[O-KS-14-6] 持続的他動運動がラット膝関節炎発症後早期の炎症や痛みにおよぼす影響
キーワード:関節炎, 持続的他動運動, 痛み
【はじめに,目的】
これまでわれわれは,ラット膝関節炎の発症後早期から持続的他動運動(CPM)を実施すると患部のみならず,遠隔部の痛みが早期に改善すること,すなわちCPMには炎症から波及する二次性痛覚過敏を抑制する効果があることを報告してきた。そして,そのメカニズムにはCPMによる患部の炎症の早期軽減効果が関与していると仮説しているが,この点については検討課題となっていた。そこで本研究では,CPM介入早期の行動学的評価および膝関節の炎症の組織学的評価を行ない,上記仮説を検討した。
【方法】
実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット15匹を用い,1)起炎剤である3%カラゲニン・カオリン混合液を右側膝関節に注入し,関節炎を惹起させる関節炎群(n=5),2)同様に右側膝関節に関節炎を惹起させた後,CPMを実施するCPM群(n=5),3)疑似処置として生理食塩水を右側膝関節に注入する対照群(n=5)に振り分けた。そして,CPM群に対しては起炎剤投与4日目から6日目まで麻酔下で角速度10°/秒の膝関節屈曲伸展運動を60分間実施した。次に,各群に対しては起炎剤もしくは生理食塩水投与の前日ならびに1・7日目に右側膝関節の腫脹と圧痛閾値ならびに遠隔部である足背の痛覚閾値を評価した。具体的には,膝関節の横径をノギスで測定することで腫脹を評価し,プッシュプルゲージにて膝関節外側裂隙部に圧刺激を加え,後肢の逃避反応が出現する荷重量を測定することで圧痛閾値を評価した。また,足背の痛覚閾値は4・15gのvon Frey filament(VFF)を用いてそれぞれ10回刺激し,その際の痛み関連行動の出現回数を測定することで評価した。さらに,起炎剤投与7日目に右側膝関節を採取し,マクロファージのマーカーであるCD68に対する免疫組織化学的染色に供し,滑膜におけるCD68陽性細胞数をカウントした。統計処理としては,一元配置分散分析を適用し,事後検定にはScheffe法を用いて各群間の有意差を判定した。
【結果】
患部の腫脹は,実験期間を通して関節炎群とCPM群の2群間に有意差は認められなかった。また,膝関節の圧痛閾値および足背の痛覚閾値はCPM群,関節炎群ともに起炎剤投与後1日目では対照群より有意に低下しており,この2群間に有意差は認められなかったが,起炎剤投与後7日目においてはCPM群は関節炎群より有意に上昇していた。そして,起炎剤投与7日目における滑膜のCD68陽性細胞数は,関節炎群とCPM群は対照群より有意に高値を示し,この2群を比較するとCPM群が有意に低値を示した。
【結論】
今回の結果から,関節炎発症早期からCPMを実施すると,組織学的にも患部の炎症が早期に軽減することが示唆され,これが患部の痛みの早期改善と二次性痛覚過敏の予防につながったと推察される。
これまでわれわれは,ラット膝関節炎の発症後早期から持続的他動運動(CPM)を実施すると患部のみならず,遠隔部の痛みが早期に改善すること,すなわちCPMには炎症から波及する二次性痛覚過敏を抑制する効果があることを報告してきた。そして,そのメカニズムにはCPMによる患部の炎症の早期軽減効果が関与していると仮説しているが,この点については検討課題となっていた。そこで本研究では,CPM介入早期の行動学的評価および膝関節の炎症の組織学的評価を行ない,上記仮説を検討した。
【方法】
実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット15匹を用い,1)起炎剤である3%カラゲニン・カオリン混合液を右側膝関節に注入し,関節炎を惹起させる関節炎群(n=5),2)同様に右側膝関節に関節炎を惹起させた後,CPMを実施するCPM群(n=5),3)疑似処置として生理食塩水を右側膝関節に注入する対照群(n=5)に振り分けた。そして,CPM群に対しては起炎剤投与4日目から6日目まで麻酔下で角速度10°/秒の膝関節屈曲伸展運動を60分間実施した。次に,各群に対しては起炎剤もしくは生理食塩水投与の前日ならびに1・7日目に右側膝関節の腫脹と圧痛閾値ならびに遠隔部である足背の痛覚閾値を評価した。具体的には,膝関節の横径をノギスで測定することで腫脹を評価し,プッシュプルゲージにて膝関節外側裂隙部に圧刺激を加え,後肢の逃避反応が出現する荷重量を測定することで圧痛閾値を評価した。また,足背の痛覚閾値は4・15gのvon Frey filament(VFF)を用いてそれぞれ10回刺激し,その際の痛み関連行動の出現回数を測定することで評価した。さらに,起炎剤投与7日目に右側膝関節を採取し,マクロファージのマーカーであるCD68に対する免疫組織化学的染色に供し,滑膜におけるCD68陽性細胞数をカウントした。統計処理としては,一元配置分散分析を適用し,事後検定にはScheffe法を用いて各群間の有意差を判定した。
【結果】
患部の腫脹は,実験期間を通して関節炎群とCPM群の2群間に有意差は認められなかった。また,膝関節の圧痛閾値および足背の痛覚閾値はCPM群,関節炎群ともに起炎剤投与後1日目では対照群より有意に低下しており,この2群間に有意差は認められなかったが,起炎剤投与後7日目においてはCPM群は関節炎群より有意に上昇していた。そして,起炎剤投与7日目における滑膜のCD68陽性細胞数は,関節炎群とCPM群は対照群より有意に高値を示し,この2群を比較するとCPM群が有意に低値を示した。
【結論】
今回の結果から,関節炎発症早期からCPMを実施すると,組織学的にも患部の炎症が早期に軽減することが示唆され,これが患部の痛みの早期改善と二次性痛覚過敏の予防につながったと推察される。