[O-KS-01-5] 超音波照射が筋弾性率に与える影響
せん断波エラストグラフィーによる検討
Keywords:超音波, 弾性率, 腓腹筋内側頭
【はじめに，目的】
超音波により，筋の伸張性が向上し，関節可動域（ROM）が増大するとされている。しかしながら，ROMは痛みや伸張刺激に対する慣れなどの影響を受けるため，筋の伸張性評価には不適切という報告がある。さらに，超音波を用いて筋の弾性変化を検証した報告はない。近年，超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能（SWE）によって，筋の弾性率評価が非侵襲的に可能となった。SWEで測定される弾性率は筋の伸張性を反映することが報告されている。本研究の目的は，SWEを用いて筋弾性率に対する超音波の効果を明らかにすることである。
【方法】
対象は，健常成人男性11名（年齢25±2.7歳，身長172.1±6.2cm，体重68.3±7.6kg，BMI 23.0±1.7）である。研究デザインは，クロスオーバー試験を採用し，同一被験者に対し1．超音波照射あり（US群），2．超音波照射なしの擬似的施行（プラセボ群）の2つの条件を無作為順序にて実施した。超音波出力条件は，周波数1MHz，強度1.5W/cm2，照射時間率100%，照射時間10分間とした。超音波照射には超音波治療器（EU-910，伊藤超短波社製）を用いた。施行部位は，利き脚の腓腹筋内側頭とし，ストレッチ効果が生じない筋短縮位の足関節底屈30°位で超音波を照射した。評価項目は，1．筋弾性率，2．組織温度（表面・深部温度）とした。筋弾性率は，SWE（Aixplorer，Super Sonic Imagine社製）を用いて，腓腹筋内側頭・外側頭，それぞれ直下のヒラメ筋の弾性率を足関節底屈30°位（短縮位），底・背屈0°位（中間位），背屈20°位（伸張位）の3つの角度で測定した。測定角度は，多用途筋機能評価運動装置（Biodex System 4，Biodex Medical Systems社製）にて設定し，測定肢位は腹臥位（膝関節伸展0°位）とした。組織温度は，表面温度に放射温度計（IT2-80，KEYENCE社製），深部温度に熱流補償式体温計（コアテンプCTM-205，TERUMO社製）を用いて腓腹筋内側頭の筋温を測定した。各測定は，US群とプラセボ群の施行前後にそれぞれ実施した。統計解析は，反復測定による二元配置分散分析，事後検定に多重比較法（Bonferroni）を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定による二元配置分散分析の結果，足関節背屈20°位（伸張位）での腓腹筋内側頭の弾性率，表面温度および深部温度において交互作用を認めた（p＜0.05）。多重比較法の結果，腓腹筋内側頭の弾性率は，US群が施行前に比べ施行後で有意に低下した（p＜0.01）。表面温度は，US群とプラセボ群が施行前に比べ施行後で有意に低下した（p＜0.05）。深部温度は，US群が施行前に比べ施行後で有意に上昇した（p＜0.05）。
【結論】
超音波は，筋にストレッチが加わっていない短縮位での照射においても筋の弾性率を低下させる効果があることが示唆された。本結果は，腓腹筋内側頭の筋温上昇からも超音波の高周波振動刺激による直接的な効果が作用したものと考えられる。
超音波により，筋の伸張性が向上し，関節可動域（ROM）が増大するとされている。しかしながら，ROMは痛みや伸張刺激に対する慣れなどの影響を受けるため，筋の伸張性評価には不適切という報告がある。さらに，超音波を用いて筋の弾性変化を検証した報告はない。近年，超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能（SWE）によって，筋の弾性率評価が非侵襲的に可能となった。SWEで測定される弾性率は筋の伸張性を反映することが報告されている。本研究の目的は，SWEを用いて筋弾性率に対する超音波の効果を明らかにすることである。
【方法】
対象は，健常成人男性11名（年齢25±2.7歳，身長172.1±6.2cm，体重68.3±7.6kg，BMI 23.0±1.7）である。研究デザインは，クロスオーバー試験を採用し，同一被験者に対し1．超音波照射あり（US群），2．超音波照射なしの擬似的施行（プラセボ群）の2つの条件を無作為順序にて実施した。超音波出力条件は，周波数1MHz，強度1.5W/cm2，照射時間率100%，照射時間10分間とした。超音波照射には超音波治療器（EU-910，伊藤超短波社製）を用いた。施行部位は，利き脚の腓腹筋内側頭とし，ストレッチ効果が生じない筋短縮位の足関節底屈30°位で超音波を照射した。評価項目は，1．筋弾性率，2．組織温度（表面・深部温度）とした。筋弾性率は，SWE（Aixplorer，Super Sonic Imagine社製）を用いて，腓腹筋内側頭・外側頭，それぞれ直下のヒラメ筋の弾性率を足関節底屈30°位（短縮位），底・背屈0°位（中間位），背屈20°位（伸張位）の3つの角度で測定した。測定角度は，多用途筋機能評価運動装置（Biodex System 4，Biodex Medical Systems社製）にて設定し，測定肢位は腹臥位（膝関節伸展0°位）とした。組織温度は，表面温度に放射温度計（IT2-80，KEYENCE社製），深部温度に熱流補償式体温計（コアテンプCTM-205，TERUMO社製）を用いて腓腹筋内側頭の筋温を測定した。各測定は，US群とプラセボ群の施行前後にそれぞれ実施した。統計解析は，反復測定による二元配置分散分析，事後検定に多重比較法（Bonferroni）を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定による二元配置分散分析の結果，足関節背屈20°位（伸張位）での腓腹筋内側頭の弾性率，表面温度および深部温度において交互作用を認めた（p＜0.05）。多重比較法の結果，腓腹筋内側頭の弾性率は，US群が施行前に比べ施行後で有意に低下した（p＜0.01）。表面温度は，US群とプラセボ群が施行前に比べ施行後で有意に低下した（p＜0.05）。深部温度は，US群が施行前に比べ施行後で有意に上昇した（p＜0.05）。
【結論】
超音波は，筋にストレッチが加わっていない短縮位での照射においても筋の弾性率を低下させる効果があることが示唆された。本結果は，腓腹筋内側頭の筋温上昇からも超音波の高周波振動刺激による直接的な効果が作用したものと考えられる。