第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)14

Sat. May 28, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:椿淳裕(新潟医療福祉大学)

[O-KS-14-5] カシスアントシアニン摂取が運動後の酸化ストレスに及ぼす影響

藤田俊文1, 冨澤登志子1, 北島麻衣子1, 高間木静香1, 七島直樹1, 前多隼人2, 加藤陽治3, 岩田学4 (1.弘前大学大学院保健学研究科, 2.弘前大学農学生命科学部, 3.弘前大学教育学部, 4.弘前脳卒中・リハビリテーションセンター)

Keywords:カシスアントシアニン, 酸化ストレス, 抗酸化能

【はじめに,目的】

激しい運動後の生体組織の損傷の原因としては,生体内における活性酸素の生成,いわゆる酸化ストレスが影響していると考えられている。近年,抗酸化作用がある食品摂取が運動時の酸化ストレスを軽減させるとの報告がみられており,植物界において広く存在する色素であるアントシアニンが抗酸化物質として注目されている。本研究では,カシスという果実の色素であるカシスアントシアニンに注目し,この食品粉末摂取が激運動後の酸化ストレスに及ぼす影響について検討することを目的とした。


【方法】

対象は健常成人20名(男女10名ずつ)とした。研究デザインはプラセボ対照二重盲検試験にて実施した。群分けは無作為にカシス抽出物粉末カプセル摂取群(以下,カシス摂取群)と乳糖粉末カプセル摂取群(プラセボ群)とした。各群とも4カプセル0.8gを摂取した。運動負荷は全身振動刺激装置G-Flexにて振動周波数30Hz,膝関節軽度屈曲位にて6秒間に1回のスクワットを実施した。自覚的運動強度Borgスケールで【かなりきつい(17)】に到達した時点で運動終了とした。研究プロトコルは,安静10分,カプセル摂取後安静60分,運動負荷,運動終了後安静60分とした。測定項目は,酸化ストレス度(d-ROMs),抗酸化能(BAP),潜在的抗酸化能(BAP/d-ROMs比)とした。カプセル摂取後安静60分(運動前),運動負荷直後(運動直後),運動終了後安静60分(終了後60分)の時点のd-ROMs,BAPを測定した。解析は,分割プロットデザインによる分散分析を実施し,交互作用を確認の上,各要因の群間もしくは変数間での差の検定を実施した。


【結果】

各群内の変数間の差の検定において,d-ROMsはカシス摂取群で運動前と運動直後,プラセボ群で運動前と運動直後,運動直後と終了後60分で有意な差がみられた。BAPはカシス摂取群で運動前と運動直後,運動直後と終了後60分,プラセボ群ですべての変数間で有意な差がみられた。潜在的抗酸化能はカシス摂取群で運動前と運動直後,運動直後と終了後60分,プラセボ群で終了後60分と運動前,運動直後それぞれで有意な差がみられた。


【結論】

一般的に激しい運動直後に酸化ストレスは上昇し,それを制御するために生体内では抗酸化物質(アルブミン,尿酸など)が生成され,生体内の酸化ストレスと抗酸化能のバランスが維持される仕組みになっている。しかし,プラセボ群では終了後60分で安静時よりもBAPが有意に低下し,激しい運動により生体内の抗酸化物質が不足している状態であり,逆にカシス摂取群ではBAPの急激な減少を抑制できていることが示唆された。これは潜在的抗酸化能の結果でもカシス摂取群では運動終了後は運動前の状態と同程度で,プラセボ群では安静時よりも運動終了後は有意に減少していることからも推測できる。以上よりカシス摂取は運動後の酸化ストレス,抗酸化能のバランスを調整する効果があることが示唆された。