第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)18

Sat. May 28, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:中江秀幸(東北福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)

[O-KS-18-3] ステップ動作時の姿勢安定性に予測的姿勢調整の潜在エラーが及ぼす影響

佐藤健二1,2, 小笠原友香里2, 浅野直也2, 近藤和泉2, 内山靖1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻, 2.国立長寿医療研究センター機能回復診療部)

Keywords:ステップ動作, 姿勢制御, 動作分析

【はじめに,目的】

安定した姿勢は身体質量中心(COM)の偏倚や速度が支持基底面内に統制された状態であり,予測的姿勢調整(Anticipatory Postural Adjustment;APA)は,運動に伴う姿勢不安定性を未然に最小限にする役割を有している。これまでの研究から,ステップ動作開始時に足圧中心(COP)を遊脚側・後方に移動することで,COMを立脚側・前方へ移動する推進力が生じ,踏み出し以降の片脚支持期にCOMが遊脚側に偏倚することを防ぐと報告されている。また,動作開始時に踏み出す足を弁別する選択的課題が求められると,誤った方向に体重を移動する予測的姿勢調整の潜在エラー(APAエラー)が生じ,ステップ動作時間が延長すると報告されている。しかし,APAエラーが片脚支持期のCOMの偏倚に及ぼす影響は明らかになっていない。そこでAPAエラーがFoot off(FO),Foot contact(FC)時のCOM偏倚量と速度に及ぼす影響と,COP偏倚時間とCOP-COM位置差(遊脚側,前方)からAPAエラー時の補償的な姿勢制御を探索することを目的とした。

【方法】

対象は健常若年者20名(平均25±4歳)とした。前方のモニターに表示される視覚刺激(矢印)の示す足をできるだけ早く踏み出すことを課題とし,踏み出す距離は身長×20%に規定した。計測には3次元動作解析装置(VICON),床反力計(AMTI)を使用し,床反力垂直成分からAPA開始,FO,FCを求め,APAエラーはAPA開始時に通常とは反対の立脚側に体重が移動した場合と定義した。解析はDIFFマーカーセット(10点マーカー)を使用し,FO,FCのCOM偏倚量(cm),COM速度(cm/s)を抽出した。さらに,APA相(APA開始からFOまで)におけるCOP偏倚時間(s),最大COP-COM位置差(cm)を抽出した。データは身長(m)で除した値(%Ht)を用い,対応のあるT検定により比較した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

APAエラーを呈すると,立脚側へのCOM偏倚量が減少し(APAエラー-:-1.11±0.32%Ht(FO),-0.78±0.51%Ht(FC),APAエラー+:-0.77±0.30%Ht(FO),-0.41±0.55%Ht(FC)),前方へのCOM偏倚量が増加した(APAエラー-:1.68±0.51%Ht(FO),7.34±1.18%Ht(FC),APAエラー+:2.17±0.53%Ht(FO),7.79±1.09%Ht(FC))。また,遊脚側へのCOP偏倚時間が延長し(APAエラー-:0.29±0.04s,APAエラー+:0.41±0.06s),遊脚側へのCOP-COM位置差(APAエラー-:3.06±1.16%Ht,APAエラー+:3.74±1.21%Ht)と,前方へのCOP-COM位置差(APAエラー:-0.85±1.00%Ht,APAエラー+:-0.53±1.02%Ht)が増加した。

【結論】

APAエラーを呈した場合,立脚側へのCOM偏倚量が減少し,前方へのCOM偏倚量が増加したことから,APAエラーにより姿勢不安定性が惹起されることが示唆された。また,通常のステップ動作に比べ遊脚側へのCOP偏倚時間,遊脚側・前方へのCOP-COM位置差が増加し,APAエラー時には補償的な姿勢制御を行うことが明らかとなった。