[O-KS-14-2] Upright姿位とRecumbent姿位におけるサイクリング運動の急性効果の違い
動脈スティフネスと筋血流に着目して
Keywords:動脈スティフネス, Upright, Recumbent
【はじめに,目的】
近年,高齢者や内部障害患者数の激増により,低活動者は増加傾向にある。低活動は,血管を退行的にリモデリングする。現在,厚生労働省や高血圧治療学会ガイドラインでは,高血圧治療として,有酸素運動を勧めている。中でも,サイクリング運動が血流量を増加させやすく,動脈スティフネスに対する有用性が示されている。サイクリング運動には,姿勢変化としてUpright(以下Up)姿位とRecumbent(以下Re)姿位があり,筋電図や循環系評価により比較検討した報告が増えている。そこで本研究の目的はUpとReの急性効果の違いを動脈スティフネス・筋血流量より捉え,個別性を重視した有酸素運動における選択肢を提言することである。
【方法】
対象は健常成人男性7名(25.6±2.3歳)とした。対象者は事前にUpとReにて運動負荷試験を行った。プロトコルは安静臥位20分,HR reserve 40%負荷にてサイクリング運動30分,安静臥位30分とした。動脈スティフネスは,脈波伝播速度(以下baPWV)を用い,運動前・運動直後・運動後15分・運動後30分に測定した。筋血流量は,近赤外線分光装置を用い,プロトコル中測定し,運動中・後は5分毎のTotal Hb変化率を算出した。下肢筋活動量は表面筋電図を用い,運動中の前脛骨筋・腓腹筋内側頭・外側広筋・大腿二頭筋に対して1分間当たりの筋積分値(以下iEMG)を用いて解析した。iEMGは対応のあるt検定を使用し,課題間の比較をした。Total HbとbaPWVは相毎にTukeyの多重比較検定を用いて比較した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
iEMGは前脛骨筋のみUpの方が有意に高値を示した(p<0.05)。Uprightにおける5分毎のTotal Hb変化率は,安静時と比較して運動時にて有意に高値を示した(p<0.05)。また,運動時の後半と比較して運動後15分以降にて有意に低値を示した(p<0.05)。それに対し,Reでは有意な差は見られなかった。baPWVはUpにおいて,安静時(右1056.1±119.8cm/s,左1074.0±148cm/s)と比較して運動直後に両下肢(右997.4±117.5cm/s,左994.0±128.9cm/s)とも有意に低値を示した(p<0.05)。また,安静時と比較し運動後15分では左下肢が有意に低値(991.6±121.2cm/s)を示した(p<0.05)。Reにおいて,左下肢は安静時(1111.6±134.7cm/s)と比較して運動直後,有意に低値(1018.1±141.6cm/s)を示した(p<0.05)。その他は有意な差を認めなかった。
【結論】
Upの方がReより前脛骨筋筋活動量が多く,運動時筋血流量が増加し,baPWVが低下し,効果が持続する可能性が示唆された。Upの方が静水圧を利用し,筋ポンプ作用が働きやすい。また,体幹筋の収縮や腹部内臓静脈の収縮も起こりやすいため,静脈還流量が増加し,筋血流量が増加したのではないかと考える。動脈スティフネスの低下は血流量に依存するとされており,Upの方が動脈スティフネスを低下させ,効果が持続したのではないかと考える。よって,動脈スティフネス低下を目的とする介入の際は,Upを薦めることができるのではないかと考える。
近年,高齢者や内部障害患者数の激増により,低活動者は増加傾向にある。低活動は,血管を退行的にリモデリングする。現在,厚生労働省や高血圧治療学会ガイドラインでは,高血圧治療として,有酸素運動を勧めている。中でも,サイクリング運動が血流量を増加させやすく,動脈スティフネスに対する有用性が示されている。サイクリング運動には,姿勢変化としてUpright(以下Up)姿位とRecumbent(以下Re)姿位があり,筋電図や循環系評価により比較検討した報告が増えている。そこで本研究の目的はUpとReの急性効果の違いを動脈スティフネス・筋血流量より捉え,個別性を重視した有酸素運動における選択肢を提言することである。
【方法】
対象は健常成人男性7名(25.6±2.3歳)とした。対象者は事前にUpとReにて運動負荷試験を行った。プロトコルは安静臥位20分,HR reserve 40%負荷にてサイクリング運動30分,安静臥位30分とした。動脈スティフネスは,脈波伝播速度(以下baPWV)を用い,運動前・運動直後・運動後15分・運動後30分に測定した。筋血流量は,近赤外線分光装置を用い,プロトコル中測定し,運動中・後は5分毎のTotal Hb変化率を算出した。下肢筋活動量は表面筋電図を用い,運動中の前脛骨筋・腓腹筋内側頭・外側広筋・大腿二頭筋に対して1分間当たりの筋積分値(以下iEMG)を用いて解析した。iEMGは対応のあるt検定を使用し,課題間の比較をした。Total HbとbaPWVは相毎にTukeyの多重比較検定を用いて比較した。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
iEMGは前脛骨筋のみUpの方が有意に高値を示した(p<0.05)。Uprightにおける5分毎のTotal Hb変化率は,安静時と比較して運動時にて有意に高値を示した(p<0.05)。また,運動時の後半と比較して運動後15分以降にて有意に低値を示した(p<0.05)。それに対し,Reでは有意な差は見られなかった。baPWVはUpにおいて,安静時(右1056.1±119.8cm/s,左1074.0±148cm/s)と比較して運動直後に両下肢(右997.4±117.5cm/s,左994.0±128.9cm/s)とも有意に低値を示した(p<0.05)。また,安静時と比較し運動後15分では左下肢が有意に低値(991.6±121.2cm/s)を示した(p<0.05)。Reにおいて,左下肢は安静時(1111.6±134.7cm/s)と比較して運動直後,有意に低値(1018.1±141.6cm/s)を示した(p<0.05)。その他は有意な差を認めなかった。
【結論】
Upの方がReより前脛骨筋筋活動量が多く,運動時筋血流量が増加し,baPWVが低下し,効果が持続する可能性が示唆された。Upの方が静水圧を利用し,筋ポンプ作用が働きやすい。また,体幹筋の収縮や腹部内臓静脈の収縮も起こりやすいため,静脈還流量が増加し,筋血流量が増加したのではないかと考える。動脈スティフネスの低下は血流量に依存するとされており,Upの方が動脈スティフネスを低下させ,効果が持続したのではないかと考える。よって,動脈スティフネス低下を目的とする介入の際は,Upを薦めることができるのではないかと考える。