[O-HT-04-3] フレイルの有無が心臓リハビリテーションの効果に与える影響について
Keywords:フレイル, 心臓リハビリテーション, 高齢者
【はじめに,目的】
近年,フレイルが心血管疾患の新たな予後規定因子として,注目されるようになった。しかし,本邦におけるフレイルの研究は,地域在住高齢者を対象としたものが主体で,心血管疾患患者を対象とした研究は少なく,中でも,フレイルを有する対象に対する介入効果の検討はほとんどなされていない。そこで,本研究の目的はフレイルの有無が心臓リハビリテーション(以下,心リハ)の効果に与える影響について検討することである。
【方法】
対象は2014年11月から2015年7月に当院の外来心リハに参加した65歳以上の高齢心血管疾患患者43例とした。対象者の主な疾患は,狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患,慢性心不全であった。Friedらのフレイル表現型であるCHS;Cardiovascular Health Study基準(体重減少,筋力低下,動作緩慢,活動性低下,疲労/倦怠感の有無で評価)を用いて,non-frail,pre-frail,frailの3群に分類し,栄養状態(BMI,Alb),筋力(握力,膝伸展筋力),周径(上腕,大腿,下腿),柔軟性(BST;Back Scratch Test,CSRT;Chair Sit Reach Test),バランス(片脚立位,FRT;Functional Reach Test),運動耐容能(心肺運動負荷試験のAT;嫌気性代謝閾値及びpeak VO2;最高酸素摂取量,6MWT;6分間歩行テスト),呼吸機能(肺活量,1秒率)体組成(骨格筋量,体脂肪率)が,3ヵ月間の心リハで,どのように変化するのかを検討した。詳細な方法としては,①3群間における初回評価の比較,②3群間における3ヵ月後評価の比較,③3群間における初回評価と3ヵ月評価との差の比較,④各群における心リハ前後での各種指標の変化について検討した。統計学的解析方法としては,①~③は分散分析後に多重比較検定,④は対応のあるt検定及びWilcoxonの符号付順位検定を行い,有意水準は5%とした。当院の心リハプログラムは,準備体操,有酸素運動,レジスタンストレーニング,整理体操で構成されている。
【結果】
①BMI,上腕周径,片脚立位,体脂肪率において,non-frailとfrailの間に有意な差を認めた。②BMI,片脚立位,骨格筋量,体脂肪率において,non-frailとfrailの間に有意な差を認めた。また片脚立位のみ,non-frailとpre-frailにも有意な差を認めた。③すべての項目において有意な差は認めなかった。④non-frailはBMI,CSRT,peakVO2,骨格筋量,体脂肪率に有意な改善を認め,pre-frailは膝伸展筋力,AT,peakVO2,6MWT,骨格筋量,体脂肪率に有意な改善を認めたが,frailはpeakVO2のみに有意な改善を認めた。
【結論】
フレイルであると,骨格筋量が少なく,体脂肪量が多い状態であった。また機能面では,バランスが悪くなる傾向であった。③の検討では,有意な差は認めなかったが,④の検討において,frailは1種目のみ改善を認めたのに対し,pre-frailやnon-frailでは多種目の改善を認めた。pre-frailやnon-frailは従来の心リハでも十分に効果が得られるが,frailにおいては,効果が少ないので,frailである対象者には,通常の心リハ以外のプログラムも検討する必要があると考えられた。
近年,フレイルが心血管疾患の新たな予後規定因子として,注目されるようになった。しかし,本邦におけるフレイルの研究は,地域在住高齢者を対象としたものが主体で,心血管疾患患者を対象とした研究は少なく,中でも,フレイルを有する対象に対する介入効果の検討はほとんどなされていない。そこで,本研究の目的はフレイルの有無が心臓リハビリテーション(以下,心リハ)の効果に与える影響について検討することである。
【方法】
対象は2014年11月から2015年7月に当院の外来心リハに参加した65歳以上の高齢心血管疾患患者43例とした。対象者の主な疾患は,狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患,慢性心不全であった。Friedらのフレイル表現型であるCHS;Cardiovascular Health Study基準(体重減少,筋力低下,動作緩慢,活動性低下,疲労/倦怠感の有無で評価)を用いて,non-frail,pre-frail,frailの3群に分類し,栄養状態(BMI,Alb),筋力(握力,膝伸展筋力),周径(上腕,大腿,下腿),柔軟性(BST;Back Scratch Test,CSRT;Chair Sit Reach Test),バランス(片脚立位,FRT;Functional Reach Test),運動耐容能(心肺運動負荷試験のAT;嫌気性代謝閾値及びpeak VO2;最高酸素摂取量,6MWT;6分間歩行テスト),呼吸機能(肺活量,1秒率)体組成(骨格筋量,体脂肪率)が,3ヵ月間の心リハで,どのように変化するのかを検討した。詳細な方法としては,①3群間における初回評価の比較,②3群間における3ヵ月後評価の比較,③3群間における初回評価と3ヵ月評価との差の比較,④各群における心リハ前後での各種指標の変化について検討した。統計学的解析方法としては,①~③は分散分析後に多重比較検定,④は対応のあるt検定及びWilcoxonの符号付順位検定を行い,有意水準は5%とした。当院の心リハプログラムは,準備体操,有酸素運動,レジスタンストレーニング,整理体操で構成されている。
【結果】
①BMI,上腕周径,片脚立位,体脂肪率において,non-frailとfrailの間に有意な差を認めた。②BMI,片脚立位,骨格筋量,体脂肪率において,non-frailとfrailの間に有意な差を認めた。また片脚立位のみ,non-frailとpre-frailにも有意な差を認めた。③すべての項目において有意な差は認めなかった。④non-frailはBMI,CSRT,peakVO2,骨格筋量,体脂肪率に有意な改善を認め,pre-frailは膝伸展筋力,AT,peakVO2,6MWT,骨格筋量,体脂肪率に有意な改善を認めたが,frailはpeakVO2のみに有意な改善を認めた。
【結論】
フレイルであると,骨格筋量が少なく,体脂肪量が多い状態であった。また機能面では,バランスが悪くなる傾向であった。③の検討では,有意な差は認めなかったが,④の検討において,frailは1種目のみ改善を認めたのに対し,pre-frailやnon-frailでは多種目の改善を認めた。pre-frailやnon-frailは従来の心リハでも十分に効果が得られるが,frailにおいては,効果が少ないので,frailである対象者には,通常の心リハ以外のプログラムも検討する必要があると考えられた。