第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)01

2016年5月27日(金) 10:00 〜 11:00 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:石田和宏(我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科)

[O-MT-01-4] 当院の脊椎多椎間開窓術クリニカルパス退院遅延バリアンスに関連する要因の検討

久保田史明, 牛越浩司, 務台均, 植西一弘, 西風宏将 (安曇野赤十字病院)

キーワード:腰部脊柱管狭窄症, クリニカルパス, バリアンス

【はじめに,目的】

当院整形外科では,腰部脊柱管狭窄症に対する多くが単椎間および多椎間開窓術において,それぞれ術後クリニカルパス(CP)に従い理学療法を進めている。各CPにおいて退院日は,単椎間が14日目,多椎間が17日目としているが,多椎間の症例においては動作が安定せず,退院遅延によるバリアンスを生じることがある。転院・転科の準備を考えると,術後早期からCP通りの退院の可否について予測が必要となり,バリアンス発生に関連する要因を明らかにすることは重要である。今回,当院の多椎間開窓術CPについて,術前および術後14日目の患者特性や症状から,術後17日目の退院の可否に関連する要因を検討した。

【方法】

対象は当院整形外科において平成25年7月から27年3月までに多椎間開窓術CPを使用した93例(CP達成例66例,バリアンス例27例)とした。評価項目は,年齢,性別,MMT(腸腰筋,大腿四頭筋,前脛骨筋,長母趾伸筋,長趾屈筋,大殿筋,中殿筋,腓骨筋),感覚(深部,足底),しびれ,痛み,Timed Up and Go Test(TUG),The 30-second chair stand test(CS30),歩行(独歩,支持物有),間欠性跛行とし,術前と術後14日目に評価を行った。CP通り退院した群を退院群,退院できなかった群を非退院群として,術前と術後14日目における各評価項目について2群比較を行った。また,術後17日目の退院の可否に関連する要因を術前および術後14日における評価項目より検討するために,多重ロジスティック回帰分析を用いた。目的変数を17日目の退院の可否とし,説明変数を術前と術後14日目のそれぞれの評価項目とした。

【結果】

術前の評価項目において,退院群と非退院群に有意差を認めたものは,年齢,MMT(腸腰筋,前脛骨筋,長母趾伸筋,長趾屈筋,中殿筋,腓骨筋),CS30,および歩行であった。これらを説明変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,17日目の退院の可否に関連性の可能性のある要因は年齢,中殿筋,およびCS30であった。術後14日目の評価項目において,退院群と非退院群に有意差を認めたものは,年齢,MMT(腸腰筋,大腿四頭筋,前脛骨筋,長趾屈筋,大殿筋,中殿筋,腓骨筋),痛み,TUG,CS30,および歩行であった。これらを説明変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,術後17日目の退院の可否に関連性の可能性のある要因は,TUGと歩行であった。

【結論】

術前評価から退院の可否に関連する要因はCS30,中殿筋と筋力の指標になる項目であった。このことから,筋力低下による歩行動作能力の低下が起因する廃用が退院の可否に影響を与えたと考えられ,これら項目が低下している患者については,術後早期から退院日の延長を念頭にいれて治療をすすめる必要があると考える。14日目の評価においても筋力低下は関係しているが,なかでも歩行,TUGの低下が深く関係していることが明らかとなった。