[O-KS-19-3] 体幹の側方偏位が腹直筋,側腹筋群筋厚および呼吸機能に及ぼす影響
Keywords:体幹偏位, 筋厚, 呼吸機能
【はじめに,目的】
腹直筋,側腹筋群は,胸郭と骨盤を連結し体幹の安定性に重要な役割を果たす。また恒常的な胸郭可動性の維持や強制呼気に重要な作用を担う。体幹側方偏位の増大は胸郭形状の左右非対称性が助長され胸郭に付着する腹直筋,側腹筋群の長さ,張力関係にも変化を来たし体幹機能に影響を及ぼすと考えられる。したがって収縮活動の左右差を可及的に最小限にすることは臨床結果を判定する指標になり得る。本研究の目的は体幹の側方偏位が腹直筋,側腹筋群筋厚および呼吸機能への影響を検討することとした。
【方法】
対象は健常成人男性15名であった。測定肢位は安静背臥位とした。体幹偏位の測定はデジタルカメラを用い,得られた画像を画像解析ソフトImageJにて体幹偏位量を算出した。この値を元に,他動的にベッドをスライドさせ安静位,正中位,偏位量増大位の3条件で検討した。腹直筋および側腹筋群筋厚の測定は超音波診断装置を用いた。課題動作は安静呼気,努力呼気とし,腹直筋の測定は第3筋区画の中央点にプローブを位置させ,側腹筋群筋厚の測定は第10肋骨下端と骨盤の中央点にプローブを位置させ短軸像を抽出した。それぞれの呼気終末時で得た画像は画像解析ソフトImageJを用いて筋膜間距離を筋厚として算出した。呼吸機能の測定は,呼気ガス分析装置とスパイロメーターを用いて測定した。統計処理は各項目における代表値を対応のあるt検定を用いて比較検討した。なお,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
体幹偏位は有意に左側へ偏位していた(p<0.01)。腹直筋および側腹筋群筋厚は,安静呼気において偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.01,p<0.01)。また努力呼気でも両筋は偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.05,p<0.05)。正中位は,安静呼気および努力呼気で両筋に有意な差がみられなかった(n.s.)。呼吸機能は,TVにおいて偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)RRは偏位量増大位で有意に増大した(p<0.01)。MVは有意な差がみられなかった(n.s.)。VC,FVC,PEFR,%VCおよびV25においては偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)。FEV1.0においては有意な差がみられなかった(n.s.)。また,FEV1.0%は偏位量増大位で有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
今回の結果から安静背臥位では,骨盤に対して体幹は有意に左側へ偏位し左側方偏位が増大すると左右の腹直筋,側腹筋群筋厚に左右差が生じ呼出機能低下に通ずることが示された。体幹側方偏位の改善は,胸郭のニュートラル化に寄与し付着する左右腹直筋,側腹筋群の均等な張力の再建に結びつき,呼吸運動における左右対称性の胸郭運動や筋活動により呼出機能改善が図れたと考察する。また,強制呼気に関与する協調的な腹直筋,側腹筋群機能の発揮が得られ,効率的な呼出機能が獲得できたと考察する。体幹側方偏位に伴う胸郭機能低下は,呼吸機能低下の一要因に関与し,呼吸器疾患をはじめ多くの臨床応用ができるものと考察する。
腹直筋,側腹筋群は,胸郭と骨盤を連結し体幹の安定性に重要な役割を果たす。また恒常的な胸郭可動性の維持や強制呼気に重要な作用を担う。体幹側方偏位の増大は胸郭形状の左右非対称性が助長され胸郭に付着する腹直筋,側腹筋群の長さ,張力関係にも変化を来たし体幹機能に影響を及ぼすと考えられる。したがって収縮活動の左右差を可及的に最小限にすることは臨床結果を判定する指標になり得る。本研究の目的は体幹の側方偏位が腹直筋,側腹筋群筋厚および呼吸機能への影響を検討することとした。
【方法】
対象は健常成人男性15名であった。測定肢位は安静背臥位とした。体幹偏位の測定はデジタルカメラを用い,得られた画像を画像解析ソフトImageJにて体幹偏位量を算出した。この値を元に,他動的にベッドをスライドさせ安静位,正中位,偏位量増大位の3条件で検討した。腹直筋および側腹筋群筋厚の測定は超音波診断装置を用いた。課題動作は安静呼気,努力呼気とし,腹直筋の測定は第3筋区画の中央点にプローブを位置させ,側腹筋群筋厚の測定は第10肋骨下端と骨盤の中央点にプローブを位置させ短軸像を抽出した。それぞれの呼気終末時で得た画像は画像解析ソフトImageJを用いて筋膜間距離を筋厚として算出した。呼吸機能の測定は,呼気ガス分析装置とスパイロメーターを用いて測定した。統計処理は各項目における代表値を対応のあるt検定を用いて比較検討した。なお,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
体幹偏位は有意に左側へ偏位していた(p<0.01)。腹直筋および側腹筋群筋厚は,安静呼気において偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.01,p<0.01)。また努力呼気でも両筋は偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.05,p<0.05)。正中位は,安静呼気および努力呼気で両筋に有意な差がみられなかった(n.s.)。呼吸機能は,TVにおいて偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)RRは偏位量増大位で有意に増大した(p<0.01)。MVは有意な差がみられなかった(n.s.)。VC,FVC,PEFR,%VCおよびV25においては偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)。FEV1.0においては有意な差がみられなかった(n.s.)。また,FEV1.0%は偏位量増大位で有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
今回の結果から安静背臥位では,骨盤に対して体幹は有意に左側へ偏位し左側方偏位が増大すると左右の腹直筋,側腹筋群筋厚に左右差が生じ呼出機能低下に通ずることが示された。体幹側方偏位の改善は,胸郭のニュートラル化に寄与し付着する左右腹直筋,側腹筋群の均等な張力の再建に結びつき,呼吸運動における左右対称性の胸郭運動や筋活動により呼出機能改善が図れたと考察する。また,強制呼気に関与する協調的な腹直筋,側腹筋群機能の発揮が得られ,効率的な呼出機能が獲得できたと考察する。体幹側方偏位に伴う胸郭機能低下は,呼吸機能低下の一要因に関与し,呼吸器疾患をはじめ多くの臨床応用ができるものと考察する。