[O-KS-08-1] バランスボード上における姿勢制御の順応効果について
キーワード:バランスボード, 姿勢制御, 順応
【はじめに,目的】
静的バランスは,支持基底面(Base of support:BOS)内に体重心(Body's center of mass:COM)を保持する中枢神経系の能力に依存する。理学療法場面では,BOSが狭い底部が円上のバランスボードを用いたバランス練習がよく行われる。しかしながら,このようなBOSが狭く固定されていない不安定な状況下の姿勢制御の順応効果については十分に知られていない。BOSが狭く固定された床面動揺では,股関節戦略が増強することは周知されている(Horak and Nashner, 1986)。しかしながら,この状況は底部が固定されているため足関節戦略が制約されていた可能性が高い。BOSが狭く不規則に動く条件下では,多関節の戦略が用いられることが推察される(Ooteghem, et al., 2009)。従って,本研究の目的は非固定狭小BOSを用いたバランス練習の姿勢制御の順応効果を検証することだった。本研究の結果は,バランス能力の低下者と比較検討するための基礎的資料となる。
【方法】
対象は,健常若年者13名(男性7名,22.7±1.3歳)だった。矢状面の下肢関節角度(Range of motion:ROM),COM,および足圧中心点(Center of pressure:COP)を算出するために,三次元動作解析システムと床反力計を用いた。矢状方向のみ不安定となる底部が円上のバランスボード(幅30cm,長さ50cm,底部半径6cm)を床反力計上に設置した。対象者はボード上に立ち,横に置かれた支持棒を把持した。対象者はできるだけ安定して長く保つように指された。対象者が支持棒を離した後記録を開始し,開始からボード端が床に接地するまでを保持時間とした。各対象者,90秒以上保持できるまで実施した。姿勢安定性は,安定性限界(Margin of stability:MOS,Hof, et al., 2005)を指標とし,姿勢戦略は,COPとCOM間の距離(COP-COM間距離),ROM,およびCOP動揺の中央値周波数(Median power frequency:MPF)用いて検証した。1回目の施行(練習前)と90秒以上保持出来た最後の施行(練習後)を対応のあるt検定を用いて比較した。危険率は5%とした。
【結果】
対象者が90秒以上保持できるまでに要した平均施行数は,11.3±6.4回であった。平均保持時間は練習後有意に延長した(練習前:29.5±33.6秒,練習後:129.9±39.2秒)(p<0.01)。MOS,COP-COM間距離,およびMPFは,練習後に有意に低下した(p<0.05)。一方,ROMはいずれの関節も練習前後に有意差はなかった(p>0.05)。
【結論】
姿勢安定性の向上は,保持時間の延長およびMOSの低下によって示された。その要因として,COP動揺の中央値周波数の低下とCOP-COM間距離の低下から,Feedforward制御が優位となり(Duarte and Zatsiorsky, 2002),また,COMの位置に対してCOPを近づける能力が増強されたことが示唆される(Bhatt, et al., 2006)。一方,いずれの関節も有意差がなかったことから,単一の関節戦略ではなく多関節が協調的に運動するMulti-segment strategyが増強されたためと考えられる。
静的バランスは,支持基底面(Base of support:BOS)内に体重心(Body's center of mass:COM)を保持する中枢神経系の能力に依存する。理学療法場面では,BOSが狭い底部が円上のバランスボードを用いたバランス練習がよく行われる。しかしながら,このようなBOSが狭く固定されていない不安定な状況下の姿勢制御の順応効果については十分に知られていない。BOSが狭く固定された床面動揺では,股関節戦略が増強することは周知されている(Horak and Nashner, 1986)。しかしながら,この状況は底部が固定されているため足関節戦略が制約されていた可能性が高い。BOSが狭く不規則に動く条件下では,多関節の戦略が用いられることが推察される(Ooteghem, et al., 2009)。従って,本研究の目的は非固定狭小BOSを用いたバランス練習の姿勢制御の順応効果を検証することだった。本研究の結果は,バランス能力の低下者と比較検討するための基礎的資料となる。
【方法】
対象は,健常若年者13名(男性7名,22.7±1.3歳)だった。矢状面の下肢関節角度(Range of motion:ROM),COM,および足圧中心点(Center of pressure:COP)を算出するために,三次元動作解析システムと床反力計を用いた。矢状方向のみ不安定となる底部が円上のバランスボード(幅30cm,長さ50cm,底部半径6cm)を床反力計上に設置した。対象者はボード上に立ち,横に置かれた支持棒を把持した。対象者はできるだけ安定して長く保つように指された。対象者が支持棒を離した後記録を開始し,開始からボード端が床に接地するまでを保持時間とした。各対象者,90秒以上保持できるまで実施した。姿勢安定性は,安定性限界(Margin of stability:MOS,Hof, et al., 2005)を指標とし,姿勢戦略は,COPとCOM間の距離(COP-COM間距離),ROM,およびCOP動揺の中央値周波数(Median power frequency:MPF)用いて検証した。1回目の施行(練習前)と90秒以上保持出来た最後の施行(練習後)を対応のあるt検定を用いて比較した。危険率は5%とした。
【結果】
対象者が90秒以上保持できるまでに要した平均施行数は,11.3±6.4回であった。平均保持時間は練習後有意に延長した(練習前:29.5±33.6秒,練習後:129.9±39.2秒)(p<0.01)。MOS,COP-COM間距離,およびMPFは,練習後に有意に低下した(p<0.05)。一方,ROMはいずれの関節も練習前後に有意差はなかった(p>0.05)。
【結論】
姿勢安定性の向上は,保持時間の延長およびMOSの低下によって示された。その要因として,COP動揺の中央値周波数の低下とCOP-COM間距離の低下から,Feedforward制御が優位となり(Duarte and Zatsiorsky, 2002),また,COMの位置に対してCOPを近づける能力が増強されたことが示唆される(Bhatt, et al., 2006)。一方,いずれの関節も有意差がなかったことから,単一の関節戦略ではなく多関節が協調的に運動するMulti-segment strategyが増強されたためと考えられる。