第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)05

2016年5月27日(金) 14:50 〜 15:50 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:村木孝行(東北大学病院 リハビリテーション部)

[O-MT-05-4] 鏡視下肩腱板断裂修復術後のリハビリテーション期間遷延に影響する因子の検討

永渕輝佳1, 永冨孝幸1, 荒木直哉1, 水田典孝1, 永井宏達2, 濱田浩志1, 二宮晴夫3 (1.JCHO大阪病院リハビリテーション室, 2.兵庫医療大学大学院, 3.JCHO大阪病院リハビリテーション科)

キーワード:鏡視下腱板断裂修復術, リハビリテーション期間, 治療成績

【はじめに,目的】

鏡視下肩腱板断裂修復術(以下ARCR)後の後療法において,リハビリテーション実施期間(リハ期間)の継続延長を必要とする症例を経験することがある。そこで今回,ARCRの術後リハ期間遷延に関わる因子について明らかにすることを目的に検討を行った。


【方法】

本研究は後ろ向きコホート研究である。対象は2009年1月から2013年12月までに当院でARCRを施行した737肩のうち転院症例,術後6カ月までの経過をデータ収集できなかった症例を除外した576肩(男性331肩,女性245肩,平均年齢63.9±12.3歳)を対象とした。

これらの対象を術後リハ期間が6ヶ月時の外来再診にて終了した376肩(男性228肩,女性148肩,平均年齢63.9±11.8歳)をA群,リハビリテーションの継続延長を必要とした200肩(男性103肩,女性97肩,平均年齢63.5±13.3歳)をB群の2群に分類した。性別,身長,体重,BMI,手術時年齢において2群間に統計学的有意差は認めなかった。後療法は術後翌日より開始し,入院にて3~4週間行い,外来通院は週1~2回の頻度で行った。術後3ヶ月までは肩甲帯周囲筋の過剰な筋緊張の除去し肩甲骨機能の向上,可動域拡大,肩甲上腕関節における求心性の促進,それ以降は腱板,三角筋,肩甲骨周囲筋の協調性を向上させることを目的に行った。術後リハ期間に対する検討因子は,術前可動域(自動屈曲,外旋),術前運動時痛,術前筋力(外転,外旋),術前の日本整形外科肩関節疾患治療成績判定基準,術後3カ月(以下3M)可動域(自動屈曲,外旋),術後6カ月(以下6M)可動域(自動屈曲,外旋),6M筋力(外転,外旋),断裂部位(棘上筋腱断裂,棘上筋腱+棘下筋腱断裂,棘上筋腱+肩甲下筋腱断裂,棘上筋腱+棘下筋腱+肩甲下筋腱断裂),断裂形態(完全断裂,不全断裂),修復状況(完全修復,不全修復),糖尿病の有無とし調査を行った。

統計学的検討にはEZRを用いた。上記検討因子を独立変数,リハ期間の2群を従属変数としてロジスティック回帰分析を行い,統計学的有意水準は5%とした。


【結果】

リハ期間に影響する要因は3M自動屈曲(オッズ比0.98,95%信頼区間0.962~0.989,p<0.01)A群140.7±23.4°B群121.0±28.2°,3M外旋(オッズ比0.98,95%信頼区間0.966~0.998,p<0.05)A群33.5±16.3°B群23.9±16.2°,6M外転筋力(オッズ比0.98,95%信頼区間0.963~0.988,p<0.01)A群31.7±21.6N,B群21.3±18.9N,断裂形態(オッズ比2.31,95%信頼区間1.400~3.830,p<0.01)不全断裂A群26%,B群36%であった。


【結論】

今回の結果からリハ期間が遷延する要因としては,身体機能としては3Mでの自動屈曲,外旋可動域の低下,6M時の外転筋力が低下していることが影響していると考えられる。その他の要因としては腱板の断裂形態が不全断裂症例であることが明らかとなった。