[O-KS-18-2] Light-touchが立位姿勢制御のSensory reweightingに及ぼす影響
Keywords:Stabilogram diffusion analysis, Light touch, Sensory reweighting
【はじめに,目的】
人は視覚,体性感覚,前庭覚など感覚情報を統合し姿勢制御を行い,この過程はSensory reweightingと呼ばれる。本研究は,固定点に指先で軽く触れるLight touch(以下,LT)による求心性の固有感覚情報と,視覚情報の変化に伴う姿勢制御様式の変容を,Stabilogram diffusion analysis(以下,SDA解析)を用いて観察し,姿勢制御に関する理学療法を新たな視点から検討することを目的として行った。
【方法】
対象は健常若年者8人(年齢25.8±2.3[歳];身長1.73±0.03[m];体重64.0±3.2[kg])で,課題は30秒間の静止立位保持とし,条件は,LTを行うLT条件と行わないNT条件,LTに加えて閉眼するLTEC条件とした。LTは力学的支持との違いを明白にするため,小型3軸力覚センサ(テック技販社製)を用いて計測した接触圧が1[N]未満となるよう練習を行った。
課題中の床反力データは床反力計2基(テック技販社製)を用いて取得し,Nexus 2.0(Vicon Motion Systems社製)を用いてCOP座標の左右方向成分(x),前後方向成分(y)をそれぞれ算出した。
SDA解析は先行研究を参考に,COP座標のある点と時間⊿t経過後の点における座標間距離の二乗を求め,時間を横軸にとりプロットした。描出された曲線の傾きが最も顕著に変化する点をcritical pointとし,0秒からcritical pointまでを短時間領域,critical pointから10秒までを長時間領域とした。各領域において最小二乗法を用いて求めた近似直線の傾きから拡散係数を求め,曲線を対数変換した後に同様の処理を行い,近似直線の傾きからスケーリング指数を算出した。以上の過程をx,yとも行い,さらにxとyの和を合成方向(r)とした。なお,先行研究に基づき拡散係数がより高値のとき,COP軌跡は不安定,スケーリング指数が0.5より大きい場合,COP軌跡は長時間相関を有すると判断した。
統計学的解析にはSPSS ver.22(日本アイ・ビー・エム社製)を用いた。正規性の検定を行った後,反復測定分散分析を用いて条件間で比較を行い,Bonferroni法で事後検定を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
拡散係数に関して,LT条件はNT条件と比較して,全ての方向と時間領域において有意に低値を示し,また,LT条件はLTEC条件と比較して,左右および合成方向の長時間領域を除き,有意に低値を示した。スケーリング指数に関して,全条件で全ての方向の短時間領域において0.5より高値であった。
【結論】
結果より,LT条件では求心性の固有感覚情報の増加により,NT条件と比較してCOP軌跡が安定していたことが示唆された。また,LTEC条件においてはLT条件と比較すると不安定とみなされるが,短時間領域においてCOP軌跡は長時間相関を有し,閉眼しているもののNT条件と比較して不安定とはいえなかった。よって人は視覚情報が遮断された条件下でも,取得可能な固有感覚情報を拠所としてCOP軌跡の制御を安定化させようとしていることが示唆された。
人は視覚,体性感覚,前庭覚など感覚情報を統合し姿勢制御を行い,この過程はSensory reweightingと呼ばれる。本研究は,固定点に指先で軽く触れるLight touch(以下,LT)による求心性の固有感覚情報と,視覚情報の変化に伴う姿勢制御様式の変容を,Stabilogram diffusion analysis(以下,SDA解析)を用いて観察し,姿勢制御に関する理学療法を新たな視点から検討することを目的として行った。
【方法】
対象は健常若年者8人(年齢25.8±2.3[歳];身長1.73±0.03[m];体重64.0±3.2[kg])で,課題は30秒間の静止立位保持とし,条件は,LTを行うLT条件と行わないNT条件,LTに加えて閉眼するLTEC条件とした。LTは力学的支持との違いを明白にするため,小型3軸力覚センサ(テック技販社製)を用いて計測した接触圧が1[N]未満となるよう練習を行った。
課題中の床反力データは床反力計2基(テック技販社製)を用いて取得し,Nexus 2.0(Vicon Motion Systems社製)を用いてCOP座標の左右方向成分(x),前後方向成分(y)をそれぞれ算出した。
SDA解析は先行研究を参考に,COP座標のある点と時間⊿t経過後の点における座標間距離の二乗を求め,時間を横軸にとりプロットした。描出された曲線の傾きが最も顕著に変化する点をcritical pointとし,0秒からcritical pointまでを短時間領域,critical pointから10秒までを長時間領域とした。各領域において最小二乗法を用いて求めた近似直線の傾きから拡散係数を求め,曲線を対数変換した後に同様の処理を行い,近似直線の傾きからスケーリング指数を算出した。以上の過程をx,yとも行い,さらにxとyの和を合成方向(r)とした。なお,先行研究に基づき拡散係数がより高値のとき,COP軌跡は不安定,スケーリング指数が0.5より大きい場合,COP軌跡は長時間相関を有すると判断した。
統計学的解析にはSPSS ver.22(日本アイ・ビー・エム社製)を用いた。正規性の検定を行った後,反復測定分散分析を用いて条件間で比較を行い,Bonferroni法で事後検定を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
拡散係数に関して,LT条件はNT条件と比較して,全ての方向と時間領域において有意に低値を示し,また,LT条件はLTEC条件と比較して,左右および合成方向の長時間領域を除き,有意に低値を示した。スケーリング指数に関して,全条件で全ての方向の短時間領域において0.5より高値であった。
【結論】
結果より,LT条件では求心性の固有感覚情報の増加により,NT条件と比較してCOP軌跡が安定していたことが示唆された。また,LTEC条件においてはLT条件と比較すると不安定とみなされるが,短時間領域においてCOP軌跡は長時間相関を有し,閉眼しているもののNT条件と比較して不安定とはいえなかった。よって人は視覚情報が遮断された条件下でも,取得可能な固有感覚情報を拠所としてCOP軌跡の制御を安定化させようとしていることが示唆された。