[O-KS-21-4] 運動遂行と運動イメージ想起がもたらす皮質脊髄路への抑制性入力の相違
Keywords:経頭蓋磁気刺激, 運動イメージ想起, 周辺抑制
【はじめに,目的】運動イメージ想起とは実際の運動遂行なしに内的に運動を再現する過程である。運動イメージ想起により,想起された運動の主動作筋に対応する皮質脊髄路興奮性が上昇することが多くの先行研究により明らかにされている。一方で,非主動作筋に対する影響は十分に検証されていない。運動イメージ想起による皮質脊髄路興奮性変化の空間的な選択性,特に非主動作筋に対する抑制性の影響の有無は,運動イメージ想起がもたらす臨床効果の理論的背景として,あるいはどの程度忠実に運動を再現しているかという神経科学的観点からも重要な知見である。よって,本研究では運動遂行と運動イメージ想起による非主動作筋の皮質脊髄路興奮性変化の相違のメカニズムを調査することで,運動イメージ想起の臨床応用に関わる知見を得ることを目的とした。
【方法】右利きの健常成人13名を対象とした。被験者は前方のモニタに提示された右示指外転・内転運動の動画(静止相6秒,外転・内転相2秒ずつ)に合わせて同じ運動または運動イメージ想起をする課題を行った。経頭蓋磁気刺激には8字コイルを用いて第一背側骨間筋(FDI)と小指外転筋に貼付した表面筋電図より運動誘発電位(MEP)を導出した。磁気刺激はプログラミングソフトを用いて動画の静止時(静止5秒後),示指外転・内転中間相(それぞれ運動開始1秒後)の3つのタイミングでランダムな順序に与えた。統計学的処理はMEPと背景筋電図平均振幅値(bEMG)の変化について,課題(運動遂行,運動イメージ想起)と刺激タイミング(安静時,外転時,内転時)を要因とした二元配置分散分析を行った。
【結果】運動遂行時におけるFDIのbEMGは示指外転時,内転時ともに安静時より有意に増大し,MEPは示指外転時のみ有意に増大した。運動イメージ想起時にはFDIのbEMGに有意差はなかったが,MEPは安静時と比較して外転時に有意に上昇し,内転時には有意に低下した。
【結論】結果より,FDIの作用方向とは反対方向の運動(拮抗運動)である示指内転運動イメージ想起時,FDIのMEPは減少した。一方で,このような抑制作用は随意運動時には認められなかった。つまり,拮抗運動による皮質脊髄路興奮性の抑制作用は,随意運動時にはない運動イメージ想起時に特異的な現象である可能性がある。また,両者の相違は筋収縮の有無とそれに伴う感覚入力の相違の影響を受ける可能性があり,今後の検証を要す。本研究は,運動イメージ想起による抑制作用を示した我々の知る限り初めての報告であり,抑制性の神経機能の低下により目的とする随意運動が困難な症例(痙縮,フォーカルハンドジストニア等)に対して運動イメージ想起を適用する上で有用な理論的根拠になり得ると考える。
【方法】右利きの健常成人13名を対象とした。被験者は前方のモニタに提示された右示指外転・内転運動の動画(静止相6秒,外転・内転相2秒ずつ)に合わせて同じ運動または運動イメージ想起をする課題を行った。経頭蓋磁気刺激には8字コイルを用いて第一背側骨間筋(FDI)と小指外転筋に貼付した表面筋電図より運動誘発電位(MEP)を導出した。磁気刺激はプログラミングソフトを用いて動画の静止時(静止5秒後),示指外転・内転中間相(それぞれ運動開始1秒後)の3つのタイミングでランダムな順序に与えた。統計学的処理はMEPと背景筋電図平均振幅値(bEMG)の変化について,課題(運動遂行,運動イメージ想起)と刺激タイミング(安静時,外転時,内転時)を要因とした二元配置分散分析を行った。
【結果】運動遂行時におけるFDIのbEMGは示指外転時,内転時ともに安静時より有意に増大し,MEPは示指外転時のみ有意に増大した。運動イメージ想起時にはFDIのbEMGに有意差はなかったが,MEPは安静時と比較して外転時に有意に上昇し,内転時には有意に低下した。
【結論】結果より,FDIの作用方向とは反対方向の運動(拮抗運動)である示指内転運動イメージ想起時,FDIのMEPは減少した。一方で,このような抑制作用は随意運動時には認められなかった。つまり,拮抗運動による皮質脊髄路興奮性の抑制作用は,随意運動時にはない運動イメージ想起時に特異的な現象である可能性がある。また,両者の相違は筋収縮の有無とそれに伴う感覚入力の相違の影響を受ける可能性があり,今後の検証を要す。本研究は,運動イメージ想起による抑制作用を示した我々の知る限り初めての報告であり,抑制性の神経機能の低下により目的とする随意運動が困難な症例(痙縮,フォーカルハンドジストニア等)に対して運動イメージ想起を適用する上で有用な理論的根拠になり得ると考える。