第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)01

2016年5月27日(金) 12:30 〜 13:30 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:宮﨑純弥(京都橘大学 健康科学部理学療法学科)

[O-KS-01-6] ラット足関節に発生した関節拘縮に対するストレッチング力の違いがヒラメ筋柔軟性に与える経時的な影響

石倉英樹1, 小野武也1,2, 相原一貴1, 佐藤勇太1, 松本智博1, 田坂厚志3, 梅井凡子2, 積山和加子2, 沖貞明2 (1.県立広島大学大学院総合学術研究科, 2.県立広島大学保健福祉学部理学療法学科, 3.大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)

キーワード:拘縮, 筋柔軟性, ストレッチング

【はじめに,目的】

関節拘縮とは,関節周囲に存在する軟部組織が関与した関節可動域の制限である。その中でも筋は関節拘縮に大きく影響している。臨床では,ギプス固定などで発生した関節拘縮に対し,筋の柔軟性改善を図る目的でストレッチングを行う。先行研究において,ストレッチングは比較的弱い力を用いる方が関節可動域の改善を起こすことが報告されているが,同時に筋の柔軟性を評価している先行研究はない。そこで本研究は発生した関節拘縮に対し,異なる2つの力でストレッチングを行い,その後の筋の柔軟性の経時的な変化を比較した。

【方法】

実験動物は9週齢のWistar系雄ラット36匹を使用した。使用したラットの体重は300.2±6.5g(平均±標準偏差)であった。すべてのラットは両後肢を膝関節最大伸展位,足関節最大底屈位で保持して4週間関節固定を実施した。その後関節固定を除去し,背屈ストレッチングを0.3Nの力で行う0.3N群(18匹),3.0Nの力で行う3.0N群(18匹)の2群に分け,それぞれストレッチング直後(6匹),3日後(6匹),7日後(6匹)にヒラメ筋の引張試験を行った。

背屈ストレッチングは麻酔下にて0.3N群と3.0N群の両足部に対して30分間行った。ストレッチングに加える力は正常なラット足関節を最小限の力で全範囲動かせる0.3N,使用したラット体重と同等の3.0Nとした。

引張試験は麻酔下にてラットを屠殺し,ラット左後肢大腿骨を切断して引張試験機に取り付け,脛骨と腓骨を切断しヒラメ筋のみを伸張した。正常なラットヒラメ筋は足関節最大底屈位から最大背屈位までに10mm伸張する。そのため,本研究では10mm伸張時に必要な張力をヒラメ筋の柔軟性と定義した。

統計処理はストレッチング直後,3日後,7日後のそれぞれについて,0.3N群と3.0N群を比較した。正規性をShapiro-Wilk検定にて確認し,正規性が見られた場合には対応のないt検定を,正規性が見られなかった場合はMann-Whitney U testを行った。

【結果】

ヒラメ筋の柔軟性の平均値および標準偏差は,0.3N群においてストレッチング直後が2.1±0.3N,3日後が3.0±0.7N,7日後が2.0±0.4Nであり,3.0N群においてストレッチング直後が1.3±0.5N,3日後が3.9±0.5N,7日後が2.6±0.3Nであった。統計処理の結果,正規性が認められなかったため,Mann-Whitney U testを行った。その結果,ストレッチング直後,3日後,7日後で0.3N群と3.0N群の間に有意差を認めた(p<0.05)。

【結論】

本研究において,0.3N群と比較して3.0N群の筋の柔軟性はストレッチング直後で良かったが,3日目以降は悪化していた。このことから,発生した関節拘縮に対するストレッチングは体重と同等の力を加えると筋の柔軟性を悪化させることがわかった。