[O-KS-05-2] 下肢伸展拳上(SLR)時の拳上角度と骨盤後傾との関係
Keywords:下肢伸展拳上, 骨盤, 後傾
【はじめに,目的】
下肢伸展拳上(以下,SLRとする)テストは,ハムストリングスの短縮の評価に用いられるが,最終域での骨盤後傾は古くから指摘されている。この指摘に関しては安静臥位時に貼付した皮膚上マーカーにより骨盤角度を計測している報告は多いが,この方法は測定誤差がかなり大きい。一方,ハムストリングスの起始部,停止部からすると,骨盤後傾はSLR途中から生じるものと考えられる。今回の目的は以下の2つである:電気角度計を用いて,1)SLRテスト時の骨盤後傾開始角度を測定し,2)最大SLR角度での骨盤後傾の様相を明らかにすることである。
【方法】
健常な大学生15名(年齢22.2±0.7歳,身長163.5±8.5cm,体重59.2±8.7kg)は,測定用ベッド上にて背臥位で両側の上前腸骨棘をベルトで固定された。左側のSLR角度,および骨盤後傾角度を測定するために二つの電気角度計(Biometrics,SG110)が用いられた。SLR角度の測定では,左側の大転子と外果を結ぶ線上に,電気角度計を貼付したアルミ棒を取り付けた。この棒の一端は外果部に固定され,もう一端はSLR角度変化に伴う大転子位置に合わせられた。骨盤後傾の測定では,仙骨部に電気角度計が取り付けられた。測定手順:1)SLR最終域の測定:SLR最終域を他動で3回測定し平均値を求めた。2)骨盤後傾角度の測定:1)で求めた値を5°単位で切り捨てた値を最大SLR角度(上限を90°)とした。SLRが0°から最大SLR角度までの間を5°刻みで設定した角度でのSLRをランダムな順番で他動的に3回ずつ行い,各SLR角度での骨盤後傾角度を測定した。最も大きな骨盤後傾角度を最後傾角度とした。分析:SLR角度と骨盤後傾角度との関係を被験者毎に多項式で近似し,その近似式より骨盤が後傾を開始したときのSLR角度(骨盤後傾開始角度)が求められた。最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との関係,および最大SLR角度での骨盤後傾角度の割合を後傾率としたときの最大SLR角度と後傾率との関係は,ピアソンの相関分析により検討された。
【結果】
SLR最終域は83.8±15.6°,最後傾角度は12.1±7.5°および骨盤後傾開始角度は29.6±13.7°であった。最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との間には有意な相関は認められなかった。最大SLR角度と後傾率との間には有意な相関が認められた(r=0.55,p=0.027)。最大SLR角度が80から90°であった8名の最後傾角度は,3から25°であった。
【結論】
骨盤後傾開始角度は約30°であったが,最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との間には有意な相関は認められなかったことから,骨盤後傾開始角度はハムストリングスの短縮の程度とは関係ないかもしれない。最後傾角度は平均12°であったが,最大SLR角度と後傾率との間には有意な相関が認められた。加えて,最大SLR角度が80から90°の場合,最後傾角度が3から25°であったことから,SLR角度が大きい場合ほど,骨盤後傾に留意すべきであると考えられた。
下肢伸展拳上(以下,SLRとする)テストは,ハムストリングスの短縮の評価に用いられるが,最終域での骨盤後傾は古くから指摘されている。この指摘に関しては安静臥位時に貼付した皮膚上マーカーにより骨盤角度を計測している報告は多いが,この方法は測定誤差がかなり大きい。一方,ハムストリングスの起始部,停止部からすると,骨盤後傾はSLR途中から生じるものと考えられる。今回の目的は以下の2つである:電気角度計を用いて,1)SLRテスト時の骨盤後傾開始角度を測定し,2)最大SLR角度での骨盤後傾の様相を明らかにすることである。
【方法】
健常な大学生15名(年齢22.2±0.7歳,身長163.5±8.5cm,体重59.2±8.7kg)は,測定用ベッド上にて背臥位で両側の上前腸骨棘をベルトで固定された。左側のSLR角度,および骨盤後傾角度を測定するために二つの電気角度計(Biometrics,SG110)が用いられた。SLR角度の測定では,左側の大転子と外果を結ぶ線上に,電気角度計を貼付したアルミ棒を取り付けた。この棒の一端は外果部に固定され,もう一端はSLR角度変化に伴う大転子位置に合わせられた。骨盤後傾の測定では,仙骨部に電気角度計が取り付けられた。測定手順:1)SLR最終域の測定:SLR最終域を他動で3回測定し平均値を求めた。2)骨盤後傾角度の測定:1)で求めた値を5°単位で切り捨てた値を最大SLR角度(上限を90°)とした。SLRが0°から最大SLR角度までの間を5°刻みで設定した角度でのSLRをランダムな順番で他動的に3回ずつ行い,各SLR角度での骨盤後傾角度を測定した。最も大きな骨盤後傾角度を最後傾角度とした。分析:SLR角度と骨盤後傾角度との関係を被験者毎に多項式で近似し,その近似式より骨盤が後傾を開始したときのSLR角度(骨盤後傾開始角度)が求められた。最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との関係,および最大SLR角度での骨盤後傾角度の割合を後傾率としたときの最大SLR角度と後傾率との関係は,ピアソンの相関分析により検討された。
【結果】
SLR最終域は83.8±15.6°,最後傾角度は12.1±7.5°および骨盤後傾開始角度は29.6±13.7°であった。最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との間には有意な相関は認められなかった。最大SLR角度と後傾率との間には有意な相関が認められた(r=0.55,p=0.027)。最大SLR角度が80から90°であった8名の最後傾角度は,3から25°であった。
【結論】
骨盤後傾開始角度は約30°であったが,最大SLR角度と骨盤後傾開始角度との間には有意な相関は認められなかったことから,骨盤後傾開始角度はハムストリングスの短縮の程度とは関係ないかもしれない。最後傾角度は平均12°であったが,最大SLR角度と後傾率との間には有意な相関が認められた。加えて,最大SLR角度が80から90°の場合,最後傾角度が3から25°であったことから,SLR角度が大きい場合ほど,骨盤後傾に留意すべきであると考えられた。