第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)11

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:坂本美喜(北里大学 医療衛生学部 理学療法学専攻)

[O-KS-11-5] 微弱電流刺激が筋再成長に伴う細胞膜タンパク質の変化に及ぼす影響

大野善隆1, 後藤勝正1,2 (1.豊橋創造大学, 2.豊橋創造大学大学院)

Keywords:骨格筋, 細胞膜, 電気刺激

【はじめに,目的】微弱電流刺激は萎縮筋の再成長ならびに損傷筋の再生を促進させる。微弱電流刺激による骨格筋増量にはAkt系の関与が示唆されているが,その分子機構には未解明な部分が多く残されている。一方,筋細胞膜タンパク質であるcaveolin-3とtripartite motif-containing 72(TRIM72)は細胞膜の修復に関与し,両タンパク質の欠損は損傷筋の再生を抑制すること,萎縮筋の再生長の際に発現が増加することが報告されている。また,caveolin-3とTRIM72の発現増加はAkt系の活性化により引き起こされることも報告されている。しかしながら,微弱電流刺激がcaveolin-3とTRIM72の発現に及ぼす影響は不明である。そこで本研究では,微弱電流刺激によるcaveolin-3およびTRIM72の応答について検討した。


【方法】本実験は,培養細胞実験ならびに動物実験の2つの実験系により構成された。培養細胞実験では,マウス筋芽細胞由来C2C12を筋管細胞に分化させた後,Trio300((株)伊藤超短波)を使用して微弱電流刺激(10μA,60分)を負荷し,刺激後経時的に細胞を回収した。動物実験ではC57BL/6J雄性マウスを用い,対照群と微弱電流刺激群の2群に分類した。2週間の後肢懸垂によりマウスヒラメ筋の萎縮を惹起させた後,通常飼育に戻し再荷重による筋再成長を促した。微弱電流刺激群のマウスには再荷重期間に麻酔下にて微弱電流刺激を負荷し,その後ヒラメ筋を採取した。筋管細胞およびマウスヒラメ筋におけるタンパク質量をBradford法により測定すると共に,ウェスタンブロット法によりcaveolin-3およびTRIM72の発現量とAktリン酸化レベルを評価した。実験で得られた値の比較には,一元配置分散分析または二元配置分散分析および多重比較検定を用いた。


【結果】培養細胞実験において,微弱電流刺激によるcaveolin-3およびTRIM72発現の増加が認められた。この増加に先行してAktのリン酸化レベルの増加が認められた。また動物実験において,マウスヒラメ筋のタンパク質量は微弱電流刺激により増加した。さらに,微弱電流刺激群のcaveolin-3およびTRIM72の発現は,再荷重早期に対照群に比べて高値を示した。


【結論】微弱電流刺激による萎縮筋の再成長作用には,Akt活性化を介した筋細胞膜タンパク質caveolin-3およびTRIM72の発現増加が関与していることが示唆された。本研究の一部は日本学術振興会科学研究費(基盤C,25350641,26350818;挑戦的萌芽,26560372)ならびに上原記念生命科学財団「研究助成」,内藤記念科学振興財団「内藤記念科学奨励金・研究助成」,豊橋創造大学大学院健康科学研究科「先端研究」の助成を受けて実施された。