第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)05

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:村木孝行(東北大学病院 リハビリテーション部)

[O-MT-05-5] 鏡視下腱板縫合術後の手指のCRPS様症状と術前MentalRotationとの関係性

野﨑壮 (福岡志恩病院リハビリテーション部)

Keywords:鏡視下腱板縫合術, CRPS, MentalRotation

【はじめに,目的】

鏡視下腱板縫合術(以下,ARCR)後に術側手指の腫脹やこわばりなどCRPS様の症状を生じる例がある。これらは心理的な要因や術後の循環障害などの影響が考えられるが,発症してからの対応となっていることが現状である。発症前に何らかの徴候を見出すことが出来れば,予防につながるのではないかと考える。肩関節周囲炎患者に対し,運動イメージの評価としてMentalRotation(以下,MR)を用い,症状の改善によりMRも改善したとの報告があり,不使用は運動イメージに影響を与えるとされる。今回,ARCR術前にMRを実施し,術前の手運動イメージ能力が術後の手指のCRPS様症状の有無と関係があるかを調査した。


【方法】

ARCRを施行した42名を対象とし,術後3ヶ月の間に術側手指にCRPS様の症状を認め,ノイロトロピンが処方された者を症状あり群,手指症状を認めなかった者を症状なし群とした。術前に手運動イメージ能力の評価として,手部MR(パソコン画面に手掌,手背を上下左右に反転した写真32枚がランダムに映され,提示された写真の左右を答える)を用い,回答に要した時間(以下,反応時間。単位は秒)と正答数を記録した。1)手指症状の有無による差,2)男女による差,3)術側と利き手との関係性の3項目について,それぞれMRでの反応時間,正答数を比較した。統計学的手法として,1),2)はMann-Whitney U検定,3)は一元配置分散分析と多重比較検定を用いた。有意水準は5%未満とした。


【結果】

症状あり群15名(男8名,女7名。平均62歳),なし群27名(男19名,女8名。平均64歳)であった。1)手指症状の有無による差について。反応時間は症状あり群/なし群,1.95±1.1/1.70±1.1で症状あり群で有意に遅延していた。正答数は27.4±3.4/28.1±3.8で有意差は認めなかった。2)男女差について。男女ともに症状あり群はなし群に比べ,反応時間が有意に遅延していた。男女間での有意差は認めなかった。3)術側との関係性について。反応時間は利き手(症状あり/なし)1.95±1.0/1.74±1.2,非利き手1.94±1.2/1.63±0.7で,症状あり群の術側が利き手と非利き手での有意差は認めなかった。


【結論】

ARCR術前の運動イメージ能力が術後の手指のCRPS様症状の有無と関係があるかを調査した。手指CRPS様の症状を呈する群の特徴として,1)手運動イメージ想起能力が低下(反応時間の遅延)している,2)それらに男女差はない,3)術側が利き手,非利き手での差はない結果となった。これらから,ARCR術後の手指CRPS様症状の発症要因の1つとして,術前の手の運動イメージ想起能力低下が関与していると考えられる。腱板断裂が生じ,痛みなどから手の不使用の学習がなされてしまう結果と考えられるため,術前,術後での手運動イメージ能力改善に向けた取り組みも重要となると考える。