[O-KS-10-4] 位置覚検査の運動様式による再現性の違い~膝関節伸展角度による比較~
Keywords:位置覚, 運動様式, 再現
【はじめに,目的】
位置覚は,筋,腱,靭帯,関節包,皮膚など様々な固有感覚受容器から情報を得ている。これらの受容器から得られる情報量は,関節角度の違いによって伸長または張力などが加わることで増減すると予想される。筋の収縮によって得られる固有感覚情報に位置覚が依存していることを示唆する文献が多く報告されているが,関節角度の違いによる位置覚の変化を報告しているものは少ない。また,日常生活では膝関節伸展位での活動も多いが,膝関節位置覚に関する研究では屈曲位での測定が多いため,より伸展位での膝関節位置覚を評価することは重要である。そこで本研究の目的は,膝関節伸展位の角度変化による膝関節位置覚の違いを明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人とし男性10名,女性10名,計20名(平均年齢21歳)とした。位置覚検査部位は左膝関節とし,端座位で設定角度まで膝関節伸展運動を行い,5秒間保持し記憶させた後,同側で再現する方法とした。膝関節の運動様式は,随意運動で膝関節を伸展し棒に接触させるものを自動運動,検者が他動的に下腿を引き上げるものを他動運動とし,設定時と再現時の膝伸展角度の誤差角度を測定した。他動運動時は,筋収縮が起こらないように確認した。運動様式2条件(自動運動,他動運動)と設定角度の4条件(膝屈曲0°,10°,20°,30°)を組み合わせた8パターン(自動0°,自動10°,自動20°,自動30°,他動0°,他動10°,他動20°,他動30°)を各3回,ランダムに実施した。膝関節角度の測定方法は,大転子,大腿骨外側上顆,外果のランドマークをビデオカメラで側方から撮影し,画像解析ソフトにて測定した。誤差角度は設定時と再現時の膝関節角度の誤差の絶対値の平均値とした。対象者には,アイマスクを着用させ視覚情報を制限した。統計学的検定は,2要因に対応のある2元配置分散分析を用いて検定を行った。危険率は5%未満とした。
【結果】
各8パターンの誤差角度は,自動0°:1.9°±1.1°(平均値±SD,以下同様),自動10°:2.6°±1.7°,自動20°:2.5°±2.5°,自動30°:3.2°±1.5°,他動0°:2.4°±2.5°,他動10°:3.2°±2.1°,他動20°:4.3°±2.7°,他動30°:4.7°±2.9°であった。各設定角度で自動運動と他動運動間の誤差角度に有意差が認められ(p=0.015),設定角度の記憶を他動運動によって行った場合は誤差角度が大きい傾向にあった。また,設定角度間での誤差角度にも有意差が認められ(p=0.003),0°と20°間(p=0.023),30°間(p=0.022),10°と30°間(p=0.027)に有意差が認められ,いずれもより伸展位は誤差が小さい傾向にあった。設定角度と運動様式の2要因間に交互作用は認められなかった。
【結論】
膝関節伸展位では運動様式のみならず,伸展角度によって位置覚が変化する可能性が示唆された。軟部組織の伸張による感覚刺激や膝関節伸展筋の活動張力の違いが関係していると予想され,位置覚検査の解釈の一助となる可能性がある。
位置覚は,筋,腱,靭帯,関節包,皮膚など様々な固有感覚受容器から情報を得ている。これらの受容器から得られる情報量は,関節角度の違いによって伸長または張力などが加わることで増減すると予想される。筋の収縮によって得られる固有感覚情報に位置覚が依存していることを示唆する文献が多く報告されているが,関節角度の違いによる位置覚の変化を報告しているものは少ない。また,日常生活では膝関節伸展位での活動も多いが,膝関節位置覚に関する研究では屈曲位での測定が多いため,より伸展位での膝関節位置覚を評価することは重要である。そこで本研究の目的は,膝関節伸展位の角度変化による膝関節位置覚の違いを明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人とし男性10名,女性10名,計20名(平均年齢21歳)とした。位置覚検査部位は左膝関節とし,端座位で設定角度まで膝関節伸展運動を行い,5秒間保持し記憶させた後,同側で再現する方法とした。膝関節の運動様式は,随意運動で膝関節を伸展し棒に接触させるものを自動運動,検者が他動的に下腿を引き上げるものを他動運動とし,設定時と再現時の膝伸展角度の誤差角度を測定した。他動運動時は,筋収縮が起こらないように確認した。運動様式2条件(自動運動,他動運動)と設定角度の4条件(膝屈曲0°,10°,20°,30°)を組み合わせた8パターン(自動0°,自動10°,自動20°,自動30°,他動0°,他動10°,他動20°,他動30°)を各3回,ランダムに実施した。膝関節角度の測定方法は,大転子,大腿骨外側上顆,外果のランドマークをビデオカメラで側方から撮影し,画像解析ソフトにて測定した。誤差角度は設定時と再現時の膝関節角度の誤差の絶対値の平均値とした。対象者には,アイマスクを着用させ視覚情報を制限した。統計学的検定は,2要因に対応のある2元配置分散分析を用いて検定を行った。危険率は5%未満とした。
【結果】
各8パターンの誤差角度は,自動0°:1.9°±1.1°(平均値±SD,以下同様),自動10°:2.6°±1.7°,自動20°:2.5°±2.5°,自動30°:3.2°±1.5°,他動0°:2.4°±2.5°,他動10°:3.2°±2.1°,他動20°:4.3°±2.7°,他動30°:4.7°±2.9°であった。各設定角度で自動運動と他動運動間の誤差角度に有意差が認められ(p=0.015),設定角度の記憶を他動運動によって行った場合は誤差角度が大きい傾向にあった。また,設定角度間での誤差角度にも有意差が認められ(p=0.003),0°と20°間(p=0.023),30°間(p=0.022),10°と30°間(p=0.027)に有意差が認められ,いずれもより伸展位は誤差が小さい傾向にあった。設定角度と運動様式の2要因間に交互作用は認められなかった。
【結論】
膝関節伸展位では運動様式のみならず,伸展角度によって位置覚が変化する可能性が示唆された。軟部組織の伸張による感覚刺激や膝関節伸展筋の活動張力の違いが関係していると予想され,位置覚検査の解釈の一助となる可能性がある。