第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)19

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:武田要(関西福祉科学大学 保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-KS-19-6] 産後2か月の褥婦の腹横筋厚と尿失禁について

間所祥子, 三秋泰一 (金沢大学医薬保健研究域保健学系)

Keywords:腹横筋, 尿失禁, 超音波画像診断装置

【はじめに,目的】

尿失禁は女性の多くにみられる健康問題である。特に,産後に生じる尿失禁の原因としては,分娩に伴う骨盤底筋群の弛緩,会陰裂傷や会陰切開の創などが影響し,骨盤底筋群を十分に収縮させることができないことが考えられる。骨盤底筋群と腹横筋は連動して働くことが報告されており,腹横筋も産後の女性の尿失禁と関連する可能性があるが,その詳細は明らかではない。そこで,本研究の目的を産後2か月の褥婦の腹横筋厚を測定し,尿失禁との関連を明らかにすることとした。

【方法】

対象は産後2か月の褥婦18名,平均年齢33.2±3.7才,BMI20.7±1.6,腹囲72.9±6.1cmとした。腹横筋厚の測定にはESAOTE社製デジタル超音波診断装置MyLab25を用い,Bモードで7.5MHzリニア式プローブを使用した。画像の撮像および筋厚の計測は同一検者がおこなった。測定は膝関節90°屈曲位の仰臥位にて行い,測定部位は臍の高さで腹横筋腱から2cmの部位の筋厚とした。測定条件は安静時と腹横筋収縮時とし,各3回を行った。腹横筋収縮時の指示は「息をはきながらお腹を凹ませてください」に統一し,骨盤の傾斜がおこらないように,Stabilizer(chattanooga社製)を用いて,圧を一定にして行った。筋厚の計測には,得られた動画から呼気最終域の静止画を抽出したものを用い,同機器の計測機能を利用し0.1mm単位で計測した。尿失禁に関してICIQ-SF日本語版を用いた。ICIQ-SFの結果より対象を尿失禁なし群,あり群の2群に分類し,腹横筋厚について安静時,収縮時,収縮率についてF検定後,対応のないt検定を用いて比較した。統計ソフトはEXCEL2010を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象をICIQ-SFのスコアより,尿失禁なし群14名(0点),尿失禁あり群4名(3点2名,6点2名)に分類した。腹横筋厚測定のICCは安静時,収縮時ともに0.90以上であった。尿失禁あり群,なし群の比較において,安静時の腹横筋厚に有意差はみられなかった。収縮時筋厚,収縮率については2群間に有意差を認め,尿失禁あり群は尿失禁なし群に比較して,収縮時筋厚が薄く,収縮率が低かった。

【結論】

本研究において対象者の22.2%に尿失禁がみられており,これはほぼ先行研究と同様の割合であった。また,収縮時腹横筋厚の測定結果より,産後,尿失禁を有するものは腹横筋も弱化していることが示唆された。産後の尿失禁に関しては,骨盤底筋の働きの弱化が関連すると報告されており,骨盤底筋体操が行われているが,腹横筋も含めたインナーユニットの共同収縮を促すことがより効果的である可能性が考えられる。今後はさらに,症例数を増やし検討していく。