[O-KS-22-2] 中高齢者における後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップの関連
Keywords:2ステップテスト, 歩行速度, 中高齢者
【はじめに,目的】
高齢者の転倒は骨折や寝たきりの原因となるため,転倒予防は健康寿命を延伸するためにも重要であるとされている。Fritzらは,後方歩行は前方歩行よりも転倒に対する感度が高いと報告しており,前方だけではなく,後方への移動・バランス評価が注目されている。しかし,後方歩行は不慣れな動作であることや評価の難易度が高いといった欠点がある。兎澤らは,若年健常成人を対象に後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップテストの関連を検討したが,後方,前方ともに相関関係は中等度に留まり,若年健常成人の歩行能力を2ステップテストで推定することは困難であったとしている。そこで,本研究では中高齢者を対象に,後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップテストとの関連について検討した。
【方法】
研究に協力の得られた中高齢者のボランティア30名(男性7人,女性23人)を対象とした。対象者の年齢は43-84歳,身長,体重(平均値±標準偏差)は155.2±8.1cm,56.3±14.0kgであった。対象者には前方10m歩行,後方10m歩行,前方2ステップテスト,後方2ステップテストの4つの評価を実施した。10m歩行は歩行時間から最大歩行速度(m/s)を算出し,2ステップテストは最大努力で2歩前進もしくは後進させた際の最大2歩幅(cm)を計測し,それを身長(cm)で除した数値を2ステップ値として算出した。2ステップテストは2回連続で実施し,1回目は練習として除外し,2回目の結果を代表値として採用した。これらの結果から,後方歩行速度と後方2ステップ値,前方歩行速度と前方2ステップ値の関連についてPearsonの積率相関係数を算出した。統計処理はすべてR2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
後方・前方歩行速度(平均値±標準偏差)は0.89±0.36m/s,1.75±0.31m/sであった。後方・前方2ステップ値(平均値±標準偏差)は0.99±0.19,1.31±0.18であった。後方歩行速度と後方2ステップ値の間の相関係数はr=0.78(p<0.01),前方歩行速度と2ステップ値の間の相関係数はr=0.76(p<0.01)となった。
【結論】
後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップ値の間に有意な高い相関が認められた。この結果から,中高齢者では後方・前方歩行能力の推定として2ステップテストが使用できる可能性が示唆された。後方2ステップテストで歩行能力の推定が可能となることで,測定中のリスクが軽減され,歩行路のない在宅などでの測定も可能となる。本研究では各歩行速度と各2ステップ値の関連性の検討に留まり,転倒との関連までは検討できなかった。今後は対象者数を増やし,転倒との関連や後方2ステップテストと身体機能低下の関連についても検討していく。
高齢者の転倒は骨折や寝たきりの原因となるため,転倒予防は健康寿命を延伸するためにも重要であるとされている。Fritzらは,後方歩行は前方歩行よりも転倒に対する感度が高いと報告しており,前方だけではなく,後方への移動・バランス評価が注目されている。しかし,後方歩行は不慣れな動作であることや評価の難易度が高いといった欠点がある。兎澤らは,若年健常成人を対象に後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップテストの関連を検討したが,後方,前方ともに相関関係は中等度に留まり,若年健常成人の歩行能力を2ステップテストで推定することは困難であったとしている。そこで,本研究では中高齢者を対象に,後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップテストとの関連について検討した。
【方法】
研究に協力の得られた中高齢者のボランティア30名(男性7人,女性23人)を対象とした。対象者の年齢は43-84歳,身長,体重(平均値±標準偏差)は155.2±8.1cm,56.3±14.0kgであった。対象者には前方10m歩行,後方10m歩行,前方2ステップテスト,後方2ステップテストの4つの評価を実施した。10m歩行は歩行時間から最大歩行速度(m/s)を算出し,2ステップテストは最大努力で2歩前進もしくは後進させた際の最大2歩幅(cm)を計測し,それを身長(cm)で除した数値を2ステップ値として算出した。2ステップテストは2回連続で実施し,1回目は練習として除外し,2回目の結果を代表値として採用した。これらの結果から,後方歩行速度と後方2ステップ値,前方歩行速度と前方2ステップ値の関連についてPearsonの積率相関係数を算出した。統計処理はすべてR2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
後方・前方歩行速度(平均値±標準偏差)は0.89±0.36m/s,1.75±0.31m/sであった。後方・前方2ステップ値(平均値±標準偏差)は0.99±0.19,1.31±0.18であった。後方歩行速度と後方2ステップ値の間の相関係数はr=0.78(p<0.01),前方歩行速度と2ステップ値の間の相関係数はr=0.76(p<0.01)となった。
【結論】
後方・前方歩行速度と後方・前方2ステップ値の間に有意な高い相関が認められた。この結果から,中高齢者では後方・前方歩行能力の推定として2ステップテストが使用できる可能性が示唆された。後方2ステップテストで歩行能力の推定が可能となることで,測定中のリスクが軽減され,歩行路のない在宅などでの測定も可能となる。本研究では各歩行速度と各2ステップ値の関連性の検討に留まり,転倒との関連までは検討できなかった。今後は対象者数を増やし,転倒との関連や後方2ステップテストと身体機能低下の関連についても検討していく。