[O-KS-08-6] 姿勢の正中位指向に有効な視覚的指標の検討
Keywords:姿勢, 正中位指向, 視覚的指標
【はじめに,目的】姿勢制御において,視覚的に垂直を定位することは,自己身体を外界に位置づける基礎的能力として重要である。Pusher患者に対して,棒を用いた垂直指標による視覚的手がかりの有効性が示唆されている。しかし,垂直棒の本数や配置のどのような組み合わせが姿勢を正中位に修正しやすいかについてアライメントを定量的に調べた研究は見当たらない。そこで本研究の目的は,姿勢の正中位指向を促すために有効な,垂直棒を用いた視覚的指標を明らかにすること,視覚的指標と体性感覚との関係性を検討することである。
【方法】健常成人30名(男性10名,女性20名)を対象とし,非利き手側への体幹側屈25°から5秒間で正中位に姿勢を変換する課題を行った。座面は水平,一側殿部をくりぬいたマット,および10°傾斜とし,指標は被験者から2m前方に配置し,垂直棒なし,1本,2本直列,2本並列,3本並列,3本奥行きとした。測定項目は,姿勢修正後のアライメント,修正中の重心動揺とし,姿勢変換のやりやすさを数値的評価スケール(NRS)で調査した。アライメント評価の基準線として,上後腸骨棘の中点と床を結ぶ垂直線を正中線とし,頭頂と第7頸椎棘突起を結ぶ線,両肩峰を結ぶ線,両上後腸骨棘を結ぶ線との角度を算出した。重心動揺は姿勢修正中の5秒間のX・Y軌跡長を測定し,修正5秒間に移動した変化量を算出した。各座面と指標の組み合わせごとのパラメータを比較するためKruskal-Wallis検定を用いた。姿勢変換のやりやすさの比較はχ2独立性検定を用いた。統計ソフトはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。
【結果】水平座面での頭部アライメントは指標なしと比べ,2本並列を除く全指標で有意に角度が減少した(p<0.05)。マット座面では1本,2本直列,3本奥行きで有意に角度が減少した(p<0.01)。傾斜座面では2本直列のみで有意に角度が減少した(p<0.05)。骨盤アライメントは水平座面では3本奥行き,傾斜座面では1本,2本直列で有意に角度が減少したが(p<0.05),マット座面では角度に有意な差はみられなかった。左右の動揺を表すX軌跡長は,水平座面の2本直列で有意に大きくなった(p<0.05)。NRSでは2本直列はやりやすく,2本並列はやりにくい傾向であった。
【結論】指標を提示することによって,姿勢の正中位指向が促された。頭部アライメントは重心動揺に影響し,頚部側屈位で自覚的視性垂直位が変化すると言われていることから,頭部アライメント調整は正中位の認識に影響している。そこで頭部アライメントが最も正中位に近づいた2本直列,3本奥行きを用いた視覚的手がかりが,正中位指向を促すには有効であると考えられた。重心動揺の結果から,2本を直列に並べた指標は,左右の対称的調整に有効であり,他の指標に比べ視覚と体性感覚に基づく知覚が共同して働きやすい指標と考えられた。
【方法】健常成人30名(男性10名,女性20名)を対象とし,非利き手側への体幹側屈25°から5秒間で正中位に姿勢を変換する課題を行った。座面は水平,一側殿部をくりぬいたマット,および10°傾斜とし,指標は被験者から2m前方に配置し,垂直棒なし,1本,2本直列,2本並列,3本並列,3本奥行きとした。測定項目は,姿勢修正後のアライメント,修正中の重心動揺とし,姿勢変換のやりやすさを数値的評価スケール(NRS)で調査した。アライメント評価の基準線として,上後腸骨棘の中点と床を結ぶ垂直線を正中線とし,頭頂と第7頸椎棘突起を結ぶ線,両肩峰を結ぶ線,両上後腸骨棘を結ぶ線との角度を算出した。重心動揺は姿勢修正中の5秒間のX・Y軌跡長を測定し,修正5秒間に移動した変化量を算出した。各座面と指標の組み合わせごとのパラメータを比較するためKruskal-Wallis検定を用いた。姿勢変換のやりやすさの比較はχ2独立性検定を用いた。統計ソフトはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。
【結果】水平座面での頭部アライメントは指標なしと比べ,2本並列を除く全指標で有意に角度が減少した(p<0.05)。マット座面では1本,2本直列,3本奥行きで有意に角度が減少した(p<0.01)。傾斜座面では2本直列のみで有意に角度が減少した(p<0.05)。骨盤アライメントは水平座面では3本奥行き,傾斜座面では1本,2本直列で有意に角度が減少したが(p<0.05),マット座面では角度に有意な差はみられなかった。左右の動揺を表すX軌跡長は,水平座面の2本直列で有意に大きくなった(p<0.05)。NRSでは2本直列はやりやすく,2本並列はやりにくい傾向であった。
【結論】指標を提示することによって,姿勢の正中位指向が促された。頭部アライメントは重心動揺に影響し,頚部側屈位で自覚的視性垂直位が変化すると言われていることから,頭部アライメント調整は正中位の認識に影響している。そこで頭部アライメントが最も正中位に近づいた2本直列,3本奥行きを用いた視覚的手がかりが,正中位指向を促すには有効であると考えられた。重心動揺の結果から,2本を直列に並べた指標は,左右の対称的調整に有効であり,他の指標に比べ視覚と体性感覚に基づく知覚が共同して働きやすい指標と考えられた。