第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)06

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:室井宏育(総合南東北病院 リハビリテーション科)

[O-MT-06-1] 急性期病院における大腿骨近位部骨折症例の自宅退院の予知因子は年齢である

藤村宜史 (中国労災病院)

キーワード:大腿骨頚部骨折, 自宅退院, 予知要因

【目的】中国労災病院では,大腿骨近位部骨折(Hip Fracture:以下HF)症例の62.9%に地域連携パスが使用され,術後は平均18.3日で連携施設へ転院している。地域連携パスが適応されたHF症例のなかには,術後早期に歩行が自立し,自宅へ退院する症例が存在する。その場合,連携パスの使用を中止しなければならず,地域連携パスを適応するか否かの判断に苦慮することがある。HF症例における自宅退院の影響因子について,回復期後の自宅退院の可否を検証している報告が多い。そのため当院のように地域連携パスを運用している急性期病院におけるHF症例の自宅退院の影響因子と異なる。本研究の目的は,急性期病院におけるHF症例の自宅退院の予知因子を明らかにすることである。

【方法】当院において平成26年8月から平成27年3月までに手術を施行されたHF症例は152例であった。このうち受傷前の生活場所が自宅であった115例から,加療中に死亡した3例,転科した2例を除いた110例を分析の対象とした。この110例を退院場所が自宅であった17例と自宅以外であった93例に分類した。調査項目は,年齢,性別,骨折型,障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,同居者の有無,介護認定の有無とした。統計学的解析については,まず退院場所(自宅/自宅以外)と調査項目との関連性を単変量解析により検討した。次に退院場所(自宅/自宅以外)を従属変数,先述の単変量解析において有意確率が5%未満であった調査項目を独立変数として,2項ロジスティック回帰分析を行った。独立変数の投入にあたっては,多重共線性に配慮した。そして2項ロジスティック回帰分析で有意な独立変数として抽出されたものについて,Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を使用し,退院場所の判別におけるカットオフ値,感度,特異度,陽性尤度比を算出した。統計学的解析にはSPSS Ver18.0 for windowsを使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】2項ロジスティック回帰分析の結果,年齢が有意な独立変数として抽出された。年齢に関してROC分析を行った結果,自宅退院の可否判別における年齢のカットオフ値は76歳,感度76.5%,特異度84.9%,陽性尤度比5.08であった。

【結論】HF症例において,自宅退院の可否を予知しうる因子は年齢であり,カットオフ値は76歳であった。76歳以下のHF症例は,地域連携パスを適応せず,急性期病院から自宅退院を目指すべきである。