第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)10

2016年5月28日(土) 13:40 〜 14:40 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:松原貴子(日本福祉大学 健康科学部)

[O-KS-10-3] 超音波画像診断装置を用いた第1中足骨骨頭下内側種子骨と荷重面との距離測定の検者内信頼性の検討

瀧原純, 村野勇, 蛯原文吾, 橋本貴幸 (総合病院土浦協同病院リハビリテーション部)

キーワード:超音波画像診断装置, 種子骨, 信頼性

【はじめに,目的】

糖尿病足病変の病因の一つである運動神経障害が生じると足部内在筋に麻痺が生じ,足趾変形を招くことが報告されている。これまでの研究では足部の変形を有する神経障害を合併した糖尿病患者の第1中足骨骨頭部の脂肪層が菲薄化することが磁気共鳴画像法で明らかになっている。第50回日本理学療法学術大会において超音波画像診断装置(以下エコー)を用いて荷重時の第1中足骨骨頭下部の状態を観察し,種子骨が荷重面と常に接地することで荷重負荷を分散させる機構が働くことを報告した。今回の本研究の目的は,第1中足骨骨頭下内側種子骨と荷重面との距離の測定方法の検者内信頼性を検討することとした。

【方法】

対象は整形外科的既往のない健常成人29名29肢(男14名女15名)で,平均年齢(範囲)30.8(22-64)歳,身長と体重の平均値(標準偏差)は身長164(9.5)cm,体重57(11.1)kgであった。方法は市販のアクリル板の中央部を縦56mm横27mmの範囲で切り抜き,エコー(日立MyLabFive)のリニア型プローブ(18MHz)が下部から挿入できるように加工した。切り抜いた部分にプローブを挿入し,アクリル板の表面と同じ高さで徒手的に固定した。その上部に左側第1中足骨骨頭下部の内側種子骨が合うように被検者を立たせた。全足底接地での片脚立位となる歩行時の立脚中期と中足趾節関節が最大伸展位となる前遊脚期を想定した肢位における状態を観察した。立脚中期を想定した肢位は第1中足趾節関節(以下MTP)伸展10度で,片脚立位(以下肢位1)とした。前遊脚期を想定した肢位は第1MTP関節伸展40度で,反対側下肢は踵接地で1/3部分荷重とした(以下肢位2)。被験者には各肢位とも左手で支持物を軽く支持させた。その後,エコーの静止画像を描出し,荷重面から種子骨の接触部までの最短距離を計測した。計測は全て同一検者が行い,1回目のテストから1日以上の間隔をおいて再テストを実施した。1回の計測につき各肢位で3回計測を行い,その平均値を代表値とした。統計解析はSPSS.ver21を使用し,級内相関係数(以下ICC)を用い,検者内信頼性(ICC(1,1))を算出した。また,MedCalc Ver11.6を使用し,Bland-Altman分析を行い,系統誤差の有無を確認した。系統誤差がない場合,最小可検変化量(以下,MDC)の95%信頼区域であるMDC95を算出した。

【結果】

ICC(1,1)は肢位1で0.89,肢位2で0.93であった。Bland-Altman分析の結果,どちらも系統誤差を認めなかった。MDC95の結果,肢位1で0.84mm,肢位2で0.95mmであった。

【結論】

ICCは両肢位で0.8以上の数値であり,判断基準で「良好」という結果となった。今回行った軟部組織厚の測定方法は計測の練習をした同一検者であれば信頼性のある評価方法であることが明らかになった。また,系統誤差は存在しないため,MDC95の結果を用いることで,臨床上有効な変化が生じているかを判断することが可能となった。今後は検者間の信頼性の検討が必要である。