[O-KS-19-2] 高齢者の前方転倒回避ステップ着地後の安定性に関わる体幹伸展筋活動
Keywords:転倒, ステップ, 体幹
【はじめに,目的】
つまずき等の後,下肢の前方への踏み出し反応(以下,ステップ)は転倒予防にとって重要であり,単一ステップを行う者(以下,SS;single stepper)と比べ,複数ステップを行う者(以下,MS;multiple stepper)は転倒リスクが高いことが報告されている。これまでSSとMSにおける下肢筋力や下肢筋活動様相の違いは明らかにされてきたが,体幹機能については不明なままである。
本研究の目的は,高齢者に対しステップを実験的に誘発し,SSとMSの違いを,ステップ着地後の姿勢安定性に関与する体幹・股伸展筋活動量に着目して明らかにすることである。
【方法】
高齢女性24名を対象とした。MMTの方法で徒手筋力計を用い,体幹・股伸展の最大筋力(Nm/kg)を計測した。ステップ誘発は,被験者に牽引ケーブルで背部を牽引した(体重の20%の牽引力)状態で身体を前傾させ,検査者が牽引を解放した後にステップさせる方法とした。ステップの結果,SS群(年齢73.3±2.5歳,身長150.5±4.2cm,52.2±6.8kg)とMS群(年齢75.0±3.1歳,身長152.3±4.8,体重54.8±7.6kg)はそれぞれ12名ずつであった。筋電図導出筋は,踏み出し脚と同側のL5レベル脊柱起立筋(以下,iES),大殿筋(以下,GM),対側の脊柱起立筋(以下,cES)とした。筋電図波形を平滑化,各筋の最大等尺性筋力で正規化(%MVC)した。ステップ時に光学式カメラ動作解析装置により踏み出し脚が接地した瞬間の身体前傾角度θ(床からの垂直軸と,踏み出し脚と対側の肩峰―腓骨外果を結んだ線のなす角)を記録した。筋電図データ解析区間は踏み出し脚の接地直前0.1秒から接地後に膝屈曲角度が最大に到達するまでとし,同区間の最大筋活動量を導出した。ステップは3回行わせ,全てのアウトカムの平均値をSS群とMS群で比較した。
【結果】
体幹伸展筋力はSS群(1.9±0.5Nm/kg)とMS群(1.7±0.4Nm/kg)で有意差を認めなかった。股伸展筋力はSS群(0.9±0.3Nm/kg)よりMS群(0.7±0.2Nm/kg)で有意に小さい値であった(p<0.05)。θはSS群23.4±5.6°に比べMS群28.9±6.0°で有意に大きかった(p<0.05)。最大筋活動量はcES(SS群160.6±61.2%,MS群101.5±44.9%),GM(SS群112.0±56.7%,MS群71.2±32.9%)において,有意にSS群よりMS群で小さかった(cES,GMともにp<0.05)。
【結論】
SSで転倒回避するためには体幹前傾角度を小さく保つ必要があり,体幹と股伸展筋力を適切なタイミングで瞬時に強く発揮する能力が必要とされる。また,ステップ着地後の安定性を向上させるために,股関節伸展の最大筋力を高めることも重要であることが示唆された。
つまずき等の後,下肢の前方への踏み出し反応(以下,ステップ)は転倒予防にとって重要であり,単一ステップを行う者(以下,SS;single stepper)と比べ,複数ステップを行う者(以下,MS;multiple stepper)は転倒リスクが高いことが報告されている。これまでSSとMSにおける下肢筋力や下肢筋活動様相の違いは明らかにされてきたが,体幹機能については不明なままである。
本研究の目的は,高齢者に対しステップを実験的に誘発し,SSとMSの違いを,ステップ着地後の姿勢安定性に関与する体幹・股伸展筋活動量に着目して明らかにすることである。
【方法】
高齢女性24名を対象とした。MMTの方法で徒手筋力計を用い,体幹・股伸展の最大筋力(Nm/kg)を計測した。ステップ誘発は,被験者に牽引ケーブルで背部を牽引した(体重の20%の牽引力)状態で身体を前傾させ,検査者が牽引を解放した後にステップさせる方法とした。ステップの結果,SS群(年齢73.3±2.5歳,身長150.5±4.2cm,52.2±6.8kg)とMS群(年齢75.0±3.1歳,身長152.3±4.8,体重54.8±7.6kg)はそれぞれ12名ずつであった。筋電図導出筋は,踏み出し脚と同側のL5レベル脊柱起立筋(以下,iES),大殿筋(以下,GM),対側の脊柱起立筋(以下,cES)とした。筋電図波形を平滑化,各筋の最大等尺性筋力で正規化(%MVC)した。ステップ時に光学式カメラ動作解析装置により踏み出し脚が接地した瞬間の身体前傾角度θ(床からの垂直軸と,踏み出し脚と対側の肩峰―腓骨外果を結んだ線のなす角)を記録した。筋電図データ解析区間は踏み出し脚の接地直前0.1秒から接地後に膝屈曲角度が最大に到達するまでとし,同区間の最大筋活動量を導出した。ステップは3回行わせ,全てのアウトカムの平均値をSS群とMS群で比較した。
【結果】
体幹伸展筋力はSS群(1.9±0.5Nm/kg)とMS群(1.7±0.4Nm/kg)で有意差を認めなかった。股伸展筋力はSS群(0.9±0.3Nm/kg)よりMS群(0.7±0.2Nm/kg)で有意に小さい値であった(p<0.05)。θはSS群23.4±5.6°に比べMS群28.9±6.0°で有意に大きかった(p<0.05)。最大筋活動量はcES(SS群160.6±61.2%,MS群101.5±44.9%),GM(SS群112.0±56.7%,MS群71.2±32.9%)において,有意にSS群よりMS群で小さかった(cES,GMともにp<0.05)。
【結論】
SSで転倒回避するためには体幹前傾角度を小さく保つ必要があり,体幹と股伸展筋力を適切なタイミングで瞬時に強く発揮する能力が必要とされる。また,ステップ着地後の安定性を向上させるために,股関節伸展の最大筋力を高めることも重要であることが示唆された。