第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)09

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:大森圭貢(聖マリアンナ医科大学 整形外科学講座)

[O-KS-09-4] 漸増起立負荷による中高年者の簡易的運動耐容能測定法の併存妥当性

中村慶佑1,2, 大平雅美3, 横川吉晴3, 長澤祐哉1, 澤木章二1 (1.松本市立病院, 2.信州大学大学院医学系研究科博士後期課程保健学専攻, 3.信州大学医学部保健学科理学療法学専攻)

Keywords:中高年者, 最高酸素摂取量, 起立動作

【はじめに,目的】自転車エルゴメーター(以下,CE)やトレッドミルを用いた心肺運動負荷試験が運動耐容能測定法のゴールドスタンダードとされているが,それらは高価な機械と熟練を要し,高齢者や運動障害を有する者には実施が困難な場合が少なくない。日常動作である起立動作は起立頻度を変えることで比較的簡単に運動負荷強度を調整できる。我々は,先行研究において起立頻度の増加に伴い酸素摂取量が直線的に増加することを確認し,漸増起立運動負荷試験(以下,ISTS)のプロトコールを作成した。さらに,ISTSは若年健常者のAT測定に応用できる可能性が高いことを確認した。そこで本研究では,高齢者への将来的な応用を視野に入れ,中高年健常者を対象に,ISTSの運動耐容能測定法としての併存妥当性を検証することを目的とした。


【方法】心血管系および整形外科的疾患の既往がない40-60代の健常者13名(男性6名,女性7名)を対象とした(平均年齢55.0±4.0歳)。ISTSとCEの施行順はランダム化し,別日に実施した。反復起立運動は,座面を腓骨頭上縁までの高さとし,上肢でストックを使用しながら実施した。ISTSは,6回/分の起立頻度から始まり,45秒毎に2回/分ずつ漸増し,最大12分で終了するプロトコールとし,起立頻度はメトロノームの発信音で調整した。CEのプロトコールは10-15W/分のramp負荷を用いて最大12分で終了とした(最大負荷量は120-180W)。酸素摂取量(breath by breath法;ml/min/kg),心拍数,心電図は連続的に記録し,血圧,自覚的運動強度と下肢疲労感のボルグスケールは運動負荷直後に測定した。一般的な運動負荷試験の中止基準に該当,あるいは起立動作がメトロノームの発信音から3動作遅れた場合はその時点で運動負荷を終了し,そこまで要した時間をISTSの運動実施時間とした。最高酸素摂取量(以下,peak VO2)は運動負荷終了前30秒間の平均値とした。両方法のpeak VO2,運動実施時間の関係はPearson積率相関係数,平均値の差は対応のあるt検定を用いて確認した。


【結果】ISTSは3名が12分間完遂し,10名が途中で起立動作の発信音に追従できなくなり終了した。ISTSとCEのpeak VO2(ml/min/kg),ISTSの運動実施時間(秒)の平均値±標準偏差は各々23.4±2.5,25.7±3.4,633.4±78.4であった。ISTSとCEのpeak VO2,ISTSの運動実施時間とpeak VO2,ISTSの運動実施時間とCEのpeak VO2の相関係数は各々r=0.87,0.95,0.86で有意な相関がみられた。また,ISTSの運動実施時間(x)とpeak VO2(Y)からY=0.03x+4.5という一次回帰直線式が求められた(p<0.05)。peak VO2はISTSの方がCEより9%有意に低かった(p<0.05)。


【結論】ISTSとCEのpeak VO2と強い相関が認められ,ISTSは中高年者を対象としたpeak VO2測定の運動負荷方法として併存妥当性が高いと考えられる。また,中高年者ではISTSの運動実施時間からpeak VO2を推定できる可能性が示唆された。