だ確立されていない。今回は,当センターにおいて若年のLeriche症候群患者の心臓リハビリテーション(心リハ)に携わる機会を得たため,その経過と今後の課題について報告する。

【方法】

①症例紹介
性別:男性 年齢:30代前半 職業:介護職員 冠危険因子:喫煙
demand:就労復帰 友人と同じペースで歩きたい
<現病歴>26年12月に左第5趾に色調異常を発見しA病院を受診,造影CTでLeriche症候群が疑われて当院に紹介となった。CT所見では腎動脈起始部以下より完全閉塞あり,また左浅大腿動脈(SFA)にも完全閉塞を認めた。入院時ABIはrt-0.53 Lt-測定不可,Rutherford-IIIと著明な血流低下を認めた。
②治療経過
27年1月に腹部大動脈に対して血管内治療(EVT)を施行。大動脈と両側CIAをバルーン拡張後,両側CIAにステント留置となった。左SFAに関しては経過観察となり,その後は内服と心リハによる加療の方針となった。
③心臓リハビリテーション
27年2月から外来リハが開始となり,週1回の監視型運動療法に加え,毎日30分以上のウォーキングを指導した。運動機器はトレッドミルを使用して速度2.9km 傾斜12% 10分間5セット,下肢レジスタンストレーニングを継続した。3月からは速度を3.4kmに,9月には3.7kmに変更した。

【結果】

以下に外来開始時と8ヶ月後の各検査結果を示す。
<外来開始時>Rutherford-II ABI rt-0.77 Lt-0.53 FMD 0% 6MWD 275m 下肢筋量6.62kg HADS-A 8-D 4
<8ヶ月後>Rutherford-I-2 ABI rt-0.90 Lt-0.55 FMD6.8% 6MWD 465m 下肢筋量7.1kg HADS-A 8-D 3
足趾の状態は良好であり禁煙に成功。就労は午前のみの勤務で,急に走る必要がある場面には対応ができない。また,友人と歩いていると徐々についていけなくなる。

【結論】

本症例は,腹部大動脈完全閉塞に左SFA完全閉塞を合併した30代男性であり,残存狭窄のためABI値の改善は限定的であるが,心リハ継続により跛行症状が改善した。CTより側副血行路の発達が顕著であったことや,心リハ継続により血管内皮機能も著明に改善したため,血管新生や骨格筋代謝の改善により歩行能力が向上したと考える。しかし,就労や余暇活動においても未だ制限を受けており,今後の生活に対しての不安が残存している。

若年のLeriche症候群患者においては,就労復帰や余暇活動の再獲得など高い目標設定が必要である。そのため,運動療法の継続や冠危険因子の是正を図り,心理的サポートも含めた長期にわたる包括的な心リハの継続により,歩行能力のみならずQOL全般の改善を図る必要がある。