[O-KS-10-2] 股関節肢位が足関節背屈ストレッチング効果に及ぼす影響
キーワード:スタティックストレッチング, 受動的トルク, 柔軟性
【はじめに,目的】
足関節背屈のスタティックストレッチング(SS)効果に関する研究は数多く報告されている。近年,股関節30°屈曲位よりも90°屈曲位の方が足関節の背屈可動域が減少することが報告されている。股関節肢位によって足関節背屈角度が変化する原因については解明されていないが,股関節肢位の変化が足関節背屈SS介入効果に変化を及ぼす可能性が考えられる。しかし,一般的に行われる股関節90°屈曲位と軽度屈曲位での足関節背屈SS介入において,どちらが効果的に下腿三頭筋の柔軟性を増加させるかは明らかではない。そこで本研究は,股関節肢位が足関節背屈SS効果に及ぼす影響について検討した。
【方法】
対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性15名とした。SSの対象筋は利き脚側の腓腹筋とし,股関節90°屈曲位(90°条件)もしくは30°屈曲位(30°条件)で膝関節完全伸展位にて足関節を等速性筋力測定装置(Biodex社製)のフットプレートに固定した。対象者が痛みを訴えることなく耐えうる最大の足関節背屈角度で30秒保持するSSを4回,計120秒間のSSを行った。SSの強度として,SS中の足関節背屈角度を測定した。なお,90°条件と30°条件は3日から7日間の間隔を開けて,無作為な順番で実施した。
SS介入前後に前述の等速性筋力測定装置を用いて,股関節70°屈曲,膝関節完全伸展位にて対象者が痛みを訴えることなく耐えうる最大の足背屈角度(ROM)および角速度5°/秒の速度で他動的に足関節20°背屈させた時の足関節底屈方向に生じるトルク(受動トルク)を計測した。なお,受動トルクは筋腱複合体全体の柔軟性を反映しており,値が小さくなるほど柔軟性が増加したことを意味する。
統計処理は,股関節肢位(90°条件と30°条件)と時期(介入前後)を二要因とする反復測定二元配置分散分析を行った。各条件におけるSS介入前後の変化および変化率の比較は,それぞれ対応のあるt検定およびWilcoxon検定を用いて行った。
【結果】
SS中の背屈角度は30°条件のほうが90°条件よりも有意に大きく,30°条件のほうがSS強度は強いことが示された。二元配置分散分析の結果,ROMは時期のみに主効果を認め,交互作用は認められなかった。事後検定の結果,90°条件と30°条件はともにSS介入後にROMは有意に増加した。また,受動トルクは時期の主効果および交互作用が認められた。事後検定の結果,90°条件と30°条件はともにSS介入後に有意に低値を示したが,SS介入後の受動トルク減少率は,30°条件のほうが90°条件よりも有意に高値を示した。
【結論】
足関節背屈SSを行う際,股関節屈曲角度を大きくした肢位で実施すると下腿三頭筋の柔軟性改善効果が減少することが示唆された。
足関節背屈のスタティックストレッチング(SS)効果に関する研究は数多く報告されている。近年,股関節30°屈曲位よりも90°屈曲位の方が足関節の背屈可動域が減少することが報告されている。股関節肢位によって足関節背屈角度が変化する原因については解明されていないが,股関節肢位の変化が足関節背屈SS介入効果に変化を及ぼす可能性が考えられる。しかし,一般的に行われる股関節90°屈曲位と軽度屈曲位での足関節背屈SS介入において,どちらが効果的に下腿三頭筋の柔軟性を増加させるかは明らかではない。そこで本研究は,股関節肢位が足関節背屈SS効果に及ぼす影響について検討した。
【方法】
対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性15名とした。SSの対象筋は利き脚側の腓腹筋とし,股関節90°屈曲位(90°条件)もしくは30°屈曲位(30°条件)で膝関節完全伸展位にて足関節を等速性筋力測定装置(Biodex社製)のフットプレートに固定した。対象者が痛みを訴えることなく耐えうる最大の足関節背屈角度で30秒保持するSSを4回,計120秒間のSSを行った。SSの強度として,SS中の足関節背屈角度を測定した。なお,90°条件と30°条件は3日から7日間の間隔を開けて,無作為な順番で実施した。
SS介入前後に前述の等速性筋力測定装置を用いて,股関節70°屈曲,膝関節完全伸展位にて対象者が痛みを訴えることなく耐えうる最大の足背屈角度(ROM)および角速度5°/秒の速度で他動的に足関節20°背屈させた時の足関節底屈方向に生じるトルク(受動トルク)を計測した。なお,受動トルクは筋腱複合体全体の柔軟性を反映しており,値が小さくなるほど柔軟性が増加したことを意味する。
統計処理は,股関節肢位(90°条件と30°条件)と時期(介入前後)を二要因とする反復測定二元配置分散分析を行った。各条件におけるSS介入前後の変化および変化率の比較は,それぞれ対応のあるt検定およびWilcoxon検定を用いて行った。
【結果】
SS中の背屈角度は30°条件のほうが90°条件よりも有意に大きく,30°条件のほうがSS強度は強いことが示された。二元配置分散分析の結果,ROMは時期のみに主効果を認め,交互作用は認められなかった。事後検定の結果,90°条件と30°条件はともにSS介入後にROMは有意に増加した。また,受動トルクは時期の主効果および交互作用が認められた。事後検定の結果,90°条件と30°条件はともにSS介入後に有意に低値を示したが,SS介入後の受動トルク減少率は,30°条件のほうが90°条件よりも有意に高値を示した。
【結論】
足関節背屈SSを行う際,股関節屈曲角度を大きくした肢位で実施すると下腿三頭筋の柔軟性改善効果が減少することが示唆された。