第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)05

2016年5月27日(金) 14:50 〜 15:50 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:村木孝行(東北大学病院 リハビリテーション部)

[O-MT-05-1] 鏡視下腱板修復術後6ヶ月におけるShoulder36に関連する客観的評価因子の検討

中嶋良介1, 川井誉清1, 荻野修平2, 村田亮2, 石毛徳之2 (1.松戸整形外科病院リハビリテーションセンター, 2.松戸整形外科病院肩関節センター)

キーワード:腱板断裂, Shoulder36, 術後評価

【はじめに,目的】

鏡視下腱板修復術後の術後経過に関する報告は見られるが,その多くは医療者側の客観的評価を用いている。昨今,患者立脚型肩関節評価法Shoulder36 V1.3(以下,Sh36)の有用性が報告され普及してきているが,客観的評価と主観的評価の関連についての報告が散見される一方,Sh36良好となった例と術後経過の関連を述べている報告はあまりみられない。Sh36良好例と関連のある評価項目を抽出することにより,臨床で行っている客観的評価が腱板断裂術後患者の評価,治療の一助となると考えた。そこで,本研究の目的は腱板修復術後6ヶ月時におけるSh36良好例に関連する客観的評価項目を抽出し明らかにすることとした。


【方法】

対象は2014年3月から2015年5月までに当院を受診し,専門医より腱板断裂と診断され,鏡視下骨孔腱板修復術を施行した114例(男性53名,女性61名)とした。年齢は66.2±9.2歳であった。再断裂例や,術後経過を追えなかった者は除外した。客観的評価として肩関節屈曲,外転,外旋,内旋の自動可動域および外転筋力,疼痛,日常生活活動(以下:ADL)の測定および,糖尿病の有無,罹病期間,断裂サイズなどの調査を行い,患者立脚型評価としてSh36の用紙による自己記述式アンケート調査を実施した。さらに,Sh36の検討項目はスポーツ能力を除いた疼痛,可動域,筋力,健康感,日常生活動作の5項目34設問とした。この5項目34設問がすべて3以上であるものを良好群とし,5項目34設問のうち一つでも2以下の場合は困難群と定義した。客観的評価,主観的評価共に術後6ヶ月時点で評価を行った。統計学的検討には目的変数を2群(良好群:1,不良群:0)とし,従属変数を客観的評価項目とし,関連のある因子の抽出には統計解析ソフトRを用い,多重ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした。


【結果】

Sh36良好群に関連する客観的評価項目は,術側外転可動域(オッズ比:1.05),ADL項目から上着を着る(オッズ比:4.91),引き戸の開閉(オッズ比:5.23)の3項目であった。また,得られた回帰式の判別的中率は84.2%であった。


【結論】

本研究の結果より,術側肩関節外転可動域(以下,外転ROM),JOA scoreのADL項目である上着を着る動作,引き戸の開閉動作が腱板断裂修復術後患者の主観的評価に関連することが示唆された。菊川らはJOA scoreとSh36との間には,疼痛項目以外の可動域,筋力,ADLでは一定の関係性があると述べている。Sh36良好群となるためには,肩関節外転動作といった側方への上肢の運動や,上着を着る,引き戸の開閉といった上肢を側方または前方へリーチする動作の獲得が重要なのではないかと考える。今回の研究により抽出された3項目を,腱板断裂術後患者が遂行できているか評価することにより,患者の主観的な状態を推察できる可能性がある。また,評価だけでなく治療に反映させることにより,主観的評価の改善も期待できるものと考えた。