第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)04

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:大西秀明(新潟医療福祉大学 理学療法学科)

[O-KS-04-1] 後肢免荷に対する高重力介入がラットの歩容変化に与える影響

太治野純一1, 伊藤明良2,3, 長井桃子4, 張項凱1, 山口将希1,3, 飯島弘貴1,3, 喜屋武弥1, 青山朋樹1, 黒木裕士1 (1.京都大学大学院医学研究科理学療法学講座, 2.京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座整形外科学, 3.日本学術振興会特別研究員, 4.京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター)

Keywords:免荷, ラット, 歩行

【はじめに,目的】

組織損傷後や手術後の長期間にわたる関節固定や免荷は,骨量低下や筋萎縮だけでなく運動パフォーマンスの低下をもたらし,移動能力の低下や社会復帰の遅延につながる。遠心重力による荷重介入は,これらの影響を抑える有効な手段のひとつと考えられるが,その効果検証は骨量・筋量維持に注目したものが主であり,動作の質的変化に関するものは少数である。私達は昨年,免荷期間中の間欠的高荷重介入(2倍荷重,1時間/日)がラットの歩容変化を抑制することを示したが(第50回日本理学療法学術大会:O-0104),適切な介入強度・介入持続時間の検証は十分にはなされていない。そこで本研究は後肢免荷したラットに対して種々の強度・持続時間の荷重介入を実施し,歩容変化に対する影響を評価する事を目的とした。

【方法】

8週齢のWistar系雄ラットを対照群(Ctrl)と実験群に分け,対照群については4週間自由飼育を実施した。実験群は前半2週間を後肢免荷環境で飼育し,後半2週間は通常荷重に戻して自由飼育した。実験群はさらに免荷期間中の介入によって継続免荷(UL),免荷+再荷重1時間/日(+1G),免荷+1.5G80分/日(+1.5G80min),免荷+2.5G48分(+2.5G48min)の4群に分割し,それぞれの強度で実験・評価を実施した。各群において実験期間の2週目と4週目(各群n=6/2週間)に体重測定と歩行観測後に安楽死させ,内側ヒラメ筋・腓腹筋を摘出し湿重量を測定した。歩容の解析には三次元動作解析装置を用いて各群ラットのトレッドミル歩行(12m/min)を記録し,膝・足関節角度の推移を解析した。統計手法には多重比較検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

後肢抗重力筋群(内側ヒラメ筋・腓腹筋)湿重量の体重比については,各実験群とも免荷2週時点で対照群と比較して一旦有意に減少(p<0.05)した後,再荷重2週時点までに回復した。歩容に関しては,免荷2週時点で立脚中期において膝・足関節が対照群と比較して有意に伸展していた(各p<0.05)。再荷重2週目では,+1.5G80min群は対照群との有意差は消失したのに対し(膝関節:Ctrl 72.9°±4.9,+1.5G80min 68.9°±6.1(SD),p>0.05;足関節:Ctrl 71.3°±2.1,+1.5G80min 78.8°±4.1(SD),p>0.05),UL,+1Gおよび+2.5G48min群では有意な伸展が引き続き観測された(膝関節:UL 100.5°±4.4,+1G 91.6°±6.5,+2.5G48min 78.8°±4.1(SD),p<0.05;足関節:UL 98.8°±4.5,+1G 94.4±3.4,+2.5G48min 82.7°±3.2(SD),p<0.05)。

【結論】

2週間の後肢免荷によって生じたラットの歩容変化は,抗重力筋群の萎縮/回復とは異なる時系列で変移することが示唆された。また今回の試行においては1.5G80分/日の介入が歩容への影響を最も抑え,より強い重力での短時間介入では効果が低いことが示唆された。今後の研究では,荷重介入が中枢神経系に及ぼす影響など,運動器と動作の変化に相違が生じるメカニズムを評価することが求められる。