第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)03

Fri. May 27, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:南角学(京都大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

[O-MT-03-3] 人工股関節置換術後の入院期間短縮が退院時の股関節運動機能やQOL,主観的な満足度や疼痛に影響を与えるか

櫻井佳宏, 舟山悦子, 渡邊慎吾, 須賀康平 (山形済生病院リハビリテーション部)

Keywords:人工股関節置換術, 入院期間短縮, 日本整形外科学会股関節疾患評価質問表(JHEQ)

【はじめに,目的】当院では人工股関節置換術(以下THA)で使用するクリニカルパス(以下パス)の術後入院期間を21日(以下21日群)から16日(以下16日群)に見直しすることになった。そこで本研究の目的は,術後5日間の入院期間短縮が退院時の股関節運動機能やQOL,主観的な満足度や疼痛に影響を与えているかを日本整形外科学会股関節疾患評価質問表(以下JHEQ)及び,日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOA)を用いて検討することとした。

【方法】対象は,2015年8月から9月に当院において変形性股関節症によりprimary THAを施行した60歳以上の症例のうち,パス通り退院できなかった症例と,評価時に回答を得られなかった症例を除いた31例である。群分けを2015年8月中にパスを適用した21日群(術後平均在院日数20.3日)の15例(男性2例,女性13例,平均年齢71.5±8.8歳,身長153.5±8.2cm,体重52.4±8.8kg)と,2015年9月中に新しいパスを適用した16日群(術後平均在院日数16.4日)の16例(男性2例,女性14例,平均年齢71.8±6.7,身長151.6±8.8cm,体重57.0±13.3kg)の2群とした。評価はJHEQの合計点とその下位尺度である痛み,動作,メンタルの3項目および股関節満足度のVAS(0-100mm)と術側股関節痛のVASを使用した。JOAは術側の総得点を使用した。なお,JHEQの合計点は点数が高いほどQOLが良いことを表し,VASの項目は値が低いほど満足度が高いことと,疼痛が少ないことを意味している。また,JOAは点数が低いほど股関節機能障害や日常生活能力低下を示している。各評価の術前の値と術後の値の差を求めて,2群間を比較検討した。統計処理は,Shapiro-Wilk検定で正規性を確認した後に,対応のない2標本t検定とMann-WhitneyのU検定を用いて2群間の比較を行った。有意水準は5%とした。

【結果】2群の対象者間で年齢,身長,体重はいずれも有意差はなかった。21日群において,術前と比べた術後のJHEQで合計点は15.1±14.7点の増加で,下位尺度の痛みは8.5±6.1点,動作は2.5±6.4点,メンタルは4.0±6.1点とそれぞれ増加した。また,VASは股関節満足度で-46.4±34.7mm,術側股関節痛では-47.1±27.6mmといずれも減少した。術前と比べた術後のJOAでは,総得点が15.8±19.6と増加した。16日群において,術前と比べた術後のJHEQで合計点は17.6±16.7点の増加で,下位尺度の痛みは11.1±7.9点,動作は3.6±5.9点,メンタルは3.6±4.6点とそれぞれ増加した。VASは股関節満足度で-49.9±35.1mm,術側股関節痛では-45.0±37.5mmと減少した。術前と比べた術後のJOAでは,総得点が15.8±20.3点と増加した。2群間の各項目の差の比較においては,それぞれ有意差はみられなかった。

【結論】当院でTHAを実施した60歳以上の症例において,術後21日から16日への入院期間短縮は退院時の股関節運動機能やQOL,主観的な満足度や疼痛に影響を与えなかったことが示唆された。