[O-KS-12-6] 中年期ラットACL損傷モデルにおける血小板由来増殖因子PDGF-A,Collagen typeI・III mRNAの発現動態
Keywords:膝前十字靭帯損傷, 血小板由来増殖因子, Collagen
【はじめに,目的】
我々は,膝前十字靭帯(以下ACL)完全損傷後に関節の異常運動を制動することでACLが自然治癒することを報告してきた。近年の健康志向の高まりにつれ,スポーツ行動者率は中年以降で上昇し,ACL損傷患者の年齢層も広がっている。ACL損傷治療は手術療法が標準治療であるが,中年以降のACL損傷患者においては様々な理由により保存療法は重要な選択肢となりうる。しかし,現状行われている保存療法の治療満足度は低いとされ,中年期ラットに対するACL治癒過程に関してもいまだ未解明である。本研究の目的は,中年期ラットACL損傷モデルにおける血小板由来増殖因子A(以下PDGF-A),Collagen typeIおよびtypeIIIの発現動態をmRNAレベルで明らかにし,中年期ラットのACL治癒への影響を検討することである。
【方法】
Wistar系雄性ラット(24週齢)20匹を10匹ずつ2群に分類した。それぞれ2,4週群とし,さらにACL切断群(以下ACL-T群),関節制動群(以下CAM群)に5匹ずつ振り分けた。ACL-T群とCAM群に対し右後肢のACLを外科的に切断した。続いてCAM群は,脛骨と大腿骨をナイロン糸で結んで固定し,大腿骨に対する脛骨の前方引き出しを制動した。ACL-T群の左後肢を対照肢(以下CTR群)として使用した。術後2,4週経過時点でACLを採取しtotal RNAを抽出した。その後,合成したcDNAをもとにPDGF-A,Collagen typeI・IIIのプライマーを使用しmRNA発現量をreal time PCR法(ΔΔCT法)により解析した。統計手法は一元配置分散分析,多重比較としてTukey法を用いた。
【結果】
CTR群を基準として発現量を比較した。PDGF-A mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約2.3倍,CAM群で約3.3倍であった(p<0.05)。4週経過時ではACL-T群で約1.4倍,CAM群で1.9倍であった。Collagen typeI mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約9.7倍(p<0.01),CAM群で約5.8倍であった(p<0.01)。4週経過時ではACL-T群で約0.6倍,CAM群で約1.6倍であった。Collagen typeIII mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約8.6倍(p<0.01),CAM群で約7.2倍であった(p<0.01)。4週経過時ではACL-T群で約2.2倍,CAM群で約3.9倍であった。
【結論】
中年期ラットACL損傷モデルにおける治癒靭帯のturnoverに関して,損傷後2週から4週がmRNAレベルの転換期となることを示唆する。我々の過去の研究で,若年期ラット(10週齢)では損傷後5日から14日が転換期となることを報告しており,中年期は若年期に比べ治癒靭帯のturnoverが遅延することを示す。また,ACL切断により2週経過時では,CAM群とACL-T群ともにCollagen typeI・IIIの発現量が増加している。しかし,各期におけるPDGF-Aの発現量は他の2群に比べCAM群で高く,4週経過時ではCollagen typeI・IIIの発現量はACL-T群に比べCAM群で高い。以上のことから,早期からの保護的な関節運動が損傷後ACL治癒の長期成績にPositiveな変化をもたらすことが示唆された。
我々は,膝前十字靭帯(以下ACL)完全損傷後に関節の異常運動を制動することでACLが自然治癒することを報告してきた。近年の健康志向の高まりにつれ,スポーツ行動者率は中年以降で上昇し,ACL損傷患者の年齢層も広がっている。ACL損傷治療は手術療法が標準治療であるが,中年以降のACL損傷患者においては様々な理由により保存療法は重要な選択肢となりうる。しかし,現状行われている保存療法の治療満足度は低いとされ,中年期ラットに対するACL治癒過程に関してもいまだ未解明である。本研究の目的は,中年期ラットACL損傷モデルにおける血小板由来増殖因子A(以下PDGF-A),Collagen typeIおよびtypeIIIの発現動態をmRNAレベルで明らかにし,中年期ラットのACL治癒への影響を検討することである。
【方法】
Wistar系雄性ラット(24週齢)20匹を10匹ずつ2群に分類した。それぞれ2,4週群とし,さらにACL切断群(以下ACL-T群),関節制動群(以下CAM群)に5匹ずつ振り分けた。ACL-T群とCAM群に対し右後肢のACLを外科的に切断した。続いてCAM群は,脛骨と大腿骨をナイロン糸で結んで固定し,大腿骨に対する脛骨の前方引き出しを制動した。ACL-T群の左後肢を対照肢(以下CTR群)として使用した。術後2,4週経過時点でACLを採取しtotal RNAを抽出した。その後,合成したcDNAをもとにPDGF-A,Collagen typeI・IIIのプライマーを使用しmRNA発現量をreal time PCR法(ΔΔCT法)により解析した。統計手法は一元配置分散分析,多重比較としてTukey法を用いた。
【結果】
CTR群を基準として発現量を比較した。PDGF-A mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約2.3倍,CAM群で約3.3倍であった(p<0.05)。4週経過時ではACL-T群で約1.4倍,CAM群で1.9倍であった。Collagen typeI mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約9.7倍(p<0.01),CAM群で約5.8倍であった(p<0.01)。4週経過時ではACL-T群で約0.6倍,CAM群で約1.6倍であった。Collagen typeIII mRNA発現量は,2週経過時にてACL-T群で約8.6倍(p<0.01),CAM群で約7.2倍であった(p<0.01)。4週経過時ではACL-T群で約2.2倍,CAM群で約3.9倍であった。
【結論】
中年期ラットACL損傷モデルにおける治癒靭帯のturnoverに関して,損傷後2週から4週がmRNAレベルの転換期となることを示唆する。我々の過去の研究で,若年期ラット(10週齢)では損傷後5日から14日が転換期となることを報告しており,中年期は若年期に比べ治癒靭帯のturnoverが遅延することを示す。また,ACL切断により2週経過時では,CAM群とACL-T群ともにCollagen typeI・IIIの発現量が増加している。しかし,各期におけるPDGF-Aの発現量は他の2群に比べCAM群で高く,4週経過時ではCollagen typeI・IIIの発現量はACL-T群に比べCAM群で高い。以上のことから,早期からの保護的な関節運動が損傷後ACL治癒の長期成績にPositiveな変化をもたらすことが示唆された。