第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)04

Fri. May 27, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:森沢知之(兵庫医療大学 リハビリテーション学部), 飯田有輝(厚生連海南病院 リハビリテーション科)

[O-HT-04-1] 慢性腎臓病患者における身体活動量に関連する因子の検討

南部路治1,2, 呉屋太造1, 嶺井陽1, 新里朋子1,2, 相澤直輝2, 宮城あゆみ2, 天久達二3, 大屋祐輔2 (1.琉球大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学講座, 3.琉球大学医学部附属病院看護部)

Keywords:慢性腎臓病, 身体活動量, 虚血性心疾患

【目的】慢性腎臓病(CKD)患者の身体活動量に関連する因子を検討すること。


【方法】横断研究。2011年6月~2012年8月の期間に琉球大学医学部附属病院第三内科に通院する保存期CKD(stage 3,4,5)患者304例(男性172例,女性132例,年齢67.5±12.9歳)を対象とした。身体活動量の調査は理学療法ガイドラインに準じて国際標準化身体活動質問紙(IPAQ)を用いた。さらに身長,体重,BMI,血圧,ABI,PWV,既往歴,血液検査値としてWBC,HGB,PLT,中性脂肪,HDL-C,LDL-C,BUN,クレアチニン,推定糸球体濾過量(eGFR),血糖,HbA1cを調査した。IPAQの結果より高強度(6METs以上),中強度(6-3METs),低強度(3METs未満)の頻度(日)・時間(分)から消費エネルギー(kcal/日)を算出した。消費エネルギーの中央値から93.6 kcal/日未満(低活動群)or 93.6 kcal/日以上(活動群)の2群に分類し,各調査項目との関連についてunpaired t test,χ2検定を用いて検討した。さらに患者背景因子を独立変数,身体活動の中央値到達の有無を従属変数として多変量解析を行った。統計処理ソフトはJMP Version.7を使用し,統計学的有意水準はP<0.05とした。


【結果】患者背景因子および血液検査値を比較(低活動群vs. 活動群)して,年齢(69.4 vs. 65.6歳,p=0.0106),末梢動脈疾患(15.1 vs. 7.9%,p=0.0464),虚血性心疾患(IHD)(25.0 vs. 13.2%,p=0.0086),血糖(113 vs. 104 mg/dL,p=0.0084)で有意差を認めた。さらに多変量解析により低身体活動に関連する因子として,性差(OR 0.413,p=0.0313),高血圧(OR 6.072,p=0.0171),IHD(OR 3.598,p=0.0035)が抽出された。またCKD患者においてIHD合併例では高強度(IHD群vs. 非IHD群:0.07 vs. 2.36分/日,p=0.0323),中強度(2.95 vs. 23.0分/日,p<0.0001)は有意に低値を示し,CKD患者におけるIHD合併の関連因子を年齢,性別,リスクファクターで補正しても中強度の活動時間(OR 0.969,p=0.0071)が負の因子として採択された。


【考察】今回の調査でCKD患者の低身体活動は性差,高血圧およびIHD合併の有無と関連し,元より低身体活動のCKD患者にはIHD合併例が多いことが判明した。さらにCKD患者におけるIHD合併の有無は身体活動の中で,特に中強度活動が低値であった。これらのことは心腎連関の観点からもCKDと心血管疾患には密接な関係性があり,IHDを合併したCKD患者は心身機能低下によって,特に中強度の身体活動が大きく制限されていたことが推測される。一方で中強度以下の運動強度では腎機能へ持続的な悪影響を認めないという報告からも,十分なリスク管理のもとで適切な負荷による運動療法の介入・教育指導を勧める必要がある。


【理学療法学研究としての意義】本研究で明らかとなった問題点を考慮した上で,CKD患者の身体活動を維持・向上させるよう治療介入や教育指導をしていくことは,心血管リスクの予防に繋がることが期待できる。