第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)02

Fri. May 27, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:嶋田誠一郎(福井大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

[O-MT-02-5] 異常運動の制動が関節内における軟骨破壊因子の発現に及ぼす影響

三井直人1, 国分貴徳2 (1.医療法人青木会青木中央クリニック, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学部)

Keywords:変形性膝関節症, 内側半月板, 関節制動

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(膝OA)は様々な誘因から発症し,本邦では約1000万人の患者がいるとされている。膝OAに対する保存療法の現状として理学療法士は運動療法を主として用い,一定の効果を提示した論文も散見される。その一方で,膝OAに至る発症メカニズムが完全には解明されていないため,理学療法介入については統一されていない。そこで,本研究ではOAにおいて障害されやすい膝関節内側面で応力に対し緩衝作用を有する内側半月板(MM)に対して,膝OA動物モデルを用いて,異常運動の制動が与える影響を軟骨破壊関連因子の発現量の観点から検証し,膝OAに対する運動療法再考の一助となるデータを得ることを目的とした。

【方法】

Wister系雄性ラット24匹をランダムに術後1W群と2W群に分け,さらに各群をACL-T群,関節制動(controlled abnormal movement:CAM)群に分類した。ACL-T群は膝蓋腱内側部を切開し,マイクロ剪刃にてACLを切断した。CAM群はACL切断後,脛骨の前方引き出しを制動する手術を行った。なお,対側肢をcontrol群とした。各群のMMを採取し,OAの関連因子であるaggrecan/AdamTs-5/Timp-1/MMP-13の4つのプライマーの発現量をreal time PCR法にて計測した。統計処理はSPSSを使用し,1元配置分散分析を用いた。下位検定には多重比較検定tukey法を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

aggrecanでは1WのCAM群で約0.3倍,2W群では約0.6倍発現量に有意な差が見られた。AdamTs-5では1WのACL-T群で約2.2倍発現量に有意差な差が見られた。Timp-1では1WのACL-T群で約2.9倍,2WではACL-T群にて約2.3倍,CAM群にて1.7倍と発現量に有意な差が見られた。MMP13では各群で有意差は見られなかった。

【結論】

膝関節では靭帯以外に半月板が形状上,屈曲位において前後方向,伸展位において内外旋,内外反方向の関節包内運動を制動する機能を持つとの報告がある。結果より,MMにおいてAdamts-5とAdamts-5の活性抑制に作用するTIMP-1の増加が見られたことから,MMの破壊が進行していると考えられる。これにより半月板が持つ異常運動の制動力の低下,関節内環境の不整が生じ,それに伴ってMMの破壊が生じることが関節軟骨破壊,OAの進行を助長する可能性が考えられる。一方で異常運動の制動を行ったCAM群ではMMにおいてAdamts-5の増加が見られなかった。このことから,異常運動の制動がMM破壊の抑制,引いてはOAの病態である軟骨破壊の抑制に貢献し,OAの進行を抑制し得る可能性が示唆された。本研究の結果は,臨床において内反型OA患者におけるlateral thrustの様な異常運動を制動することを目的とした運動療法が,膝OAの軟骨変性の進行に対して有効な介入手段であることのエビデンスとなり得るデータである。