[O-KS-20-1] 牽引角度の違いが体重免荷歩行における下肢筋電図に及ぼす影響
Keywords:体重免荷歩行, 筋電図, 牽引角度
【はじめに,目的】
歩行能力が低下した患者に対する歩行練習の一つとして体重免荷装置を用いたトレッドミル歩行(Body Weight Supported treadmill walking:以下BWS歩行)が用いられる。BWS歩行に関する基礎的な研究報告ではいずれにおいてもハーネスの牽引角度は垂直で設定されているが,臨床において牽引角度は垂直だけでなく前方や後方へ牽引されていることも少なくない。そこで,本研究の目的はBWS歩行におけるハーネスの牽引角度の違いが下肢筋活動に及ぼす影響ついて筋電図解析法を用いてその特性を明らかにすることである。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢24.5±1.6歳,身長171±5.2cm,体重62.9±6.0kg)とし,前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(GC),内側広筋(VM),大腿直筋(RF),大腿二頭筋長頭(BF),中殿筋(GM)の右脚側を被験筋とした。筋活動量の指標値を得るための動作として各被験筋を主動筋とする徒手筋力検査法のFairの判定動作(以下MMT-F)を30往復/分となるように10回以上行い筋電図を記録した後,BWS歩行を行った。歩行速度は整地での自然歩行速度(4.2±0.5km/h)およびケイデンス(114.2±8.7歩/分)を基準として牽引角度は前方5°,前方2.5°,垂直,後方2.5°,後方5°,後方10°の6条件,体重免荷量は10%,20%,30%体重免荷の3条件を組み合わせて歩行し,このときの筋電図を記録した。活動電位はプリアンプ(フルサワラボ・アプライアンス社製VSM/MES02),8 chアナログ入カユニット(同社製VSM 01)を介して1KHzでA/D変換し,テレメーター法(同社製VSM-03L)でコンピュータに記録した。得られたデータは,全波整流した後,3 Hzの包絡線とした。MMT-Fの筋電図は,歩行時の筋電図振幅を標準化する指標値とした。筋電図データは1歩行サイクル分のデータの時間軸を標準化(100%ストライド)し,10歩行サイクル分を平均化し,それを基に全被験者の平均筋電図波形を求めた。各被験者の平均波形の100%ストライド分について単位時間当たりの放電量を求め,全被験者の平均放電量を算出した。平均放電量の差の検定には統計ソフトSPSS(Statics 21.0)を用いて,一元配置分散分析を行い,主効果を認めた場合はTukeyの方法による多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
平均筋電図波形の比較において,後方10°牽引条件のBWS歩行は,いずれの体重免荷条件においても,その他の牽引角度で得られた平均筋電図波形と著しく異なった波形パターンを示し,平均筋放電量の比較においては,VM,RFはいずれの体重免荷条件においても,後方10°牽引条件が他の5条件に比べ有意に筋放電量が高かった。
【結論】
BWS歩行は体重免荷量の他に牽引角度も下肢の筋活動に有意な影響を与える。このことを踏まえ,個々人への適用は当該筋を賦活させることが望ましいのか,軽減することが望ましいのかによって体重免荷量および牽引角度の設定が異なると言える。
歩行能力が低下した患者に対する歩行練習の一つとして体重免荷装置を用いたトレッドミル歩行(Body Weight Supported treadmill walking:以下BWS歩行)が用いられる。BWS歩行に関する基礎的な研究報告ではいずれにおいてもハーネスの牽引角度は垂直で設定されているが,臨床において牽引角度は垂直だけでなく前方や後方へ牽引されていることも少なくない。そこで,本研究の目的はBWS歩行におけるハーネスの牽引角度の違いが下肢筋活動に及ぼす影響ついて筋電図解析法を用いてその特性を明らかにすることである。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢24.5±1.6歳,身長171±5.2cm,体重62.9±6.0kg)とし,前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(GC),内側広筋(VM),大腿直筋(RF),大腿二頭筋長頭(BF),中殿筋(GM)の右脚側を被験筋とした。筋活動量の指標値を得るための動作として各被験筋を主動筋とする徒手筋力検査法のFairの判定動作(以下MMT-F)を30往復/分となるように10回以上行い筋電図を記録した後,BWS歩行を行った。歩行速度は整地での自然歩行速度(4.2±0.5km/h)およびケイデンス(114.2±8.7歩/分)を基準として牽引角度は前方5°,前方2.5°,垂直,後方2.5°,後方5°,後方10°の6条件,体重免荷量は10%,20%,30%体重免荷の3条件を組み合わせて歩行し,このときの筋電図を記録した。活動電位はプリアンプ(フルサワラボ・アプライアンス社製VSM/MES02),8 chアナログ入カユニット(同社製VSM 01)を介して1KHzでA/D変換し,テレメーター法(同社製VSM-03L)でコンピュータに記録した。得られたデータは,全波整流した後,3 Hzの包絡線とした。MMT-Fの筋電図は,歩行時の筋電図振幅を標準化する指標値とした。筋電図データは1歩行サイクル分のデータの時間軸を標準化(100%ストライド)し,10歩行サイクル分を平均化し,それを基に全被験者の平均筋電図波形を求めた。各被験者の平均波形の100%ストライド分について単位時間当たりの放電量を求め,全被験者の平均放電量を算出した。平均放電量の差の検定には統計ソフトSPSS(Statics 21.0)を用いて,一元配置分散分析を行い,主効果を認めた場合はTukeyの方法による多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
平均筋電図波形の比較において,後方10°牽引条件のBWS歩行は,いずれの体重免荷条件においても,その他の牽引角度で得られた平均筋電図波形と著しく異なった波形パターンを示し,平均筋放電量の比較においては,VM,RFはいずれの体重免荷条件においても,後方10°牽引条件が他の5条件に比べ有意に筋放電量が高かった。
【結論】
BWS歩行は体重免荷量の他に牽引角度も下肢の筋活動に有意な影響を与える。このことを踏まえ,個々人への適用は当該筋を賦活させることが望ましいのか,軽減することが望ましいのかによって体重免荷量および牽引角度の設定が異なると言える。