[O-KS-15-4] 健常成人男性における片脚立位時の骨盤への抵抗に対する中殿筋各線維の活動の筋電図を使用した比較
キーワード:中殿筋, 表面筋電図, 片脚立位
【はじめに,目的】
中殿筋は股関節外転運動の動筋だが,3つの独立した解剖的で機能的な線維(前部線維・中部線維・後部線維)に分類される。先行研究ではこれらを選択的に評価・トレーニングすることが効果的な理学療法に必要と述べられているが,その効果を荷重位で検討された報告は少ない。そこで今回の目的は,荷重位での中殿筋各線維の機能的な働きを明らかにすることとした。
【方法】
対象は整形外科疾患の既往のない健常成人男性13名で,平均年齢25.8(24-32)歳,身長と体重の平均値(標準偏差)は169.5(4.7)cm,63.0(7.3)kgであった。運動課題は両股関節中間位,右膝関節90°屈曲位の左片脚立位での右側骨盤への抵抗に対する保持とした。骨盤への抵抗はベルトにて,被験者の骨盤とプーリー(Lojer社製)を接続し,20Nで5秒間牽引することで行った。骨盤への抵抗方向は支持側股関節の運動方向に拮抗するよう設定し,外転,外旋,内旋,外転かつ外旋,外転かつ内旋,抵抗なしの6条件とした。被検筋は左側の中殿筋前部線維・中部線維・後部線維とした。筋活動の測定には多チャンネルテレメーターシステムWEB1000(日本光電社製)を使用した。運動課題前に股関節外転運動の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)時の筋電積分値を測定し,運動課題時の筋電積分値はMVC時の筋電積分値を100%として正規化した(%MVC)。統計処理は各線維と運動方向の2要因で反復測定の二元配置分散分析を行い,単純主効果および,主効果の検定は一元配置分散分析および,Tukeyの多重比較を行った。全ての統計で有意水準は5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,各線維と運動方向に交互作用が見られた。単純主効果の検定の結果,%MVCの平均値(標準偏差)は,運動方向では,内旋条件で前部線維が42.7(19.8)%で,後部線維の20.1(13.5)%より有意に高値を示した。各線維に関しては,前部線維における内旋条件が42.7(19.8)%で,外旋条件12.1(4.4)%,外転かつ外旋条件17.1(11.5)%,抵抗なし24.1(10.9)%と比較し有意に高値を示した。また中部線維における内旋条件は32.7(18.4)%であり,外旋条件13.9(7.7)%と比較し有意に高値を示した。
【結論】
今回の結果より,荷重位においても中殿筋の各線維は運動方向により活動が異なることが示された。特に前部線維と中部線維はともに,外旋運動よりも内旋運動時に活動が増加したため,荷重位においても股関節の強い内旋作用を有していることが示された。一方後部線維についてはどの運動方向においても活動の増加は見られなかった。非荷重位での先行研究では,後部線維は外旋運動と比較して,内旋運動で有意な活動の増加を示したとの報告(Dwyer2011)もあるが,荷重位では異なる結果となった。このことから後部線維は,股関節中間位の荷重位では関節運動には作用せず,運動方向によらず関節を固定する作用を持つ可能性が示された。
中殿筋は股関節外転運動の動筋だが,3つの独立した解剖的で機能的な線維(前部線維・中部線維・後部線維)に分類される。先行研究ではこれらを選択的に評価・トレーニングすることが効果的な理学療法に必要と述べられているが,その効果を荷重位で検討された報告は少ない。そこで今回の目的は,荷重位での中殿筋各線維の機能的な働きを明らかにすることとした。
【方法】
対象は整形外科疾患の既往のない健常成人男性13名で,平均年齢25.8(24-32)歳,身長と体重の平均値(標準偏差)は169.5(4.7)cm,63.0(7.3)kgであった。運動課題は両股関節中間位,右膝関節90°屈曲位の左片脚立位での右側骨盤への抵抗に対する保持とした。骨盤への抵抗はベルトにて,被験者の骨盤とプーリー(Lojer社製)を接続し,20Nで5秒間牽引することで行った。骨盤への抵抗方向は支持側股関節の運動方向に拮抗するよう設定し,外転,外旋,内旋,外転かつ外旋,外転かつ内旋,抵抗なしの6条件とした。被検筋は左側の中殿筋前部線維・中部線維・後部線維とした。筋活動の測定には多チャンネルテレメーターシステムWEB1000(日本光電社製)を使用した。運動課題前に股関節外転運動の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)時の筋電積分値を測定し,運動課題時の筋電積分値はMVC時の筋電積分値を100%として正規化した(%MVC)。統計処理は各線維と運動方向の2要因で反復測定の二元配置分散分析を行い,単純主効果および,主効果の検定は一元配置分散分析および,Tukeyの多重比較を行った。全ての統計で有意水準は5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,各線維と運動方向に交互作用が見られた。単純主効果の検定の結果,%MVCの平均値(標準偏差)は,運動方向では,内旋条件で前部線維が42.7(19.8)%で,後部線維の20.1(13.5)%より有意に高値を示した。各線維に関しては,前部線維における内旋条件が42.7(19.8)%で,外旋条件12.1(4.4)%,外転かつ外旋条件17.1(11.5)%,抵抗なし24.1(10.9)%と比較し有意に高値を示した。また中部線維における内旋条件は32.7(18.4)%であり,外旋条件13.9(7.7)%と比較し有意に高値を示した。
【結論】
今回の結果より,荷重位においても中殿筋の各線維は運動方向により活動が異なることが示された。特に前部線維と中部線維はともに,外旋運動よりも内旋運動時に活動が増加したため,荷重位においても股関節の強い内旋作用を有していることが示された。一方後部線維についてはどの運動方向においても活動の増加は見られなかった。非荷重位での先行研究では,後部線維は外旋運動と比較して,内旋運動で有意な活動の増加を示したとの報告(Dwyer2011)もあるが,荷重位では異なる結果となった。このことから後部線維は,股関節中間位の荷重位では関節運動には作用せず,運動方向によらず関節を固定する作用を持つ可能性が示された。