[O-KS-08-3] Passive cyclingが脊髄反射経路と神経反応時間に及ぼす影響
キーワード:Passive cycling, H反射, 神経反応時間
【はじめに,目的】
近年,低体力者に対するモーター付電動自転車を用いたpassive cyclingによる介入効果が幾つか報告されている。しかし,ヒトにおけるpassive cyclingによる機能改善メカニズムの詳細は未だ不明である。一方で短時間の安静臥床により脊髄反射経路の興奮性が低下するとの報告があり,passive cyclingにより脊髄反射経路の興奮性を維持,あるいは向上できれば,passive cyclingの効果を解明する一助と成り得る。そこで,本研究では安静臥床条件と臥位でのpassive cycling介入前後のreaction time(RT)およびH反射を比較し,パフォーマンス,脊髄反射経路の興奮性に与える影響について検討した。
【方法】
対象は健常人男性ボランティア14名。介入は1時間の安静臥床及び仰臥位で電動サイクルマシンを用いた60rpmのpassive cyclingをそれぞれ別日に実施した。
RTの測定はランダムな間隔(3-10秒)で呈示される音刺激後,素早く右足関節底屈運動を実施し,音刺激から右ヒラメ筋の筋電図出現までの時間を計測した。
H波は右脛骨神経を0.2Hzで電気刺激し,右ヒラメ筋より導出した。刺激強度を徐々に上げ,リクルートメントカーブを描き,M波の最大振幅値(M max)に対するH波の最大振幅値(H max)の比(H/M max)を算出し,各課題間及び介入前後でのH/M maxを比較検討した。RTはFriedman検定を,H/M maxは介入前後×安静臥床・passive cycling間について2×2の繰り返しのある二元配置分散分析および事後検定としてボンフェローニの方法を用いて検証した。全ての検定における有意水準は5%未満とした。
【結果】
RTは安静臥床前160.6±6.9ms(平均値±標準誤差),安静臥床後161.2±7.4ms,passive cycling前152.5±6.2ms,passive cycling後156.0±8.7msで,安静臥床,passive cycling共に介入前後で有意差を認めなかった(p=0.543)。
H/M maxは安静臥床前54.36±3.67%,安静臥床後47.11±4.06%,passive cycling前55.38±4.20,passive cycling後53.41±4.15で,H/M maxは安静臥床により低下したが,passive cycling後では変化しなかった。統計解析の結果,課題前後にのみ有意な主効果(F=15.84,p=0.002)を認めた。ボンフェローニの方法を用いた事後検定において,安静臥床前後及び安静臥床後×passive cycling後間に有意差を認めた(p=0.005,p=0.025)。
【結論】
本研究により,passive cyclingによる介入は運動パフォーマンスを即時的に改善するには至らなかったが,短時間安静による脊髄反射経路の興奮性低下を抑制できることが示唆された。この変化は,passive cyclingによる運動感覚情報の入力が安静による末梢からの感覚入力の減少を抑制及び上位中枢から脊髄運動ニューロンへの入力の減少を抑制したことにより生じた可能性が考えられた。Passive cyclingによる介入により,加齢性の脊髄反射経路の興奮性低下を予防することができる可能性が考えられた。
近年,低体力者に対するモーター付電動自転車を用いたpassive cyclingによる介入効果が幾つか報告されている。しかし,ヒトにおけるpassive cyclingによる機能改善メカニズムの詳細は未だ不明である。一方で短時間の安静臥床により脊髄反射経路の興奮性が低下するとの報告があり,passive cyclingにより脊髄反射経路の興奮性を維持,あるいは向上できれば,passive cyclingの効果を解明する一助と成り得る。そこで,本研究では安静臥床条件と臥位でのpassive cycling介入前後のreaction time(RT)およびH反射を比較し,パフォーマンス,脊髄反射経路の興奮性に与える影響について検討した。
【方法】
対象は健常人男性ボランティア14名。介入は1時間の安静臥床及び仰臥位で電動サイクルマシンを用いた60rpmのpassive cyclingをそれぞれ別日に実施した。
RTの測定はランダムな間隔(3-10秒)で呈示される音刺激後,素早く右足関節底屈運動を実施し,音刺激から右ヒラメ筋の筋電図出現までの時間を計測した。
H波は右脛骨神経を0.2Hzで電気刺激し,右ヒラメ筋より導出した。刺激強度を徐々に上げ,リクルートメントカーブを描き,M波の最大振幅値(M max)に対するH波の最大振幅値(H max)の比(H/M max)を算出し,各課題間及び介入前後でのH/M maxを比較検討した。RTはFriedman検定を,H/M maxは介入前後×安静臥床・passive cycling間について2×2の繰り返しのある二元配置分散分析および事後検定としてボンフェローニの方法を用いて検証した。全ての検定における有意水準は5%未満とした。
【結果】
RTは安静臥床前160.6±6.9ms(平均値±標準誤差),安静臥床後161.2±7.4ms,passive cycling前152.5±6.2ms,passive cycling後156.0±8.7msで,安静臥床,passive cycling共に介入前後で有意差を認めなかった(p=0.543)。
H/M maxは安静臥床前54.36±3.67%,安静臥床後47.11±4.06%,passive cycling前55.38±4.20,passive cycling後53.41±4.15で,H/M maxは安静臥床により低下したが,passive cycling後では変化しなかった。統計解析の結果,課題前後にのみ有意な主効果(F=15.84,p=0.002)を認めた。ボンフェローニの方法を用いた事後検定において,安静臥床前後及び安静臥床後×passive cycling後間に有意差を認めた(p=0.005,p=0.025)。
【結論】
本研究により,passive cyclingによる介入は運動パフォーマンスを即時的に改善するには至らなかったが,短時間安静による脊髄反射経路の興奮性低下を抑制できることが示唆された。この変化は,passive cyclingによる運動感覚情報の入力が安静による末梢からの感覚入力の減少を抑制及び上位中枢から脊髄運動ニューロンへの入力の減少を抑制したことにより生じた可能性が考えられた。Passive cyclingによる介入により,加齢性の脊髄反射経路の興奮性低下を予防することができる可能性が考えられた。