[O-KS-13-1] シスプラチン誘発性腎症に対する温熱プレコンディショニングによるアポトーシス抑制効果
Keywords:低温サウナ(MTS), シスプラチン誘発性腎症, アポトーシス
【はじめに,目的】
シスプラチン(CDDP)は抗悪性腫瘍薬として広く臨床に用いられているが,腎障害の副作用のため高用量使用は規制されている。原因は十分に解明されていないが,酸化ストレスやアポトーシスの関与が示唆されている。我々はこれまで,深部体温を約1~2℃上昇させるマイルドな全身温熱刺激(MTS)がCDDP誘発性腎障害を軽減させることを報告してきた。今回,アポトーシスに対するMTSの効果を検討した。本研究はJSPS科研費70623510の助成を受けて実施された。
【方法】
C3H/He系統の雄性マウス(20~25kg,7週齢)37匹を使用した。無作為にvehicle群(Veh,n=7),CDDP投与群(nRT+Cis,n=10),生理食塩水を腹腔内投与後にMTS処置,その後CDDP投与した群(sTS+Cis,n=10),生理食塩水を腹腔内投与後は室温に置き,その後CDDP投与した群(sRT+Cis,n=10)の4群に分けた。MTSは39℃で15分間加温,その後35℃で20分保温とした。CDDP(20mg/mL)はMTSから6時間後に腹腔内投与した。Vehには同量のリン酸緩衝生理食塩水を投与した。CDDP投与から48時間後に食事量と飲水量,体重,および腎機能の主要な指標である血清クレアチニン(Cr)と血清尿素窒素(BUN)を評価した。腎組織はPASおよびTUNEL染色により組織学的,ならびに細胞死の評価を実施した。Bax,Bcl2,caspase3の蛋白バンドはウエスタンブロット法で検出し,密度を数値化した。統計解析はANOVA検定を,事後比較にTukey testを行いp<0.05を有意とした。
【結果】
CDDP投与により食餌量(Veh:4.2±0.3g,nRT+Cis:1.1±0.3g,sTS+Cis:1.7±0.2g,sRT+Cis:1.5±0.2g),飲水量(Veh:6.4±0.5g,nRT+Cis:1.5±0.5g,sTS+Cis:2.2±0.2g,sRT+Cis:2.3±0.4g)は有意に減少した。体重(Veh:25.3±0.6g,nRT+Cis:22.2±0.7g,sTS+Cis:22.8±0.6g,sRT+Cis:22.7±0.5g)においても有意な減少が認められたが,温熱負荷による体重差は認められなかった。温熱前処置によって腎機能障害は有意に軽減した(Cre,Veh:0.21±0.01mg/dl,nRT+Cis:0.39±0.04mg/dl,sTS+Cis:0.27±0.01mg/dl,sRT+Cis:0.35±0.03mg/dl,BUN,Veh:25±2.1mg/dl,nRT+Cis:048.1±6.8mg/dl,sTS+Cis:28.4±2.0mg/dl,sRT+Cis:37.9±4.7mg/dl)。腎組織学的にはCDDPにより尿細管構造崩壊,尿細管円柱状変化, 嚢胞性拡大が観察されたが,MTSでは軽減した。TUNEL陽性細胞はCDDPにより増加したが,MTSでは有意に抑制された(Veh:0.3±0.7,nRT+Cis:31.1±6.5,sTS+Cis:8.9±2.1,sRT+Cis:23.6±7.2)。Bax/Bcl2やcaspase3はCDDPにより増加したが,MTSによって抑制された。
【結論】
MTS前処置は細胞死,および,これに関わるタンパク質の発現を軽減させた。CDDP投与前の温熱前処置は腎障害を抑える可能性が示唆された。本研究により温熱療法の適応を広げることができると信じている。
シスプラチン(CDDP)は抗悪性腫瘍薬として広く臨床に用いられているが,腎障害の副作用のため高用量使用は規制されている。原因は十分に解明されていないが,酸化ストレスやアポトーシスの関与が示唆されている。我々はこれまで,深部体温を約1~2℃上昇させるマイルドな全身温熱刺激(MTS)がCDDP誘発性腎障害を軽減させることを報告してきた。今回,アポトーシスに対するMTSの効果を検討した。本研究はJSPS科研費70623510の助成を受けて実施された。
【方法】
C3H/He系統の雄性マウス(20~25kg,7週齢)37匹を使用した。無作為にvehicle群(Veh,n=7),CDDP投与群(nRT+Cis,n=10),生理食塩水を腹腔内投与後にMTS処置,その後CDDP投与した群(sTS+Cis,n=10),生理食塩水を腹腔内投与後は室温に置き,その後CDDP投与した群(sRT+Cis,n=10)の4群に分けた。MTSは39℃で15分間加温,その後35℃で20分保温とした。CDDP(20mg/mL)はMTSから6時間後に腹腔内投与した。Vehには同量のリン酸緩衝生理食塩水を投与した。CDDP投与から48時間後に食事量と飲水量,体重,および腎機能の主要な指標である血清クレアチニン(Cr)と血清尿素窒素(BUN)を評価した。腎組織はPASおよびTUNEL染色により組織学的,ならびに細胞死の評価を実施した。Bax,Bcl2,caspase3の蛋白バンドはウエスタンブロット法で検出し,密度を数値化した。統計解析はANOVA検定を,事後比較にTukey testを行いp<0.05を有意とした。
【結果】
CDDP投与により食餌量(Veh:4.2±0.3g,nRT+Cis:1.1±0.3g,sTS+Cis:1.7±0.2g,sRT+Cis:1.5±0.2g),飲水量(Veh:6.4±0.5g,nRT+Cis:1.5±0.5g,sTS+Cis:2.2±0.2g,sRT+Cis:2.3±0.4g)は有意に減少した。体重(Veh:25.3±0.6g,nRT+Cis:22.2±0.7g,sTS+Cis:22.8±0.6g,sRT+Cis:22.7±0.5g)においても有意な減少が認められたが,温熱負荷による体重差は認められなかった。温熱前処置によって腎機能障害は有意に軽減した(Cre,Veh:0.21±0.01mg/dl,nRT+Cis:0.39±0.04mg/dl,sTS+Cis:0.27±0.01mg/dl,sRT+Cis:0.35±0.03mg/dl,BUN,Veh:25±2.1mg/dl,nRT+Cis:048.1±6.8mg/dl,sTS+Cis:28.4±2.0mg/dl,sRT+Cis:37.9±4.7mg/dl)。腎組織学的にはCDDPにより尿細管構造崩壊,尿細管円柱状変化
【結論】
MTS前処置は細胞死,および,これに関わるタンパク質の発現を軽減させた。CDDP投与前の温熱前処置は腎障害を抑える可能性が示唆された。本研究により温熱療法の適応を広げることができると信じている。