第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)14

Sat. May 28, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:椿淳裕(新潟医療福祉大学)

[O-KS-14-4] ウォーミングアップが自転車エルゴメーター駆動中の前頭前野脳血流に及ぼす影響

朝井健人1, 椿淳裕1,2, 竹原奈那3, 佐竹咲希1, 坂本淳輔1, 板垣健介1, 大津友樹1, 小柳圭一4, 大西秀明1,2 (1.新潟医療福祉大学医療技術学部理学療法学科, 2.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 3.新潟医療福祉大学大学院, 4.神戸市立医療センター中央市民病院)

Keywords:ウォーミングアップ, 前頭前野脳血流, 中強度運動

【はじめに,目的】近年,中強度運動によって前頭前野の認知機能が向上することが数多く報告されている。なかでも,中強度自転車エルゴメーター駆動において前頭前野脳血流が増加し,運動後の認知課題の成績が向上するとの報告がある。一方,運動開始直後には前頭前野の脳血流が減少することも報告されている。これに対して,運動直前に低強度でのウォーミングアップを実施することで,運動開始直後の前頭前野脳血流の減少を抑制でき,運動開始後の脳血流の増加をもたらすことができると仮説を立てた。本研究の目的は,低強度のW-upが中強度運動中の頭部酸素化ヘモグロビン(O2Hb)変動に及ぼす影響について明らかにすることである。



【方法】健常成人10名(男性5名,女性5名)を対象とし,自転車エルゴメーター(75XL-IIコンビ)による下肢ペダリング運動を課題とした。主運動は最高酸素摂取量の50%の負荷量で20分間行い,直前に最高酸素摂取量の30%の負荷量でのウォーミングアップを5分間実施するW-up条件と,ウォーミングアップを実施せず5分間安静を保持するnon W-up条件の2条件を実施した。この間のO2Hbは,粗大運動時のモニタリングに最適とされる近赤外分光法(NIRS)により,脳酸素モニタ(OMM-3000,島津製作所)を使用して計測した。国際10-20法によるCzを基準として30mm間隔で送光プローブと受光プローブを配置し,全24チャネルで測定した。関心領域は,前頭前野背外側部(DLPFC)とした。計測値は,安静時平均値に対する変化量を算出した後,1分毎の平均値を求めた。O2Hbの経時変化と条件間での差を検討するため,時間要因および条件要因の二元配置分散分析法を行った。事後検定として,時間要因にはTukey-Kramer法,条件要因には対応のあるt検定を用いて比較した。



【結果】W-up条件では,DLPFCのO2Hbは主運動6分以降で有意な増加を認めた(p<0.05)。non W-up条件では,DLPFCのO2Hbは主運動9分以降で有意な増加を認めた(p<0.05)。DLPFCのO2Hbの条件間の比較では,non W-up条件に比べW-up条件で,主運動2~8分,10~15分,17分,18分で有意に高かった(p<0.05)。課題中のDLPFCのO2Hbのピーク値は,W-up条件で0.111±0.049mM・cm,non W-up条件で0.087±0.026mM・cmであった。



【結論】中強度運動直前に,低強度でのウォーミングアップを実施することで,non W-up条件に比べ中強度運動開始後のDLPFCのO2Hbは早期に有意な増加を示すことが明らかとなった。また,課題中のDLPFCのO2Hbの値も,non W-up条件に比べ有意に高い値となった。ウォーミングアップは怪我の予防などを目的として行われるが,運動中のDLPFCの血流増加にも影響することが示された。