[O-KS-23-6] 肩凝り有訴者の姿勢特性およびストレス応答
―forward head postureと自律神経活動の解析より―
キーワード:慢性疼痛, 姿勢, 自律神経
【はじめに,目的】肩凝り等の作業関連性疼痛は,visual display terminal(VDT)作業によるforward head postureの様な姿勢アライメント不良が誘因になるとされている(Falla 2007)のみならず,ストレス応答の関与も指摘されている(篠崎 2007)。一方,線維筋痛症等の慢性痛患者では自律神経系の変調が指摘されており,我々は肩凝り有訴者においても運動中の自律神経系の変調を報告した(Shiro 2012)。しかし,肩凝り有訴者におけるVDT作業中の姿勢アライメントとストレス応答および自律神経応答の関係を調べた報告は見受けられない。そこで本研究は,VDT作業による肩凝り有訴者の姿勢アライメントとストレス応答ならびに自律神経応答を同期して調べ,健常者と比較した。
【方法】対象は健常者9名(20.3±1.2歳:健常群)と肩凝り有訴者10名(21.1±0.6歳:肩凝り群)とした。VDT作業は,椅座位にてパソコンでの英文入力20分間とし,作業前後15分間を安静とした。評価項目は肩凝り強度(VAS),姿勢アライメント,唾液αアミラーゼ(sAA)活性,心拍変動(HRV)とした。VASとsAA活性は作業前後と終了15分後に測定した。姿勢アライメントとHRVは実験中連続記録し,作業中および作業前後安静5分毎の値を解析に供じた。姿勢アライメントは,上位頚椎の指標として外後頭隆起-C7間距離(O-CD),下位頚椎の指標としてcraniovertebral angle(CVA),上位胸椎の指標としてC7-Th7垂線間距離(C-ThD),体幹の指標としてC7-大転子/水平線角度(C-GA)を計測した。HRVは心電図R-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF),高周波数成分(HF,副交感神経活動指標)のパワー値とLF/HF比(LF/HF,交感神経活動を反映)を算出し,各時点の1分間の平均値を測定値とした。統計学的解析は,Friedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】VASは作業後に肩凝り群のみ増強し,作業15分後まで増強は持続した(p<0.001)。作業中の姿勢アライメントは両群でCVA,C-GAが減少,C-ThDが増大し,肩凝り群のみO-CDが減少し,作業15分後にも低下が持続していた(p<0.05)。またO-CDは作業15分後で健常群と比べ肩凝り群で低値を示した(p<0.05)。sAA活性は肩凝り群のみ作業前に比べ作業後に高値を示した(p<0.01)。HRVは作業中にHFが両群で減衰し,LF/HFは健常群のみ増大した(p<0.05)。
【結論】VDT作業により肩凝り有訴者はforward head postureを呈し,肩凝りが増悪するのみならず,これらの変化は作業終了15分後まで持続した。さらに肩凝り有訴者は健常者に比べ作業負荷に対する交感神経応答が減弱していた一方,sAA活性の上昇を示したことから,顕著なストレス応答を認めた。以上より,VDT作業による肩凝り増悪には作業中の不良姿勢に加え,作業負荷に適した自律神経応答の減弱と過度なストレス応答が関与する可能性が示唆された。
【方法】対象は健常者9名(20.3±1.2歳:健常群)と肩凝り有訴者10名(21.1±0.6歳:肩凝り群)とした。VDT作業は,椅座位にてパソコンでの英文入力20分間とし,作業前後15分間を安静とした。評価項目は肩凝り強度(VAS),姿勢アライメント,唾液αアミラーゼ(sAA)活性,心拍変動(HRV)とした。VASとsAA活性は作業前後と終了15分後に測定した。姿勢アライメントとHRVは実験中連続記録し,作業中および作業前後安静5分毎の値を解析に供じた。姿勢アライメントは,上位頚椎の指標として外後頭隆起-C7間距離(O-CD),下位頚椎の指標としてcraniovertebral angle(CVA),上位胸椎の指標としてC7-Th7垂線間距離(C-ThD),体幹の指標としてC7-大転子/水平線角度(C-GA)を計測した。HRVは心電図R-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF),高周波数成分(HF,副交感神経活動指標)のパワー値とLF/HF比(LF/HF,交感神経活動を反映)を算出し,各時点の1分間の平均値を測定値とした。統計学的解析は,Friedman検定およびTukey-typeの多重比較検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】VASは作業後に肩凝り群のみ増強し,作業15分後まで増強は持続した(p<0.001)。作業中の姿勢アライメントは両群でCVA,C-GAが減少,C-ThDが増大し,肩凝り群のみO-CDが減少し,作業15分後にも低下が持続していた(p<0.05)。またO-CDは作業15分後で健常群と比べ肩凝り群で低値を示した(p<0.05)。sAA活性は肩凝り群のみ作業前に比べ作業後に高値を示した(p<0.01)。HRVは作業中にHFが両群で減衰し,LF/HFは健常群のみ増大した(p<0.05)。
【結論】VDT作業により肩凝り有訴者はforward head postureを呈し,肩凝りが増悪するのみならず,これらの変化は作業終了15分後まで持続した。さらに肩凝り有訴者は健常者に比べ作業負荷に対する交感神経応答が減弱していた一方,sAA活性の上昇を示したことから,顕著なストレス応答を認めた。以上より,VDT作業による肩凝り増悪には作業中の不良姿勢に加え,作業負荷に適した自律神経応答の減弱と過度なストレス応答が関与する可能性が示唆された。