[O-KS-15-6] 変形性股関節症患者における股関節脱臼は股関節周囲筋と股関節外転トルクと関連する
キーワード:変形性股関節症, 筋萎縮, 股関節外転トルク
【はじめに,目的】変形性股関節症(以下,股OA)患者の股関節正面のX線画像から得られる有用な情報として股関節脱臼が挙げられる。股関節脱臼は大腿骨と臼蓋の構造的な破綻の原因となるとともに股関節の安定性に関わるその他の因子の機能にも影響を及ぼすと考えられ,これらを考慮しながら理学療法を実践することが重要である。しかし,股OA患者の股関節脱臼と股関節の安定化機構に関わる股関節周囲筋や股関節外転トルクとの関連性を検討した報告は見当たらない。本研究の目的は,股OA患者の股関節脱臼が股関節機能に与える影響を明らかとすることである。
【方法】片側の進行期または末期の股OA患者65名(年齢62.8±9.5歳,男性8名,女性57名)を対象とした。当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像とCT画像から股関節脱臼の指標であるCroweの分類と股関節周囲筋の筋断面積を算出した。股関節周囲筋の筋断面積の測定は,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いた。対象は梨状筋,腸腰筋,中殿筋,大殿筋とし,得られた筋断面積から患健比×100%を算出した。また,徒手筋力計(日本MEDIX社製)を用いて等尺性の股関節外転運動時の関節トルクを測定し,得られた値から患健比×100%を算出した。その他の機能の評価として,Timed up and go test(以下,TUG)を行った。さらに,Croweのtype分類により群分けをし,各type間での測定項目の比較には一元配置分散分析とTukeyの多重比較を用い,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】Crowe分類はtype0が33名,typeIが19名,typeIIが13名であり,年齢,性別,BMIについてはtype間で有意差を認めなかった。多重比較の結果,中殿筋(type0:82.1±11.4%,typeI:72.0±10.8%,typeII:50.4±9.5%)と腸腰筋(type0:79.7±13.7%,typeI:61.5±9.1%,typeII:44.9±7.5%)と梨状筋(type0:81.5±11.3%,typeI:64.7±14.0%,typeII:55.8±8.7%)については,各type間で有意差を認めた。また,股関節外転トルクは,type0が79.5±15.8%,typeIが76.6±13.0%,typeIIが66.2±15.6%であり,type0と比較してtypeIIIが有意に低い値を示した。一方,大殿筋とTUG-testについては各type間で有意差を認めなかった。
【結論】本研究の結果より,関節変性に伴い股関節脱臼が進んでいる股OA患者では,歩行能力よりも股関節の安定性に関わる中殿筋,腸腰筋,梨状筋に顕著な筋萎縮を認めるとともに股関節外転トルクの低下もみられた。以上から,股関節脱臼が顕著な症例では筋の作用による大腿骨と臼蓋の安定化が欠如するとともに股関節外転トルクも低下していることから,これらを考慮した介入が必要であると考えられた。
【方法】片側の進行期または末期の股OA患者65名(年齢62.8±9.5歳,男性8名,女性57名)を対象とした。当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像とCT画像から股関節脱臼の指標であるCroweの分類と股関節周囲筋の筋断面積を算出した。股関節周囲筋の筋断面積の測定は,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いた。対象は梨状筋,腸腰筋,中殿筋,大殿筋とし,得られた筋断面積から患健比×100%を算出した。また,徒手筋力計(日本MEDIX社製)を用いて等尺性の股関節外転運動時の関節トルクを測定し,得られた値から患健比×100%を算出した。その他の機能の評価として,Timed up and go test(以下,TUG)を行った。さらに,Croweのtype分類により群分けをし,各type間での測定項目の比較には一元配置分散分析とTukeyの多重比較を用い,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】Crowe分類はtype0が33名,typeIが19名,typeIIが13名であり,年齢,性別,BMIについてはtype間で有意差を認めなかった。多重比較の結果,中殿筋(type0:82.1±11.4%,typeI:72.0±10.8%,typeII:50.4±9.5%)と腸腰筋(type0:79.7±13.7%,typeI:61.5±9.1%,typeII:44.9±7.5%)と梨状筋(type0:81.5±11.3%,typeI:64.7±14.0%,typeII:55.8±8.7%)については,各type間で有意差を認めた。また,股関節外転トルクは,type0が79.5±15.8%,typeIが76.6±13.0%,typeIIが66.2±15.6%であり,type0と比較してtypeIIIが有意に低い値を示した。一方,大殿筋とTUG-testについては各type間で有意差を認めなかった。
【結論】本研究の結果より,関節変性に伴い股関節脱臼が進んでいる股OA患者では,歩行能力よりも股関節の安定性に関わる中殿筋,腸腰筋,梨状筋に顕著な筋萎縮を認めるとともに股関節外転トルクの低下もみられた。以上から,股関節脱臼が顕著な症例では筋の作用による大腿骨と臼蓋の安定化が欠如するとともに股関節外転トルクも低下していることから,これらを考慮した介入が必要であると考えられた。