[O-KS-09-6] 非麻痺側上肢運動は脳卒中片麻痺患者の全身持久力評価として有効か?
Keywords:最高酸素摂取量, 呼気ガス分析, エルゴメータ
【はじめに,目的】
これまで,脳卒中患者の全身持久力評価として行われてきた下肢による運動負荷試験(CPX)は,下肢の運動麻痺が最高酸素摂取量(Peak VO2)の測定に影響すると報告されている(Tang, et al., 2006)。全身持久力低下に対する理学療法の効果を精確に捉えるためには,運動麻痺の影響を受けない評価手法の確立が必要である。これに対し,運動麻痺の影響を受けにくい全身持久力評価手法として,非麻痺側上肢でのエルゴメータ運動によるCPXが提案されているが,運動麻痺が評価に及ぼす影響は十分に検討されていない(原,1996)。そこで本研究の目的は,非麻痺側上肢運動によるCPXが,従来の下肢運動に比べ脳卒中片麻痺患者の全身持久力評価手法として有効かを検証することである。
【方法】
対象は,2014年11月から2015年7月までに当院回復期病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者27名(男性20名,年齢62±12歳,体格指数21.2±11.8 kg/m2,発症後80±38日;平均±標準偏差)であった。採用基準は,端座位保持が自立しており,認知症や高次脳機能障害が無く研究参加の同意が得られる者とした。除外基準は,内科的疾患により運動制限されている,運動課題の遂行を制限する関節拘縮や疼痛がある,神経疾患の既往がある者とした。
CPXにおける運動課題は,エルゴメータを用いた非麻痺側上肢運動および下肢運動の2課題とし,全ての対象者が1週間以内に1回ずつ実施した。運動負荷強度は,10 Wで開始し,上肢課題では5 W,下肢課題では10 Wずつ1分ごとに漸増した。エルゴメータの回転速度は,両運動課題ともに10 Wでの至適速度を維持するよう指示した。運動終了基準は,心拍数が予測最大心拍数の85%に到達,回転速度の維持が困難,血圧異常,心電図異常とした。運動中のVO2と心拍数は同時に記録し,Peak VO2および最高心拍数を解析に用いた。Peak VO2は,年齢と性別の影響を補正するため,過去の最大運動負荷試験で得られた参考値(Loe, et al., 2013)で正規化した。最高心拍数は,予測最大心拍数に対する割合を算出した。下肢運動麻痺は,Brunnstrom stageで評価した。
統計解析では,Peak VO2および最高心拍数について,下肢運動麻痺との関係をSpearman順位相関係数で検定した。有意水準は5%とした。
【結果】
Peak VO2は,上肢課題が28.8±6.3%,下肢課題が37.4±10.8%であった。最高心拍数は,上肢課題が75.0±10.7%,下肢課題が73.3±12.2%であった。下肢運動麻痺は,stage Iが1名,IIが1名,IIIが6名,IVが5名,Vが9名,VIが5名であった。Peak VO2と下肢運動麻痺の相関係数は,上肢課題が0.44(p=0.02),下肢課題が0.76(p<0.01)であった。最高心拍数と下肢運動麻痺の相関係数は,上肢課題が0.28(p=0.15),下肢課題が0.57(p<0.01)であった。
【結論】
非麻痺側上肢運動によるCPXは,従来の下肢運動に比べ運動麻痺の影響を受けにくく,脳卒中片麻痺患者の全身持久力評価手法として有効であることが示された。
これまで,脳卒中患者の全身持久力評価として行われてきた下肢による運動負荷試験(CPX)は,下肢の運動麻痺が最高酸素摂取量(Peak VO2)の測定に影響すると報告されている(Tang, et al., 2006)。全身持久力低下に対する理学療法の効果を精確に捉えるためには,運動麻痺の影響を受けない評価手法の確立が必要である。これに対し,運動麻痺の影響を受けにくい全身持久力評価手法として,非麻痺側上肢でのエルゴメータ運動によるCPXが提案されているが,運動麻痺が評価に及ぼす影響は十分に検討されていない(原,1996)。そこで本研究の目的は,非麻痺側上肢運動によるCPXが,従来の下肢運動に比べ脳卒中片麻痺患者の全身持久力評価手法として有効かを検証することである。
【方法】
対象は,2014年11月から2015年7月までに当院回復期病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者27名(男性20名,年齢62±12歳,体格指数21.2±11.8 kg/m2,発症後80±38日;平均±標準偏差)であった。採用基準は,端座位保持が自立しており,認知症や高次脳機能障害が無く研究参加の同意が得られる者とした。除外基準は,内科的疾患により運動制限されている,運動課題の遂行を制限する関節拘縮や疼痛がある,神経疾患の既往がある者とした。
CPXにおける運動課題は,エルゴメータを用いた非麻痺側上肢運動および下肢運動の2課題とし,全ての対象者が1週間以内に1回ずつ実施した。運動負荷強度は,10 Wで開始し,上肢課題では5 W,下肢課題では10 Wずつ1分ごとに漸増した。エルゴメータの回転速度は,両運動課題ともに10 Wでの至適速度を維持するよう指示した。運動終了基準は,心拍数が予測最大心拍数の85%に到達,回転速度の維持が困難,血圧異常,心電図異常とした。運動中のVO2と心拍数は同時に記録し,Peak VO2および最高心拍数を解析に用いた。Peak VO2は,年齢と性別の影響を補正するため,過去の最大運動負荷試験で得られた参考値(Loe, et al., 2013)で正規化した。最高心拍数は,予測最大心拍数に対する割合を算出した。下肢運動麻痺は,Brunnstrom stageで評価した。
統計解析では,Peak VO2および最高心拍数について,下肢運動麻痺との関係をSpearman順位相関係数で検定した。有意水準は5%とした。
【結果】
Peak VO2は,上肢課題が28.8±6.3%,下肢課題が37.4±10.8%であった。最高心拍数は,上肢課題が75.0±10.7%,下肢課題が73.3±12.2%であった。下肢運動麻痺は,stage Iが1名,IIが1名,IIIが6名,IVが5名,Vが9名,VIが5名であった。Peak VO2と下肢運動麻痺の相関係数は,上肢課題が0.44(p=0.02),下肢課題が0.76(p<0.01)であった。最高心拍数と下肢運動麻痺の相関係数は,上肢課題が0.28(p=0.15),下肢課題が0.57(p<0.01)であった。
【結論】
非麻痺側上肢運動によるCPXは,従来の下肢運動に比べ運動麻痺の影響を受けにくく,脳卒中片麻痺患者の全身持久力評価手法として有効であることが示された。