第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)03

Fri. May 27, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:南角学(京都大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

[O-MT-03-1] 人工股関節全置換術の術前評価を用いた退院および転院の予測について

上林和磨1, 田村暁大1, 坂本篤則1, 外崎一哉1, 戸塚裕亮1, 刀根章浩1, 赤坂清和2, 山本邦彦3 (1.社会医療法人尚篤会赤心堂病院リハビリテーション科, 2.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 3.社会医療法人尚篤会赤心堂病院整形外科)

Keywords:TUG, 転機予測, THA

【はじめに,目的】変形性股関節症に対しTHAが行われ,当院のクリティカルパスでは術後3~4週の退院予定だが,一部の症例はパス通りに退院できず,1ヶ月以内に回復期病院へ転院する必要がある。そこで,本研究の目的は術前評価から転退院の予測に有用な評価項目について検討することとした。

【方法】当院で2011年2月~2014年12月にTHAが施行された76名のうち,併存疾患のため評価困難であった23名を除外し53名を対象とした。全ての対象者の術式は前外側アプローチにて行われ,中殿筋の一部を切開する方法であった。術前評価項目は性別,身長,体重,BMI,手術からの在院日数,術側股関節の安静時・運動時・荷重時痛(VAS),術側股関節の屈曲伸展・内外転・内外旋ROM,両側股関節の内外転・膝関節伸展等尺性筋力,左右FR,術側OLS,TUG,JOA Hip Score,WOMAC疼痛・機能スコアを測定した。筋力はHHDにて測定しトルク値(Nm/kg)を算出した。TUGは快適速度にて2回測定し,平均値を用いた。統計学的処理は自宅退院群(43名)と他院転院群(10名)の2群に分類し,各術前評価項目についてt検定を行い,有意水準は0.05未満とした。また,従属変数を転退院,独立変数を各術前評価項目とし,ロジスティック回帰分析を行った。P値を用いたステップワイズ減少法を行い最終モデルに残った評価項目のROC曲線を算出した。

【結果】手術からの在院日数は自宅退院群26.3±6.2日,他院転院群26.3±6.0日だった。自宅退院群と他院転院群のt検定の結果,年齢(64.4±9.5,71.7±8.3歳),安静時痛(2.5±2.9,0.6±1.3),荷重時痛(5.5±3.0,7.1±2.6),非術側膝関節伸展トルク値(1.0±0.4Nm/kg,0.6±0.3Nm/kg),左FR(25.0±10.2cm,17.2±11.9cm),TUG(13.2±5.6秒,24.7±12.5秒),JOA歩行能力/ADL動作(22.5±8.6点,14.4±7.2点),WOMAC機能スコア(59.5±20.3点,38.0±21.7点),WOMAC疼痛スコア(50.1±17.9点,26.3±18.7点)には有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,TUGが予測因子として抽出され,オッズ比1.21(1.01-1.44,p=0.04)であった。また,ROC曲線の曲線下面積は0.86で,Cut off値は14.8秒(感度0.86,特異度0.81)となった。

【結論】自宅退院群と他院転院群の術前評価を比較した結果,自宅退院群は年齢が若く,荷重時痛とWOMAC疼痛スコアから術側股関節痛が少なかった。また,JOA歩行能力/ADL動作,WOMAC機能スコア,TUGが優れていた。自宅退院群は年齢が若いことで非術側膝関節伸展筋力が優れていたことや,股関節痛が少ないことで,起立歩行能力やバランス能力が高く保たれていたと考えられる。このことから,総合的な評価指標であるJOA歩行能力/ADL動作,WOMAC機能スコアが高得点になったと考えられる。術前の評価項目におけるロジスティック回帰分析の結果から,転退院の予測に有用な評価項目はTUGであり,14.8秒以内であれば自宅退院できる可能性が高いことが示唆された。