第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)16

Sat. May 28, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:中俣修(文京学院大学 保健医療技術学部理学療法学科)

[O-KS-16-3] 後足部接地走行と前足部接地走行における足内側縦アーチの運動学比較

佐川大輔, 今成光喜, 城下貴司 (群馬パース大学)

Keywords:足内側縦アーチ, 走行, Dynamic Navicular Drop Test

【はじめに,目的】笹山らは前足部接地による走行では通常時に比べ立脚初期に足内側縦アーチの低下,足関節内的底屈モーメント(AM)の増加がみられ,後足部接地による走行では通常時に比べAMの減少がみられたと報告した。また前足部接地による走行は過度の運動負荷により下腿障害の危険が大きい接地パターンであると考えた。高嶋はケニア人選手において,長距離種目の着地方法が前足部接地の選手で平均タイムが高いことを報告した。本研究の目的は前足部接地と後足部接地でDynamic Navicular Drop Test(以下DND),AMを比較・検討することとした。

【方法】被験者は過去6ヶ月間下肢の障害により医療機関にかかっていない20歳前後の健常者11名とした。使用機材は三次元動作解析装置(VICON MX)と赤外線カメラ9台,床反力計1枚(AMTI)とし,反射マーカーはFull plug in全身モデル35個とDND測定用3個を貼付した。被験者は床反力計の1枚目に接地するように走行した。走行周期は1枚目の床反力計に接地した瞬間から足底が離れるまでとし,DNDは接地時の舟状骨の高さと立脚期で舟状骨が最も低下した時の高さの差とした。AM最大値は最も足関節の内的底屈モーメントの値が大きくなった箇所とした。走行の条件として定常走行は接地方法に関して指示をせず,前足部接地走行は母趾球のあたり,後足部接地走行は踵から接地し走行することとした。前足部接地走行と後足部接地走行は比を求めてDND,AM最大値の有意差を対応のあるt-検定を行った。比は前足部接地走行/定常走行×100,後足部接地走行/定常走行×100で求めた。

【結果】後足部接地走行と定常走行のDND,前足部接地走行と定常走行のDNDを比較した結果は定常走行は8.0±0.7mm,後足部接地走行は5.8±0.6mmのため低下し,前足部接地走行は9.9±0.5mmのため増加した。また前足部接地走行のDNDは後足部接地走行と比較し有意に大きくなった(p=0.000912)。後足部接地走行と定常走行のAM最大値,前足部接地走行と定常走行のAM最大値を比較した結果は定常走行は3.2±0.1Nm/kg,後足部接地走行は2.8±0.1Nm/kgのため低下し,前足部接地走行は3.4±0.8Nm/kgのため増加した。また前足部接地走行のAM最大値は後足部接地走行と比較し有意に大きくなった(p=0.0000125)。

【結論】本研究の前足部接地走行と後足部接地走行のDNDの結果は笹山らの研究と同様の結果が得られた。前足部接地走行では定常走行と比較しAM最大値が増加したことから,足関節底屈筋群は運動負荷が強く疲労しやすいことが考えられる。また長距離競技において前足部接地走行で平均タイムが速いことから前足部接地走行の方が蹴り出す力が大きいことが考えられる。前足部接地走行は疲労しやすい分,推進力が得られやすい走行であることが示唆される。さらに前足部接地走行ではAM最大値が大きくDNDも大きい。後足部接地走行ではAM最大値が小さくDNDも小さい。足内側縦アーチとモーメントには運動学的関連性が疑われた。