第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)04

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:大西秀明(新潟医療福祉大学 理学療法学科)

[O-KS-04-3] 末梢神経電気刺激が運動関連脳電位へ及ぼす影響

―ランダム化クロスオーバーデザインによる比較―

酒向敦裕1,2, 渡部友宏1, 堀場俊介1, 水梨史也1, 下岩克章1, 北村哲也1, 酒向俊治3, 金田嘉清4 (1.愛知県済生会リハビリテーション病院, 2.藤田保健衛生大学大学院保健学研究科, 3.名古屋医専理学療法学科, 4.藤田保健衛生大学医療科学部)

Keywords:末梢神経電気刺激, 運動関連脳電位, 橈骨神経

【目的】

末梢神経電気刺激(以下,PNS)療法は感覚閾値上の電気刺激と運動療法を併用することで上肢機能を改善させる(Ziling Lin, et al., 2011)。またPNSによる皮質脊髄路の興奮性増大が報告(Luft AR, 2002)され,運動学習への有効性が示唆されている。一方,運動関連脳電位(以下,MRCP)は,随意運動が発現する前の脳内情報処理を反映し,運動学習によって潜時の短縮および振幅が低下するとされている(David, 2011)。しかしながら,PNSの効果に関してMRCPによって検討した報告は少ない。本研究は橈骨神経へのPNSが随意手関節背屈運動における脳内情報処理過程へ及ぼす影響をMRCPで検討することを目的とした。

【方法】

対象は健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢23.3±1.42歳)とした。研究デザインはランダム化クロスオーバーデザインとした。対象者10名をランダムに(A)PNSの3日後に偽刺激,(B)偽刺激の3日後にPNSと2群へ分け,各群の刺激をクロスオーバーさせた。偽刺激は電極のみ設置し,30分の安静および15分の随意運動とした。各刺激の前後はMRCPをそれぞれ測定した。PNSは刺激装置にOG Pluscure-PRO KR-70(OG技研社製)を使用し,橈骨神経に45分(30分電気刺激,15分電気刺激と随意運動),刺激強度1-100mA,周波数10Hz,パルス幅0.25msec,on/off時間500-1000ms/500-1000msで施行した。MRCPはNeuropackΣ MEB-5500(日本光電社製)を使用し,国際10/20法に則り電極設置した。対象者に3秒に1回のペースで手関節背屈運動を行わせ,筋電図トリガーは橈側手根伸筋とした。加算回数は100回とし,頭皮上のインピーダンスは10kΩ以下とした。解析区間はEMG onset前の1500msからEMG onset後300msとした。抽出項目はMRCPの立ち上がりからonsetEMG(MRCPの潜時)とMRCPの最大振幅とした。統計処理は各群の刺激前後におけるMRCPの潜時と最大振幅の比較をMann-WhitneyのU検定を用いた。尚,有意水準は5%未満とした。時期効果の有無として各刺激前のMRCPの結果で一元配置分散分析を行い,有意差がないことを確認した。

【結果】

偽刺激群での潜時と最大振幅は刺激前が-1118±234.8ms,11.0±5.08μV,刺激後が-1104±208.4ms,12.4±5.38μVであった。PNS群での潜時と振幅はPNS前が-1280±221.8ms,6.9±2.54μV,PNS後が-944±208.4ms,9.9±3.06μVであった。PNS群ではPNS前後に有意な潜時短縮(p=0.004)と振幅の増大(p=0.041)を認めた。偽刺激群では有意差を認めなかった(p>0.05)。

【結論】

本研究は橈骨神経へのPNSが脳内情報処理過程に及ぼす影響をMRCPで検討することを目的としている。運動学習によってMRCPの潜時は短縮するとされている。PNSは運動学習への有効性が示唆されており,今回の結果はそれらを支持するものであると考える。さらに有意なMRCP振幅の増大を認めたことにより,運動直後の感覚フィードバックの増大が脳内情報処理過程の短縮に影響した一因であることが示唆された。