[O-KS-19-5] 胸腔内陰圧呼吸における骨盤底筋群の変化
呼吸時における横隔膜と骨盤底筋群の関係性に着目して
キーワード:ウィメンズヘルス, 骨盤底筋群, 超音波画像診断装置
【はじめに,目的】
骨盤底筋群は横隔膜・多裂筋・腹横筋とともに腹腔を形成し,呼吸時に横隔膜と骨盤底筋群は同一方向の動きが確認される。この関係性を利用して,骨盤底筋群収縮を指導する際に呼吸を用いる事が多い。しかし,呼吸における骨盤底筋群の変化は軽微であり,特に骨盤底筋群収縮不全症例は変化を実感しにくいという難点がある。一方で呼吸法の中に,最大呼気後気道を遮断した状態で吸気を行い,胸腔内を陰圧にする事でより強力に横隔膜を挙上させる方法(以下胸腔内陰圧呼吸)がある。呼吸における横隔膜と骨盤底筋群の関係性を考慮すると,胸腔内陰圧呼吸を用いる事で骨盤底筋群はより顕著な変化が生じると考えられるが,実際に報告はされていない。本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて胸腔内陰圧呼吸時の骨盤底筋群変化を確認する事と,骨盤底筋群最大収縮時と胸腔内陰圧呼吸時の骨盤底筋群変化を比較検討する事とした。
【方法】
対象は呼吸器疾患・泌尿器疾患のない健常男性5名,女性5名(平均年齢26.6±5.3歳・平均身長167.6±7.3cm・平均体重57.2±6.1kg・平均BMI20.34±1.4)とした。骨盤底筋群測定は超音波画像診断装置(ALOKA社製)を用い,恥骨直上約60°の角度でコンベックスプローブを固定し,膀胱に尿が充填した状態で膀胱を描出した。骨盤底筋群の変化は,先行研究をもとに骨盤内筋膜と膀胱後面間の距離変化とし,安静呼気時を基準として各課題施行時の膀胱後面挙上割合を算出した。測定肢位は背臥位および端坐位とした。測定課題は骨盤底筋群最大収縮と胸腔内陰圧呼吸とし,各3回施行し平均値を算出した。各課題は測定前に十分な練習を行った。統計学的分析は一元配置分散分析および対応のあるt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
安静呼気時と比較して,背臥位・坐位ともに各課題において膀胱後面は有意に挙上した。臥位における骨盤底筋群最大収縮時の膀胱後面挙上割合は11.08±7.36%,胸腔内陰圧呼吸は12.20±11.48%であった。坐位における骨盤底筋群最大収縮時の膀胱後面挙上割合は8.2±5.8%,胸腔内陰圧呼吸は16.72±10.6%であった。いずれの姿勢においても骨盤底筋群最大収縮と比較して,胸腔内陰圧呼吸における膀胱後面の挙上割合が大きかった。
【結論】
胸腔内陰圧呼吸を用いてより強力に横隔膜挙上を促すと,より大きな膀胱後面の挙上が確認された。先行研究によると骨盤底筋群収縮能力は生来の個体差が大きく分娩経験のない女性であっても25%は随意収縮不良であるとされ,経膣分娩経験者ではその割合がさらに増加する。したがって,骨盤底筋群の正しい収縮を習得できないケースに対して直接骨盤底筋群収縮を促す以外の方法として胸腔内陰圧呼吸による骨盤底筋群変化が利用できる可能性があると考えられる。
骨盤底筋群は横隔膜・多裂筋・腹横筋とともに腹腔を形成し,呼吸時に横隔膜と骨盤底筋群は同一方向の動きが確認される。この関係性を利用して,骨盤底筋群収縮を指導する際に呼吸を用いる事が多い。しかし,呼吸における骨盤底筋群の変化は軽微であり,特に骨盤底筋群収縮不全症例は変化を実感しにくいという難点がある。一方で呼吸法の中に,最大呼気後気道を遮断した状態で吸気を行い,胸腔内を陰圧にする事でより強力に横隔膜を挙上させる方法(以下胸腔内陰圧呼吸)がある。呼吸における横隔膜と骨盤底筋群の関係性を考慮すると,胸腔内陰圧呼吸を用いる事で骨盤底筋群はより顕著な変化が生じると考えられるが,実際に報告はされていない。本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて胸腔内陰圧呼吸時の骨盤底筋群変化を確認する事と,骨盤底筋群最大収縮時と胸腔内陰圧呼吸時の骨盤底筋群変化を比較検討する事とした。
【方法】
対象は呼吸器疾患・泌尿器疾患のない健常男性5名,女性5名(平均年齢26.6±5.3歳・平均身長167.6±7.3cm・平均体重57.2±6.1kg・平均BMI20.34±1.4)とした。骨盤底筋群測定は超音波画像診断装置(ALOKA社製)を用い,恥骨直上約60°の角度でコンベックスプローブを固定し,膀胱に尿が充填した状態で膀胱を描出した。骨盤底筋群の変化は,先行研究をもとに骨盤内筋膜と膀胱後面間の距離変化とし,安静呼気時を基準として各課題施行時の膀胱後面挙上割合を算出した。測定肢位は背臥位および端坐位とした。測定課題は骨盤底筋群最大収縮と胸腔内陰圧呼吸とし,各3回施行し平均値を算出した。各課題は測定前に十分な練習を行った。統計学的分析は一元配置分散分析および対応のあるt検定を用い,有意水準5%未満とした。
【結果】
安静呼気時と比較して,背臥位・坐位ともに各課題において膀胱後面は有意に挙上した。臥位における骨盤底筋群最大収縮時の膀胱後面挙上割合は11.08±7.36%,胸腔内陰圧呼吸は12.20±11.48%であった。坐位における骨盤底筋群最大収縮時の膀胱後面挙上割合は8.2±5.8%,胸腔内陰圧呼吸は16.72±10.6%であった。いずれの姿勢においても骨盤底筋群最大収縮と比較して,胸腔内陰圧呼吸における膀胱後面の挙上割合が大きかった。
【結論】
胸腔内陰圧呼吸を用いてより強力に横隔膜挙上を促すと,より大きな膀胱後面の挙上が確認された。先行研究によると骨盤底筋群収縮能力は生来の個体差が大きく分娩経験のない女性であっても25%は随意収縮不良であるとされ,経膣分娩経験者ではその割合がさらに増加する。したがって,骨盤底筋群の正しい収縮を習得できないケースに対して直接骨盤底筋群収縮を促す以外の方法として胸腔内陰圧呼吸による骨盤底筋群変化が利用できる可能性があると考えられる。