第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)04

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:大西秀明(新潟医療福祉大学 理学療法学科)

[O-KS-04-4] 脳梗塞発症前トレッドミル運動による障害軽減効果と神経保護作用機序の検討

大塚章太郎1, 角園恵1, 寺師拓斗1, 高田聖也1, 吉田義弘2, 榊間春利2 (1.鹿児島大学大学院保健学研究科, 2.鹿児島大学医学部保健学科基礎理学療法学講座)

Keywords:脳梗塞ラット, 血管増生, 酸化ストレス

【はじめに,目的】

我々は第50回の本学会で,脳梗塞発症前運動は脳梗塞縮小効果があり,そのメカニズムとしてペナンブラ領域における神経栄養因子Midkine(MK)やBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の発現増加を報告した。しかし,神経保護作用には種々の要因が複雑に関係している。今回,神経栄養因子の発現,グリア増生,血管増生,アポトーシス,酸化ストレスに着目して,脳梗塞発症前の定期的な運動による脳梗塞後の神経保護作用機序について検討した。

【方法】

実験動物にはSD系雄性ラット34匹(平均体重280.1±44.9g)を用いた。無作為に,①運動+脳梗塞群(Ex群:n=11),②非運動+脳梗塞群(No-Ex群n=11),③運動のみ(Ex-only群n=6),④運動も脳梗塞も行わない群(Control群:n=6)に分けた。運動群はトレッドミル運動(25m/min,30分/日,5回/週)を3週間行った。No-Ex群とControl群は3週間自由飼育した。3週後,60分間の虚血,再灌流により脳梗塞モデルを作製した。Ex-only群とControl群はストレスの指標である血中コルチゾール濃度を測定した。脳梗塞作成48時間後に,神経学的評価や運動-感覚機能評価(Beam Walking,Rotarod,テープテスト)を行った。脳を採取しTTC染色後,脳梗塞巣の体積を測定した。MK,BDNF,アストロサイトのマーカーであるGFAP,微小血管のマーカーであるPECAM-1,アポトーシスのマーカーであるCaspase-3,フリーラジカルによる組織障害のバイオマーカーである3-Nitrotyrosine(3-NT)の抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。ペナンブラ領域における陽性細胞面積を定量化した。統計学的検定は一元配置分散分析後,多重比較を行い,有意水準は5%とした。

【結果】

血中コルチゾール濃度は運動群と非運動群の間に有意差は認められなかった。脳梗塞巣の体積はEx群がNo-Ex群と比べて有意に縮小していた。Beam walkingやテープテストはEx群で有意に改善していた。免疫組織化学染色の結果,Ex-only群やControl群の間に有意差は観察されなかった。Ex群はNo-Ex群に比べ,MK,BDNF,GFAP,PECAM-1免疫陽性細胞面積が有意に増加していた。Ex群のCaspase-3や3-NT免疫陽性細胞面積はNo-Ex群と比較して有意に減少していた。

【結論】

ストレスのない定期的な運動により脳梗塞巣の縮小効果や運動-感覚機能の改善が認められた。そのメカニズムとして,MK,BDNFの発現増加,アストロサイトの活性化促進,血管増生の促進,ペナンブラ領域のアポトーシス抑制,酸化ストレス抑制が脳梗塞後早期の神経保護作用に関与していることが示唆された。