[O-HT-03-5] しゃがみ込み姿勢が血行動態に与える影響
キーワード:血行動態, 体位, 心機能
【はじめに,目的】
心臓リハビリテーションにおける生活指導は患者の病状リスクにあった指導を行う必要がある。当院では自宅退院後に農作業を希望される患者は多い。農作業の運動強度(METs)は明らかとなっているが心臓へ与える影響を理解しておく事も指導上重要と考える。農作業は様々な姿勢で行われ,特にしゃがみ込み姿勢で行うことは多い。本研究の目的はしゃがみ込み姿勢における血行動態の変化を検証することである。
【方法】
対象者は健常成人男性10名(平均年齢:29.6±3.9歳)とした。端座位を開始肢位とし,しゃがみ込み姿勢(膝最大深屈曲位)を保持させた。測定は収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MAP),心拍数(HR),経胸壁心エコー検査(TTE)を実施した。TTEは臨床検査技師により施行した。項目は左房径(LAD),一回心拍出量(SV),心拍出量(CO;SV×HR),E/e'を測定した。端座位と1分後のしゃがみ込み姿勢のままの両方で各測定を実施した。統計学的検定はWilcoxonの符号順位検定を実施した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
SBP(端座位120.2±10.7 vsしゃがみ込み131.5±9.3 mmHg,p<0.05),DBP(端座位76.7±9.0 vsしゃがみ込み82.9±9.3 mmHg,p<0.05),MAP(端座位91.6±9.1 vsしゃがみ込み100.0±9.3 mmHg,p<0.05),LAD(端座位2.2±0.4 vsしゃがみ込み2.9±0.4 cm,p<0.01),SV(端座位60.8±15.8 vsしゃがみ込み71.9±12.3 ml/min,p<0.05),CO(端座位3.9±0.7 vsしゃがみ込み4.8±0.7 L/min,p<0.01)が端座位よりしゃがみ込み姿勢において有意に高かった。HR,E/e'は有意な差を認めなかった。
【結論】
左室収縮力はSVとCO,前負荷はLADが指標となる。しゃがみ込むことで体幹前傾位,膝関節深屈曲となる。この肢位では端座位よりも腹腔内圧の上昇,下肢静脈圧迫が起こりやすい。その結果,静脈還流量すなわち前負荷を増加させSV増加に至ったと考えられる。また心拍数に有意差はなくCO増加はSV増加によるものといえる。左室拡張末期圧の指標であるE/e'に有意差はみられなかった。これは対象が健常成人であり,前負荷増加に対して十分な左室拡張予備能を備えている為と考えられる。後負荷指標であるMAPもしゃがみ込み姿勢は有意に高い。端座位と違い,殿部支持が無い為しゃがみ込み姿勢はより多くの下肢筋活動が必要になる事は明らかである。持続した筋収縮が体血管抵抗を増加させるといわれている。これはしゃがみ込み姿勢が静的運動と同様の反応を引き起こしているといえる。本研究対象者は健常成人であり十分な左室収縮能のため後負荷増加に対しても心拍出量を向上させる収縮力を発揮できていた。本研究結果より,しゃがみ込み姿勢は体位変換後早期より前負荷・心収縮力・後負荷を増加させる血行動態変化が明らかとなった。
心臓リハビリテーションにおける生活指導は患者の病状リスクにあった指導を行う必要がある。当院では自宅退院後に農作業を希望される患者は多い。農作業の運動強度(METs)は明らかとなっているが心臓へ与える影響を理解しておく事も指導上重要と考える。農作業は様々な姿勢で行われ,特にしゃがみ込み姿勢で行うことは多い。本研究の目的はしゃがみ込み姿勢における血行動態の変化を検証することである。
【方法】
対象者は健常成人男性10名(平均年齢:29.6±3.9歳)とした。端座位を開始肢位とし,しゃがみ込み姿勢(膝最大深屈曲位)を保持させた。測定は収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧(MAP),心拍数(HR),経胸壁心エコー検査(TTE)を実施した。TTEは臨床検査技師により施行した。項目は左房径(LAD),一回心拍出量(SV),心拍出量(CO;SV×HR),E/e'を測定した。端座位と1分後のしゃがみ込み姿勢のままの両方で各測定を実施した。統計学的検定はWilcoxonの符号順位検定を実施した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
SBP(端座位120.2±10.7 vsしゃがみ込み131.5±9.3 mmHg,p<0.05),DBP(端座位76.7±9.0 vsしゃがみ込み82.9±9.3 mmHg,p<0.05),MAP(端座位91.6±9.1 vsしゃがみ込み100.0±9.3 mmHg,p<0.05),LAD(端座位2.2±0.4 vsしゃがみ込み2.9±0.4 cm,p<0.01),SV(端座位60.8±15.8 vsしゃがみ込み71.9±12.3 ml/min,p<0.05),CO(端座位3.9±0.7 vsしゃがみ込み4.8±0.7 L/min,p<0.01)が端座位よりしゃがみ込み姿勢において有意に高かった。HR,E/e'は有意な差を認めなかった。
【結論】
左室収縮力はSVとCO,前負荷はLADが指標となる。しゃがみ込むことで体幹前傾位,膝関節深屈曲となる。この肢位では端座位よりも腹腔内圧の上昇,下肢静脈圧迫が起こりやすい。その結果,静脈還流量すなわち前負荷を増加させSV増加に至ったと考えられる。また心拍数に有意差はなくCO増加はSV増加によるものといえる。左室拡張末期圧の指標であるE/e'に有意差はみられなかった。これは対象が健常成人であり,前負荷増加に対して十分な左室拡張予備能を備えている為と考えられる。後負荷指標であるMAPもしゃがみ込み姿勢は有意に高い。端座位と違い,殿部支持が無い為しゃがみ込み姿勢はより多くの下肢筋活動が必要になる事は明らかである。持続した筋収縮が体血管抵抗を増加させるといわれている。これはしゃがみ込み姿勢が静的運動と同様の反応を引き起こしているといえる。本研究対象者は健常成人であり十分な左室収縮能のため後負荷増加に対しても心拍出量を向上させる収縮力を発揮できていた。本研究結果より,しゃがみ込み姿勢は体位変換後早期より前負荷・心収縮力・後負荷を増加させる血行動態変化が明らかとなった。